元質問で出題したかったのは「2つの封筒問題」と言われる問題だと思います。元質問の書き方に色々と言いたいことはありますがw、ローカスさんが最後に真っ当な疑問に到達されているのでそこへの回答のつもりで書きます(しかし実は、本来の問題自体のポイントの説明でもあります)。なおローカスさんが途中で書かれていた「期待値とはどういうものであるか」の理解は完全に正しいです。
さて確率や期待値に関する問題を考えるとき、常に明確にしなければならないのは「どのような確率分布を考えているか」という点です。
だいたい何を言いたいかは察しがつくかもしれませんが、やはりここを避けては通れないので、まず次の問題を題材に説明させてください:「サイコロを振って、4 以上の目が出る確率を求めなさい」。おそらく、こう答える人が多いだろうと思います:「1, 2, 3, 4, 5, 6 の 6 通りの目があり、そのうち 4 以上なのは 3 通りだから確率は 3/6 = 0.5 である」。しかし、この答えでは暗黙のうちに確率分布に関する仮定が置かれています。すなわち、「出る目は 1〜6 の 6 通りであり、これらが等確率で出る」という仮定です。数学的には「1 だけが 1/2 の確率で出て,2〜6 は 1/10 ずつの確率で出るサイコロ」とか、「1 から 20 までの目が等確率で出る正二十面体のサイコロ」とかだって想定できるはずで、それぞれの条件のもとで計算した「4 以上の目が出る確率」は当然それぞれ異なってきます(前者なら 3/10,後者なら 4/20 = 0.2)。その意味で、ここで挙げた問題には、確率の計算に不可欠な前提が提示されていないとも言えます。もっとも、少なくとも高校数学などでは何も断らずサイコロと言ったら目は 1〜6 で確率は等確率だということになっているので、そういった場での問題や解答に文句をつけてるんじゃないですが……ともかく、確率的事象を考える際にはその結果がとり得る値の種類と、各々の値がどれくらいの確率で実現するかを定めないと、確率や期待値というものも決まらないわけです。
ここで最初のカードの問題に戻ります。この問題でも、やはり確率分布が明確にされていません。従って、期待値云々を考える前にそれをまず明確にする必要があります。2枚のカードの数字はどのような範囲の値を取り得て、それぞれの値がどのような確率で実現するのでしょうか。
普通に考えると、一方がもう一方の2倍となっているような数の組がそれぞれ等確率で実現するのでしょう。また、書かれる数の上限というのは特にないのでしょう。おそらくローカスさんもこのような前提を暗黙のうちに置いて考えられたと思います。
非常に自然な仮定に見えますが、実はここにこそこの問題の根本的な問題点があるのです。話を簡単にするため、カードが1枚しかないとして、そこに「1以上の整数が等確率で選ばれて書かれている」としましょう。ではこのとき、カードに 1 が書かれている確率はいくらなのでしょうか。その確率を p とします。このとき 2 も、3 も 7 も 8430234932(←いま適当に打った数) も確率 p で選ばれます(等確率だと仮定したので)。もし p>0 ならば、これは全事象の確率の合計が 1 であることと明らかに矛盾します。でも p=0 だとしても、やはり確率の合計が 1 になり得ません。ここから分かることは、「1以上の整数を等確率で選ぶ」ような確率分布は存在しないということです。サイコロの目は 6 までしかないので、それらを等確率に実現するような確率分布があったのですが、カードにどんなに大きな数でも等確率で書かれるような確率分布というのは実現し得ないわけです。元の問題の状況も似たようなもので、さっき仮定した条件(等確率・上限なし)を満たすような確率分布がそもそも存在しないのです。
従って、ローカスさんの疑問への答えというか元質問の設定へのツッコミは、「どんな確率分布を考えているのかまず明確にしてください。実は存在しえないような条件を満たす確率分布を仮定していませんか」ということになります。
なお以上の話では、元質問においてカードの数の取り得る値が無限通りあることがポイントとなっていましたが、かといって取り得る値が無限通りある場合には確率が考えられないということでは全くありません。でも長い回答がさらに長くなりますし、私も酒を飲みながら楽しく書きつつもそろそろ眠くなってきたのでここまでにしたいと思います。長文・乱文失礼しました。
ystkさん
ご教示ありがとうございます。「2つの封筒」問題は初めて知ったので、ざっと検索して色々な解説があることを知りましたが、諸説入り乱れているようでよくわかりません。
しかし最も腑に落ちたのは、
「まず最初に封筒Aを選んだ時点で(仮にこの封筒中の金額をX円とする)、もう1つの封筒に入っている金額が2X円であるか2/1X円であるかは決まっている。例えば封筒Aに200円入っていたとすると、もう1つの封筒は400円の確率が1(100円の確率は0)であるか、あるいは100円の確率が1(400円の確率が0)であるかなのであって、400円と100円の確率が各1/2であるわけではない。だから実際には1対0の確率を各1/2として期待値を計算するのは誤りである。ここで間違えたから封筒を永久に交換し続けた方が得になるという誤った結論が導かれた」
というものでした。この説明は私には正しいように思えました。
ところで、まず封筒を取るとか、交換すべきかとかいう条件って、この問題に関係あるのでしょうか。関係ないような気がします。
元質問には、まずカードを1枚選べとか、それを交換するかどうか決めろとかいう記述はありません。
そこで、私はカードをまだ選んでいない前提で、2枚のうちの任意のカードの値を仮にXとすると、他方のカードの期待値は確かに(4+1)X/2×1/2で5X/4になるね、と計算しました。(でも前記のとおり、実際には片方の発生確率が1であり他方は0なので、誤っていたようだと今は思っています)
それでも結果は同じになるので、なぜ封筒をまず1つ取り、それを交換するか決めろという設定になっているのかがよくわかりません。これは単に話を面白くするための無意味な設定なのでしょうか。