最近なにかとChat GPTが話題ですが、ネルさんの業務において、xxの雑務が減りそう、xxをしなくて良くなりそう、xxの業務価値がなくなりそう、等何か影響はありそうですか？(直近と今後数年スパンで考えた時に)

正直、そんなに変わるとは思いません。以下のような要素があります。 1　ハードウェア 2　正確性 3　浸透率 4　お膳立て 5　非公開情報 1　ハードウェア まず、職種によるのでしょうけど、ソフトウェアだけで完結する業務の場合、すでにRPAなどで効率化が進んでいると思います。効率化が進んでいないのは、ハードウェアの部分なので、ハードウェアを伴わないChat GPTでどこまで効率化できるのかには懐疑的です。 2　正確性 次に、正確性の問題です。今のChat GPTは論外だとしても、数年後でもそれほど正確性は向上していないのではないかと予想しています。というのも、単純な翻訳機であるDeepLですら誤訳だらけですし、Google検索は時間の経過とともに検索結果の質が劣化しています。Chat GPTだけが急激に信頼性を向上させ、Chat GPTに依拠してミスをしたときに、誰もが「Chat GPTが間違っていたのなら仕方ないね」と言ってくれる世界までは、楽観的に見積もっても20年はかかると思います。 3　浸透率 効率化できるとしたら質問対応です。質問箱を見ていても類推できると思いますが、私のもとにはGoogling代行みたいな仕事がよく来ます。自分で調べればわかることを私に聞いて、私が代わりに調べて答えるという感じです。こういう人たちがChat GPTを活用してくれたら、私の仕事は結構減ります。 ただ、これは私が活用するかどうかではなく他人が活用するかどうかなので、なかなか予想できません。現在自分でGoogle検索をしない人が、将来自分でChat GPTに聞くようになるのか？と言い換えると、まあそんなに期待はできないと思っています。 4　お膳立て AIを使うためには、かなりのお膳立てが必要です。日程調整1つをとっても、「カレンダー上に予定は入っていないが、会議を設定できない時間帯」はたくさんあります。偉い人ほどそうです。AIが「共通の空き時間に予定を設定する」という簡単なアルゴリズムで動いている場合、AIには日程調整すらできないことになります。会議を設定できる時間帯を確認するといったお膳立てをしてからAIに依頼するのなら、最後まで自分でやったほうがむしろ早いと思います。 日程調整に限らず、AIがうまく動くためのお膳立てをする時間で、そもそも仕事が終わっているであろうケースが多いため、それほど活用の余地はないのではないかと思います。 5　非公開情報 こちらは職業によると思いますが、私が日々扱う情報の95%以上は非公開情報なので、「公開情報の範囲で答えてくれるAI」にあまり価値を感じません。また、社外秘の情報の中には、私にはアクセスできない情報や、私にはアクセスできるが一緒に仕事をしている別部署の人にはアクセスできない情報があります。 このあたりのアクセス権に配慮をできる、社内に閉じたAIが開発されるのであれば、確かに活用の余地は大きいです。ただ、2と同じで数年以内に稼働できるとは思えません。楽観的に見積もっても15年や20年後の話だと思っています。 1ユーザーに過ぎないAIの素人目線での感想ですが、2と5の問題については結構時間がかかると思っています。というのも、AI関連のビジネスをやっている人たちが、正確性にほぼ関心がなく、情報セキュリティを担保することにはもっと関心がなさそうだからです。 （まともなコンプラ体制のある）法人ユーザーが重視することは、正確性であり情報セキュリティです。流暢かどうかとか、応答時間が短いかどうかとか、そういうのは2の次3の次です。一方で、対話型AIの開発者たちが気にしているのは、むしろ流暢に話せるかどうかや、いかにして情報を集めるかです。法人ユーザーのニーズとは正反対の思想です。 設計思想からニーズに合っていないので、これがニーズに合った製品になるまでには相当な時間がかかるだろうと見込んでいます。