詳細にご回答いただき、ありがとうございます。大変勉強になりました。
いつも興津先生の教科書を読んでいるため、大変恐れながら、あえて逆から考えてみますと、行政機関は、行政契約の形式で組織法上の根拠のない行政活動もやっている可能性があるのではないかと感じた次第です。
例えば、ある地方自治体が自らのPRのため、スポーツの試合に金銭的支援を行うといったことが考えられるように思います。(このような事例が適切か微妙であり、かつ、この事例も組織法上の根拠があるのであれば、この質問は無意味だと思います…)
このような場合も広い意味で組織法上の根拠があるといえるのでしょうか。仮に言えないとした場合、行政指導に組織法上の根拠が必要となった理由について、行政全般に組織法上の根拠が必要であるという理由づけ以上の積極的な理由が必要になるかと思いました。
大変失礼な質問をしてしまい恐縮ですが、気になってしまったので質問してしまいました。ご寛容いただけますと有難く存じます。

Yukio Okitsuさん
地方公共団体は、独立した統治主体ですので、行政機関についての組織法的根拠づけの要請がそのまま当てはまるわけではないのですね。地方公共団体は、「地域における事務」(地方自治法2条2項)を処理すると定められているところ、これは、地方公共団体の区域と住民にかかわる事務であれば、地方公共団体が一般的・包括的権能を有すること明らかにした規定と解されているからです(興津『行政法Ⅰ』25頁)。ご指摘のスポーツの試合への助成の例は、地域振興などの目的が認められる限り、「地域における事務」に当たると解されることでしょう。
組織法的根拠づけの要請は、当該地方公共団体の内部で、助成を担当する行政機関の所掌事務に、スポーツ助成が含まれていなければならないという形でかかってくることになります。
なお、地方公共団体の機関が行う行政指導と「地域における事務」との関係については、『行政法Ⅰ』510頁*に指摘したような問題もあります。