制作会社(web・印刷物制作等〜広報)の若手デザイナーとして働いております。
社内で制作したチラシ等のpdfデータをChatGPTに食べさせ、「このチラシのデザインで他社のA(チラシではない製品)っぽいのを作って」というプロンプトを用いてディレクターが制作した案「B 」をつくるというプロジェクトが今進んでいます。ただ、元のチラシにはお客さんの顔写真や氏名、有償イラスト素材を使用していたりするため、自分の感覚だと「社内でつくったものだからAIに食べさせてもOK」という判断はまずいのでは…?と思ってしまいます。正直引いてしまいました。
ディレクター的には、このチラシ自体はwebに公開されているものだし、自社で制作したものだから良いでしょ という感覚だと思うのですが、どのように判断するのが適切なのでしょうか。
デザインできる(ある程度絵が描ける)側からすると、そんなことしなくても…描けばいいのに……と思ってしまうのですが、ディレクションする側からすれば、ガンガンAIに食べさせてガンガン案出しを進めたいというのが本音であることは理解できます。
私が潔癖過ぎるのかもしれませんが、なるべくAdobe stockの素材をAdobe内(FireFly等)で調理するのが最も安全(Adobe stockも完全にクリーンなわけでは無いが最もマシ)かなと、漠然と思っているくらいで、AIまわりについては詳しくありません。
私は「Adobe stockでない素材(イラストACの素材や有償素材)をAIに食べさせることは避けるべき」「個人の肖像については個人の同意を必ず得てから」はマストで守るべきかなと思っていたのですが…。現時点でその他気をつけることはありますでしょうか。
今いる会社だと、デザイナーの立ち位置が完全に「作業者」なので、こういった判断をなかなか任せてもらえません。なるべくデザイナーとして正しい行動をしたいので、ディレクター陣に注意点を共有しておきたいです。
弊社ディレクターにはデザイナー出身の人間がほぼおらず、このあたりについて相談できる人がいないため、質問させていただきました。

トミナガハルキ | フリーランス歴10年な人さん
決して「潔癖すぎる」わけではなく、プロのデザイナーとして健全かつ真っ当なリスク管理の視点を持たれていると思います。まずは、僕自身のスタンスと、ご質問のケースで懸念される具体的なリスク、項目ごとに整理してお答えします。
1. 前提として、僕のスタンス
僕たちのチームではデザインの実務において、いただいたような方法で生成AIを活用することはありません(※そもそもデザイン業務自体で生成AIを使うことが少ないです)
その大きな理由は、「チーム内で作ったもの(過去の成果物)」であっても、そこに使われている写真やイラスト、素材集の権利がすべて自分達に移行しているわけではないからです。多くの場合、僕たちは「使用許諾」を得て使っているに過ぎません。そのため、それらをAIに読み込ませる行為には、非常に慎重になる必要があります。
オプトアウトを選ぶ権利は当然あるべきですし、仕事で使うのであれば、規約の整理や事前の確認など、もう少し丁寧なステップがあってしかるべきだと考えています。
2. 今回のケースで懸念される具体的なリスク
あなたが仰る「Adobe Stockでない素材を避ける」「肖像の同意を得る」は、まさに守りたいラインです。ディレクターの「Webに公開されているし、自社で作ったからOK」という判断には、以下のような不安があります。
・素材サイトの規約違反
多くの有償・無償素材サイトの利用規約には、「素材データをAIの学習や生成のインプットとしてアップロードすることを禁止する」旨が盛り込まれ始めています。自社で買った素材であっても、規約違反で訴訟やアカウント停止になるリスクも考慮した方が良いでしょう。
・個人情報・肖像権
顧客の顔写真等は個人情報です。AIツールの設定(オプトアウトの有無)によっては、入力したデータがAIの学習に使われてしまう可能性があります。
・クライアントとの信頼
公開されているチラシとはいえ、それを「別製品のAI生成のプロンプト(元ネタ)」として流用されることを、元のクライアントが知ったらどう思うかという倫理的な問題もあります。
3. ディレクター陣へどう共有し、アプローチすべきか
ディレクター側が「効率化のためにガンガン案出ししたい」という気持ち自体は理解できます。しかし、「何が良くて、何がダメなのか」の判断が、個々のディレクターによって属人的になってしまうのは、会社組織としてあまり好ましくないですよね。
今いる会社でデザイナーが「作業者」の立ち位置であるなら、正論でディレクターを問い詰める形ではなく、「会社をトラブルから守るためのリスクマネジメント」という建て付けで提案するのがスムーズです。
具体的には、以下のような提案をしてみてはいかがでしょうか。
「生成AIの商用利用については、素材サイトの規約違反や個人情報漏洩の観点から、法的なトラブルになるケースがあります。属人的な判断で進めて後から問題になると会社のリスクが大きいので、『自社では今はここまでの運用ラインでやりましょう(例:ChatGPTに入れるデータは必ずオプトアウトする、有償素材や個人情報は除外する)』という、社内の共通ガイドラインを一度作りませんか?」
安全にスピードアップするための「交通ルール」を作ろう、という働きかけであれば、ディレクション側も耳を傾けやすいはずです。
孤立感があるかもしれませんが、あなたの視点は正しいと思います。組織は一枚岩でないことも多く、なかなか難しい点もあるかと思いますが、まずは「会社を守るためのルール化」を提案してみるのはいかがでしょうか?