IBDをうっすら志してる26卒です。
モデリングの価値について質問です。
『Investment Banking: Valuation, Leveraged Buyouts, and Mergers and Acquisitions』やWall Street Prepなどを活用し、入社前でも形式的にはモデルを組める人が増えていると思います。
また、何社分か作ったところ、比較的定型作業が多い印象でした。シナリオ作りは市場の流れなどを考える一方、そもそもモデリング自体が不確定要素多いので、シナリオ頑張ったところで全体の正確性には影響しないと考えています。
このような印象を抱いているのですが、
質問①:同じ資料が学生とバンカーA(作業者)、バンカーB(Aをレビューする立場の人)に与えられたとして、内容にどのような差が生じるのでしょうか?
質問②:価値の算定というよりも交渉や説明に使う、とも聞いたのですが、誰(会社)が作ったのかもモデルの価値になる、というのは言いすぎですか?
これは良いご質問ですね。
26卒(B2でしょうか?)でそのレベルに到達しているのは、非常に良いペースだと思います。問いの質も高いです。
質問①:
大きな差異の1つはミスの量です。モデルを通してノーミスで計算を行うというのは容易ではなく、学生やバンカーAの場合、いくつかの間違いが残っている可能性があります。バンカーBの場合でも、ミスを完全にゼロにするのは難しい一方で、ごく軽微なものに限られると思います。数式的な間違いに加えて、論理の不自然さなどの広義の誤りを含めると、その差は広がると思います。
また、スピードにも差がつくでしょう。モデリングの業務は案件全体の一部にすぎず、長い時間をかけて "完璧なモデル" を作るような業務ではありません。「翌週に設定された顧客とのミーティングまでに作成→議論を行い、初期的な論点を洗い出しておくもの」みたいな位置づけであり、ほかの業務と並行して行われます。
学生だとこの時間軸で十分な品質のモデルを作るのが難しく、バンカーAの場合でも、会議の議題を用意するところまでやるのは結構大変だと思います。バンカーBであれば、周辺タスクを含めて、時間軸にあった作業ができると思います。
もっと言えば、モデルの構造に差が付きます。バンカーBであれば、周辺タスクを想定しながらモデルを作成するので、議論に使いやすい構造になっていると思います。「一部を切り出して顧客に共有する」みたいな場面を想定して、切り出しやすいシートを作成することもあるでしょう。一方で、学生が作成したモデルなどは、「計算自体は間違っていないが、どうにも使いづらい」みたいな仕上がりになりがちです。
ただし、計算ミスを除くと、計算の結果自体はそれほど変わらないと思います。ご指摘いただいたように、どれだけ精緻にシナリオを作ったところで、しょせんは将来のことですから、数字が当たっている保証はありません。何なら、細かく分解した予想よりも、「売上成長率5% 利益率10% 以上」みたいな予想のほうが、結果的には正しい可能性すらあります。
趣旨は異なりますが、以前書いた記事が参考になるかもしれません。
https://note.com/modeling/n/nc7db8bd974b9
質問②:
交渉や説明に使うというのは、質問①の中段に書いたような内容です。顧客との議論を想定して、顧客がこだわる部分を修正しやすく、顧客がこだわらない部分はできるだけシンプルに作るのがベストです。
誰が作ったかでモデルの価値が変わることはないと思います。もちろん、印象が変わる可能性はありますが、価値が変わるというのは言い過ぎだと思います。(例えば、裁判で価格が問題になったときに、ゴールドマンが妥当だと主張するのと、ブティックが妥当だと主張するのでは、迫力が違う可能性はあります。)