興津先生に質問です。
当方、研究者を志しています。
ロースクール経由ということもあり、専門予定(民事法)とは異なる学問分野(公法・刑事法)の論文・座談会にも目を通すことがままありました。
司法試験が終わったので、専門分野の論文を読み耽ろうかと思っていたのですが、公法、刑事法分野で面白そうな論文・座談会が多々あらわれ、これは読んでおくべきか...(関心はあるが、時間は有限だし、非効率か...)と迷うことがあります。
研究者になることを前提に、専門外の法律の論文を読むことは直接的に何か役に立つのでしょうか?
また、研究者になってから、専門外の法律の論文等を興味で読んだりすることはあるのでしょうか?
不法行為法と刑法、財産権と財産犯等、すでに異なる法領域が密接に関わっていることが明らかにされている分野について勉強することは有意義だろうと思うのですが、あまり研究領域とは重ならない部分、分野を興味で漁るのは、研究者としてどうなのだろう...的なことを思ったのでご質問させていただきました。

Yukio Okitsuさん
今後質問者さんのテーマや関心がどう変化するか、また世の中がどう変化して質問者さんの専門分野にどういう議論が求められるようになるかが正確に予見できない以上、「直接的に」役に立つかどうかは、何ともいえません。ただ、将来が不確実だからこそ、時間のあるうちに分野を超えて幅広く勉強しておくことが有益であるという考え方は十分ありえ、私はその考え方を推します。興味のないものを無理に読む必要はありませんが、「面白そう」と思えるものを無理に我慢する必要はないのでは、と思ってしまいます。
あとは、優先順位の付けかたではないでしょうか。本来の専門分野で読まなければならない基本文献がたまっているのに、他分野のものばかりに気をとられてしまうというのは、それが現実逃避であるとすれば、たしかにあまりよくないことかもしれません。論文の具体的テーマが決まって期限が迫っていたら、その論文に直接関係のある文献をまず読まなければならないのも当然のことです。そうでなければ、本来の専門分野の勉強に差支えない範囲で、興味のあるものを濫読していくというフェーズも、特に修業時代にはあっていいと思います。
研究者になってからも、専門外の文献を興味で読むことはもちろんありますが、悲しいことに、だんだん、その余裕はなくなっていきます・・・。