一作、一アイディアに費やす期間について質問があります。
ある設定を思いつき、それを登場させたファンタジー小説を書きたいと思い、1年前から周辺設定を考えたり、本文を試しに書いたりしているのですが、一向に作品としてまとまらず、困っています。
賞に応募する予定はないものの、いつまでも作品が完成しないのは創作能力の向上や精神衛生の面からいってよくないと思うのですが、期限をどこに設けていいのか分からず、ずるずると一つの設定に執着する状態が続いています。
そこで、小説の創作をされている方は一般的にどのくらいの時間を一作、一アイディアに費やしているのか、参考のために教えていただきたいと考え、質問させていただきました。
以下のポイントに沿ってお答えいただければ幸いです。
①「一作」という単位は何が基準として決められているのか
創作系のアドバイスに「一作を完成させることが重要」という内容のものがありますが、具体的に何を行えば完成なのか、まとまった基準はあるのでしょうか。
また、一作を書き終わらないうちに別の作品を書き始めてしまうことはよくないとされていますが、作品を構成する要素のうち、何がどのくらい変われば、別の作品を書き始めていることに当たるのでしょうか。
自分の場合、特定の設定を作品内に登場させることが創作の中心的な動機になっているため、設定が自然になるようその他の要素に変更を加えていった結果、作品全体が世界観もストーリーも当初考えていたものとは違うものになっていることがよくあります。この場合、制作者本人は同じものに向き合っているつもりでも他人から見ると異なる作品の間を目移りしていることになるのでしょうか。
今の自分の感覚では、小説作品を構成する要素として、テーマ(何を伝えたいか)、舞台、人物、エピソード、小道具(魔法や能力など、人物が使うギミック)が挙げられ、このうち舞台と人物が一貫しなければ、たとえ動機が「この設定を出したい」というものであっても、同じ作品に向き合っていることにならないのでは、と考えているのですが、オタクペンギン(社長)さんはどのようにお考えでしょうか。
②一つの作品の制作にかけていい期間は何か月、何年か
前述の①の内容と重なりますが、「一作を完成させることが重要」といっても、初心者が一作品の制作にかけていい時間には限度があるように感じます。
自分の場合、上記のアドバイスを実行しようとして、一つの設定以外のモチーフを変更していく作業を延々と繰り返してしまい、歯止めが効かなくなっているのが現状です。
そこで、完成以外に一作品の制作を切り上げる基準を作った方がいいのではないか、一般的にどのくらいが作品制作の「賞味期限」として考えられているのだろうかと思い、上記の質問をさせていただきました。
つきましては、アマチュアが創作を行う場合、作品制作に費やす期間はどのくらいを目安とすればいいのでしょうか。
なお、質問の「作品」としては以下の条件に当たるものを想定しています。
・規模:4〜5万字の短中編、10万字の長編を想定
・作品の位置づけ:新人賞投稿作(公募は考えていない、と書きましたが、進捗管理を意識して創作を行う際のモデルケースとして適切であると考えたため、こちらを設定させていただきました)
・ジャンル:ファンタジー・SF
③一つのアイディアにこだわっていい期間は何か月、何年か
作品が単位となるかアイディアが単位となるかで回答期間が異なると考えたため、別の質問とさせていただきました。
ここでいうアイディアは、人物の性格やエピソードなど、属人的な設定ではなく、人物の持つ能力や作中世界で登場するガジェットの性能など、人物とは独立したモチーフの設定を想定しています。
その他、アイディアを出す作品の規模、ジャンルなどの条件は②と同様です。
※以上が主要な質問となります。以下の質問は本筋とはややずれたものになるため、可能であれば、お答えいただければ幸いです。
④一つのアイディアへの執着を断つ方法
冒頭でお書きした問題ともつながるのですが、いざ制作中の作品をあきらめて、別の作品の制作にとりかかっても、前取り組んでいた作品で中心となっていたアイディアを出さざるをえないシチュエーションが生じてしまい、なかなか元のアイディアの磁場から逃れることができません。そういった一つのアイディアに対する固執をどのように制御すればよいのか、効果的な方法などがありましたら教えていただきたいです。
質問は以上となります。
長文となり、申し訳ありません。
もし、上記の質問でご不明点等がございましたらご返信いただければ幸いです。

オタクペンギン(社長)さん
ご質問ありがとうございます!
詳細に書いてもらってありがとうございます。非常に助かります。
では、まずはご質問に沿って回答させてもらいますね。
①「一作」という単位は何が基準として決められているのか
まず、一作というのに明確な基準というのは基本的にありません。短編であれば、1万字未満のものもありますし、長編といわれるものでは15万字を超えるものもあります。またライトノベルなどのシリーズ作品では、シリーズ完結まで100万字を超えるものもたくさんあります。なので、文字数やページ数といったものでは定義されていません。
ただ、制作する視点で考えた場合に文字数が多くなるほど一気に考えるのは難しくなりますので、いきなり100万字の作品を書こうとしてもそれだけ長いお話を事前に考えるのは難しいです。また短編の場合は、文字数がないのでキャラクターや設定を多くは出せないので、書けるものが限定されやすい傾向があります。なので、エンタメ向きの娯楽小説の場合、中編から長編というのが多くなるのではないかと思います。(中編で3万〜8万字程度、長編で8万から13万字程度です)
とはいえ、どのくらいの設定があると文字数がどうなるかは慣れていかないと読めない部分もあるので、最初はあまり気にせず書いていくのでいいと思います。
続いて『同一作品とはどこまでを指すのか』ですが、これは単純に作家さん次第ですね。例えばですが、Web小説の投稿形式で書いていくなかで主人公が途中で変わることもありえますし、舞台が移動して別の世界になるようなこともあります。でも、同一タイトル内で書かれていて、物語として繋がっていれば別作品にはならないでしょう。
また、企画の段階で最初に予定していた主人公像からズレてきて変わってしまったとかであれば、それは読者に見せる前なのでおかしなことでもないですし、わりとよくありますね。
なので、作家さん自身が同じ作品だと思っていれば、設定などが変わっても同一作品と向き合っていることになると思いますよ。
②一つの作品の制作にかけていい期間は何か月、何年か
こちらは仰るとおり、時間をかければかけるほど良くないというのが僕の意見ですね。
すでにプロで何作も書いている方であれば別ですが、まだそこまで作品を書いた経験などがない方の場合は、作品の完成度よりもとりあえず自分が考える物語の最後までを書くことがめちゃくちゃ大事です。
書いたあとに、物語が矛盾してたり、設定でおかしいところがあったり、日本語が怪しいところなどがあってもかまわないので、起承転結を書き切るのを優先してください。
そして『作品』に書ける時間ですが、中編なら2ヶ月、長編なら4ヶ月を目安に設定するのがいいですね。プロとして活動していく場合は長編だと3ヶ月でちょっと遅いくらいなんですが、いきなりそんな速度出す必要もないので、このくらいが目安ですね。
③一つのアイディアにこだわっていい期間は何か月、何年か
この質問は②の回答と同じですね。基本的に作品を書く場合は『企画書』→『プロット』→『本編』で段階に分けたほうがいいんですが、全部込みで長編でも4ヶ月程度で考えてください。その上で、アイディアについては思いついたときはすごくいいアイディアでも物語にしようとすると難しいなどという場合もあります。なので、『企画書』→『プロット』にした際に、一ヶ月かかってもアイディアを物語に落とし込めない場合、アイディアに問題があるか、物語をつくることの能力が足りてない可能性が高いです。
なので、一旦置いて他の作品に移るのが建設的だと思います。
④一つのアイディアへの執着を断つ方法
最後の質問ですが、これは『アイディアから作品を考えるのではなく、別の切り口から作品を発想する』というのが有効だと思います。設定のアイディアではなく、シーンから考えてみたり、キャラから考えてみたり、舞台から考えてみたりっていう形ですね。
発想の切り口が同じだとどうしても同じアイディアにあたったりするので、こういう考え方はありかなと思います。
また、アイディアへの執着を断つためには『アイディアは捨てるのではなく置くもの』と考えるといいと思います。
アイディアはここで使えなくても、しばらく時間が経って、また別の作品を書くときに使えたり、別の機会に物語にできることもあります。ここで使わないと!って思っちゃうとより執着してしまうので、アイディアは無駄にならないと思ってもらうといいと思います。