要件先出しがダメというのがよくわかりません。 法的三段論法のうち、大前提(規範)なしにいきなり小前提を論述するのでしょうか？

要件先出し答案の批判は、主に試験の時間的制約や配点の違いから、厚く論じるべき論点に限って要件を先出しにして問題の所在を明確にして丁寧に論じる必要があるのだ、という趣旨だと思われます。本来、法的三段論法からは要件を先出しにするのが最も適切な論述ですが、全ての論点でこれを書くと時間が足りなくなりやすいほか、条文さえ示せば大前提として充分なほど要件や解釈に争いがない場合には、敢えて要件を細分化して列挙するまでもないということなのでしょう。 この場合、まず条文だけ引いて、各要件に該当する事実を引用・評価し、最後に要件充足性を論じるものが多いでしょう。例えば刑法なら、「Xの行為に○○罪が成立するか。Xは△△をしており◇◇と評価できるので要件ⓐを満たす。次に...よってⓑを満たす。したがってXに○○罪が成立する。」といったところでしょうかね。 ただ、このように受験テクニック的な見地からの批判であり、法的思考の在り方として規範提示を蔑ろにすることまでを肯定するものではない(というかしてはいけない)と思います。特に、刑法では予備校の問題集や再現答案の中では規範が端折られて主要論点のみ要件を丁寧に検討していますが、初学者や苦手意識を持つ人にとっては原則的な書き方を掴みにくく弊害の方が大きくなりがちですし、採点者としても答案にメリハリをつける限りで許容しているだけで省略すべきでない部分まで端折ってしまえば大幅に心証が悪くなります。従って、あくまで普段の学習では全ての論点を要件先出でも書けるようにしつつ、試験本番で必要に応じて省略できるよう問題文の分析や出題意図の把握に習熟しておくことが大切だと思います。