マンションの住民専用コンビニは概ね1000戸数以上の規模がないと成り立たない(意訳)、という意見をみました。購入を簡単しているマンションに住民専用コンビニがあるのですが、持続可能か判断するポイントがあれば教えて欲しいです。
あと豊洲には約1500戸ほどで専用コンビニ持ちのマンションが2つありますが、その二つの持続可能性についてご意見を聞きたいです。
私見ですが、回答は以下の通りです。
・持続可能性は、「商圏(戸数=居住人数)」、「店舗スペック(面積、設備)」の2点から推察
・当該の豊洲の2ヶ所のマンションは、戸数が大きいため独立した商圏を形成可能で、持続的な運営が可能と推察
【前提】
居住者専用コンビニ/ミニショップは買い物利便性が今ひとつな立地を何とかするため売主が設定し、それを管理組合が継承するケースが殆どです。
元々商圏として成立していれば近隣にコンビニ等が存在しているわけですから、マンション内のコンビニ/ミニショップの採算性はメガタワマンを除き前提として厳しいものがあり、多くの場合は管理組合からの補助金があって成立します。
(また、大規模マンションが建設されたことで近隣にコンビニが出来てしまい、マンション内の店舗を使う人が想定よりも減ってしまうこともあります)
【居住者専用店舗の形態】
居住者専用店舗の形態には4つの段階があると考えています。
形態1.フルコンビニ
いわゆる普通のコンビニ。
店舗面積は50坪(165㎡)〜の一定の広さがあり、店内調理に耐え得る電力や換気設備が備わっていることで利益率の高い店内調理品/ホットスナックを提供。
また、集客に直結する酒・タバコは元より、生活利便性を上げるATM・コピー機も有し、一定の深夜も集客が見込めるため24時間運営を可能としている。
メガタワマン(1,000戸以上)はこちらのタイプが多い。
形態2.ミニコンビニ
看板はメジャーブランドでも、店舗面積が小さく、店舗設備も貧弱で、品揃えやサービスに制限がある形態。
例えば、電力や換気設備が弱いためホットスナックが提供できず、深夜帯の集客が見込めないため24時間営業でないケースも。
この辺りから居住者の福利厚生の位置付けとなり、コンビニの運営を担う運営事業者(オーナー企業)も限られてくる。
普通のタワマン(1,000戸未満)はこのタイプか、形態3「ミニショップ」が多い。
形態3.ミニショップ
店舗面積が小さいのは形態2「ミニコンビニ」と同じだが、コンビニ各社が手を出せない商圏規模(=戸数)であり、マンション居住者向けサービスを手掛ける企業が有償で運営している場合はこちら。
近郊・郊外の大規模マンションに多い。
この辺りから、生鮮食品・牛乳・酒タバコの取り扱いがなくなるケースが多くなり、福利厚生施設としても微妙な位置付けとなる。
形態4.無人販売型
マンションの場合は、Amazon Goのような出入で精算するシステムではなく、無人ストア600のような自販機のようなイメージ。
(対人クレーム産業たるマンションにおいて、無人営業はそもそも相性が悪いのです)
無人ストア600
https://600.jp
このうち、持続性として心配なのは形態2〜3の店舗運営形式です。
【コンビニの商圏】
継続性の観点で重要なのは商圏です。
コンビニの一般的な商圏は、
・商圏距離…500m
・圏内人口…3,000人
と言われています。
私自身がメジャーコンビニ各社にヒアリングした結果としては、概ね一つの「目安」としては有効であるとのことです。
(但し、コンビニブランドによってはロイヤリティや目標売上・利益率が異なるため若干差異があります。また、昨今の最低賃金・物価上昇は、採算分岐点がより高くなる傾向に繋がっていますし、賃料によっては更に大きい商圏が必要であることは言うまでもないでしょう)
なお、私がよく「居住者専用コンビニはマンションの戸数が1,000戸ないとキッツい」と言っているのは、この商圏人口に密接に関連しています。
恐らくファミリー世代が多いマンションであれば、1世帯あたりの購買人口は2.5人くらい(要するに自身の財布がない小学生以下は除く)であり、3,000人にはギリギリ届かない水準です。
一方で敷地内店舗プレミアム(=一般的な店舗よりも利用頻度高め)を加味すると、だいたい1,000戸くらいが購買人口3,000人として考えられる一つの目安ではないかと捉えています。
【店舗スペック】
さて、購買人口があったとしても、店舗スペックが低ければ期待した売り上げには至りません。
この店舗スペックとは次の2つを指します。
1.店舗面積
コンビニは「何か足りない時にすぐに手に入る品揃えの豊富さ」に価値があり、品揃えとは売上のみならず来店頻度に直結する重要な要素と言えます。
形態1「フルコンビニ」で言及した店舗面積(50坪/165㎡程度)はある種一つのパッケージサイズであり、店舗面積が狭くなるとここから取り扱いが品目を減らしたり、ストックを減らしたりすることになります。
このことは、売上機会が減るばかりか、中長期的には客離れを引き起こす要因の一つになるため、一定の店舗面積が必要になると言えます。
また、形態2で触れた通り、ミニコンビニの運営業社は限られていますので、持続可能性の観点からは店舗面積があった方が有利と言えます。
(実際に形態2「ミニコンビニ」で運営事業者が苦しんでいたのは店舗面積でした)
2.店内調理に対応した店舗設備
具体的には、ホットスナック等の店内調理を可能とする電力と換気設備が備わっているかどうかです。
ホットスナックや店内調理はコンビニの取扱品目の中で利益率が高く、「ついで買い」による客単価向上を図れるため、コンビニ各社が注力しています。
形態1「フルコンビニ」の誘致においてはコンビニ各社から確実に要求がされることから、逆に言えばこの設備がないと今のコンビニが撤退したら別のコンビニブランドが入る可能性は低いとも言えます。
【まとめ】
以上より、持続可能性を検討する上においては、
・商圏(居住者専用なら1,000戸以上)
・店内スペック(広さ50坪程度、店内調理対応)
を満たしているかを確認すれば良いものと考えます。
また、1,500戸程度のマンションなら商圏が大きいため、持続可能性が高いものと思われます。
(店内スペックは確認してないため分かりません…)