モテない男て他責思考が多いのは何故ですか？親に甘やかされて育ったからですか？

まず述べておきますが、一般論として、私は近年ビジネス用語化している「他責思考/自責思考」の概念には、はっきりと批判的です。 それは「他人や社会のことは変えられない。自らの身に起こることは自分の責任だと思いなさい」という安易な自己責任論であり、社会的経済的弱者に過度に厳しい考え方である上、社会を作ってゆくのは自分たちだという公民としての意識も欠如しているからです。まあいかにも自己啓発本大好きな意識高い馬鹿が言いそうなことだよねって感じです。 とはいえ、他責性が強すぎたら困るのも、また確かなことではありますね。社会への問題意識は問題意識として、みんなそれぞれ自分の人生というゲームにおいては、差し当たり配られたカードで勝負するしかないわけじゃないすか。手札が悪いことを恨んでいても始まらない、自分がどんどん不利になるだけ。それはそうなんですよね。 ところで恋愛というのは、この残酷な世の中でも最も自由競争的で、自己責任論の支配するゲームです。ある人の恋心や性欲が成就するか否かはひとえに相手の自由意志にかかっていて、顔で選ぶのも自由なら財力で選ぶのも自由、白人限定で選ぶことすら自由という世界だからです。私だって生まれながらのシスヘテロ、あるいはバイセクシュアル女性以外の人は漏れなく恋愛やセックスの対象外ですが、それをLGT差別だと糾弾されても困りますし。 恋愛が成就したらしたで安心はできません。その恋愛を続けるか否かは、またもやひとえに相手の自由意志にかかっているからです。恋愛において、相手は全能の神です。昨日までどんなに愛し合って、どんなに信頼関係を築いて、どんなに真心込めて相手に尽くしてきたとしても、今日相手の気が変わったらそれでおしまい。どんなに理不尽な理由で振られても恨みっこ無しです。 哲学者のデカルトの主張に、連続創造説というのがあります。私は無学な門外漢ですし、大昔にデカルトを読んだうろ覚えの記憶なので不正確な要約とは思いますが、手短に言えば、「神の全能性を前提とすると、その全能性から演繹的に、神は不断に世界を創造し続けていることになる」という趣旨の主張だったと思います。 つまり、神が全能である以上は、神はいつでも随意にこの世界を消し去ることもできるわけじゃないすか。ということは、一瞬前にこの世界が存在したことをもって、今この世界が存在する原因とは言えない。この世界が現存するのは、ひとえに全能の神がこの世界の存在を不断に選び続けているからであり、神は最初にこの世界を創った時と同じように、不断にこの世界を創造し続けていることになる。こういう議論であったと思います。結論だけ聞くとそんな無茶な、という感じがしますが、神の全能性を前提とする限り、めちゃくちゃ論理的に筋は通っていますね。 世界の存在についてはさておき、恋愛についてはこの連続創造説が完璧に正しいと言えます。全能の神たる相手が自分を不断に選び続けてくれているからこそ、幸運にも私やあなたの恋は終わっていないわけです。だから、振られたからって相手を恨むなどもってのほかですよ。昨日まで自分を選び続けてくれたことに感謝して、笑ってお別れすべきです。 はい、だいぶ風呂敷が広がったのでそろそろ畳みましょう。私が一般論としては「自責思考/他責思考」の区分に批判的だというところから始まった本稿ですが、恋愛に関しては完全自己責任、恨みっこなし、他人を責めたらダメ絶対、という結論に落ち着きますね。 非モテが他責思考なのは親に甘やかされて育ったからかというのは知らんけど、むしろ一般的には親からの愛情が不足していた人の方が、他人を責めがちになったりしそうな気もしますけどね。