中田さん、
いつも大変楽しく拝見しております。
以前、マンション購入についてご相談させていただいた者です。
この度、おかげさまで正式に希望エリアの物件を購入する運びとなりました。
当時、中田さんに背中を押していただいたからこその決断であり、心より感謝申し上げます。
実際に手続きを進めるにあたり、2点ほどアドバイスをいただきたく、ご連絡いたしました。
1点目:一般団信とワイド団信の借入比率について
約5:4の割合によるペアローンで購入する予定です。当初は双方とも一般団信での加入を予定しておりましたが、諸事情により、借入額が少ない方の1名がワイド団信(金利が+0.3%上乗せとなる見込み)での加入となる可能性が出てまいりました。
総額が大きいこともあり、0.3%の金利差による負担は小さくありません。
そこで、双方の借入比率を調整し、ワイド団信側の借入額を予定より引き下げた上で、その一部にまとまった頭金を充当することで、金利上乗せによる影響を最小限に抑えようと考えております。このような資金配分のアプローチについて、中田様のご見解を伺えますでしょうか。
1000万円借入を減らすと、一般団信とワイド団信の利率差から、35年で総支払額に60万円程度の差が出てくるようなので、借入を減らさず、運用に回した方が合理的かなと考えています(毎年0.167%で運用できれば達成できそうなので、定期預金への預け入れでも達成できそうです。)が、その理解であってありますでしょうか。
2点目:物件の契約時期とライフイベント(手続き)の兼ね合いについて
1点目の件とも関連するのですが、数ヶ月先の通院結果次第では、ワイド団信から一般団信へ切り替えられる可能性が極めて高い(ほぼ確実)状況です。
しかし、物件の契約予定日が迫っており、他にも購入希望者がいるようなので、このタイミングを逃すと物件自体を逃してしまう恐れがあります。
また、何より懸念しているのが、子供の次年度に向けた地域の手続き(入園申込等)への影響です。期限までに該当地区へ住民票を移しておく必要があるため、逆算すると今のアクションが不可欠となります。
家族の生活基盤を整える上で、手続きが間に合わないことが最大のリスクであるため、多少不利な借入条件を受け入れてでも、現時点でこの物件の契約を進めるべきだと考えておりますが、もし中田様が同じ状況であれば、どのような優先順位で意思決定をなされますでしょうか。
長文となり恐縮ですが、ご意見をいただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。

中田:‖さん
お気に入りの物件が見つかったようで何よりです。せっかくの縁は大切にしたいところですね。
さて、お悩みの件についてはもう少し他の選択肢も検討したいところです。既に検討した上で選択肢を絞っているのかもしれませんが、もしかすると「本当は交渉の余地があるのに勝手に自分で交渉の余地がないと思い込んでいるもの」があるかもしれません。各関係者に対してはたとえばこういった交渉の余地があろうかと思います。
・売主に対しては、本当に早く売りたいのか、あるいはもう少し待てるのかを確認しましょう。普通は早く売りたいのでしょうが、逆に「早く買主を見つけたいが実際の売却はもう少し後が良い」という場合もあります。典型例は税金の関係で、長期譲渡所得を狙うために年をまたぎたいという場合があるのです。もしこういう売主だったら、そして他に狙っている競合が早く買いたい人だったら、むしろ「購入を待ってもらえる」買主の方が助かるという場合があります。もしそうならば、数か月後の健康診断の結果を待ってから本契約に進むという選択肢がうまれます。
・銀行に対しては、「途中で団信プランの変更は可能か」をダメ元で聞いてみるとよいでしょう。ほとんどの銀行で認めていませんが、質問者さんのように「まだ健康診断の結果が出ていないだけであって病気かどうか確定していない」のような状態であれば、ワンチャン検討してくれるかもしれません。そうでなくとも、こういうジャブを打っておくことで、「健康診断の結果が出た後の借り換えは可能か」という交渉に進みやすくなります。すなわち、いちど住宅ローンを借りた後に、住宅ローンごと借り換えることを検討するのです。同じ人が同じ家について住宅ローンごと借り換えるのは、できる場合とできない場合がありまして、この対応も銀行によって異なります。他行に借り換えられるよりはマシだと思って検討してくれる場合もあるでしょう。
そして、借り換えられる(あるいは他社に借り換える)場合であっても、手数料などの諸条件が大きな問題になります。銀行があんな低い手数料で住宅ローンを貸してもビジネスにできているのは手数料で稼いでいるからに他なりません。最初に手数料を一括で払ってしまうとわずか数か月でその手数料を2回も(解約のための手数料を含めれば実質3回分くらい)払う羽目になり、巨額の支出となります。なので一括手数料型ではなく、手数料を金利に含めるプランを選べるならそちらの方が有利です。およそ10年未満の借り換えであれば金利上乗せプランの方が有利になります。繰り上げ返済時の手数料も確認しましょう。
・保育園や幼稚園などの入園については、これも入園先の自治体や園などに相談してみましょう。まだ住民票を移す前であっても、「これから引っ越す」ことを確約できれば入園手続きを進めてくれることがあります。そしてその確約に必要な書類も自治体によって異なります。誓約書だけでよい場合もあれば、賃貸の場合は会社の辞令を求められたり、購入の場合は契約書を求められたりします。質問者さんのような状況でなくとも「引っ越しは決まっているがまだ住民票を移せない」人はたくさんいるので、そういう人のための救済措置はちゃんとあります。ただ、保育園であれば、既に住民票を移した人と比べて当選の優先順位がやや落ちる制度になっていることはあります。
この柔軟性は、上記の通り「購入の手付はするけれどもまだ本契約ではない」という時間的余裕を持てた場合に生きてきます。健康診断を経た後に本契約に進めるためです。
・保育園・幼稚園以外の何らかの事情で早く住民票ごと移さねばならないのであれば、当該物件の近くの小さな安い部屋を定期借家で数か月~1年くらい借りておくという手もあるでしょう(3か月以上住まないなら住民票を移せない場合があるので注意。逆に言えば3か月以上住むなら住民票を移せます)。荷物が少ないなら2回の引越しの手間はさほど負担ではないかもしれませんし、荷物が多いならば荷物の大半は現居に置いておいて、軽い引っ越しを一度した後に本格引っ越し(現居から購入物件までの引っ越し)を後に持ってくるという手もあります。
上記はあくまで一例ですが、選択肢としては他にもある中で、コストを比べながら(単純な金銭的コストでなく生活と精神的コストも含めながら)絞っていくとよいでしょう。
最終的には、「ワイド団信分の金さえ払えば解決する」問題とも言えるので、そういった意味では人生の悩みの中ではさほど難易度は高くはありません。「まだ健康診断の結果が出ていない状態でも家を買えた」と納得することもできましょう。そしてその場合でも極力頭金は出さないことを強く勧めます。ワイド団信といってもスプレッドがわずか0.3%であれば比較的安全な運用で取り返せてしまう利率ですし、そして上記のように「いちど借りてから借り直す」などの選択肢を検討する上でも手許流動性(すぐに現金化できる資産)は極力多い方が良いのです。
他の選択肢を悠長に検討している間にも契約期日が迫ってしまうという事情もあろうかと思うので、仲介業者に「決断自体の期日の猶予」を確認しつつ(競合が現金一括富豪なのか、これからローン審査に入る人なのかによってもこちらの猶予が違います。ワンチャン、本当は競合がいないという場合さえあります。お気に召した物件であればあまりないケースですが…)、本当に早く決断を迫られそうならいま買える条件で買っておくと良いと思います。
あと、これは私自身の失敗でもありますが、自分が気になる事項に気を取られることで他の諸条件の検討と確認が疎かになってしまうことが多々あるので、重要事項説明書や契約書はよく読みましょう。
ご家族が良い思い出を紡げる家とのご縁があることを願っております。