小さな制作会社でディレクターをしています。
少し前から個人でもデザインの仕事を受け始め、初めてのことに苦戦しながらも、なんとか副業として取り組んできました。
今後、会社から個人の仕事へと移行していきたいと考えていますが、今はまだ会社に留まって個人の仕事の時間も捻出すべきか、完全に個人に移行して深めていくべきか...どちらにも良い面・悪い面があって思考がぐるぐる回り、前進できずに苦しんでいます。
本音としては少しでも早く会社から出て、個人の仕事に集中したいと思っています。
その理由には、会社の方針と自分の考えが合わなくなってきたことと、個人としての取り組みに少しずつ可能性が見えてきたことがあります。
所属する会社は設立5年未満でビジョンも営業方針の軸も定まっておらず、案件の内容がバラバラで、会社としての強みが蓄積されない状況にあります。
「さっさと片付けたい」という意識で仕事をする社内メンバーとは根本的な考え方が合わず、この環境ではそろそろ限界を迎えると感じています。
社長への不信感(クライアントや社員との約束を守れない、自分に不都合があると嘘をつく、など)も日に日に募り、ストレスも溜まる一方です。
とはいえ人数の少ない会社で、金額交渉からヒアリング、取材、デザインまで幅広く経験を積めたことは有難く思っています。「この部分を切り取れば個人としての仕事に応用できるんじゃないか」と可能性を感じるようにもなりました。会社では「とにかくいろいろやってみる」ことはできましたが体制的に「深める」ことができなかったので、次はその段階に身を置くことが大事かなと思っています。
一方、個人事業の不安定さは経験したことがないため恐怖もあり、なかなか踏み出せません。
会社員収入を副業収入が追い越すときに独立する方の例をよく聞きますが、私は自分の特性上その方法では心と体を壊すとはっきり分かっています。
経験上、私自身は並行するとどちらも中途半端で悔しい思いをし、絞ると集中して成果を発揮するタイプだと思っています。まずは会社の仕事から離れることが一歩目だろうと前向きになれる自分と、並行した状態で個人の仕事も軌道に乗せる力がなければやっていけないかも、という弱気な自分が拮抗し、自分の中で何を大事にすべきか分からなくなってしまいました。
(無収入の期間があっても一定期間生きるための貯金が少しはあるので、崖っぷちの無謀な挑戦ではないとは思っています...)
トミナガさんは、進む方向に迷った際
どんなことを判断基準にされていますか?
行動を起こすタイミングなど、ご自身で決めていることがあればぜひお聞きしてみたいです!

トミナガハルキ | フリーランス歴10年な人さん
丁寧にありがとうございます。状況がよく伝わりましたし、ご自身を客観的に見つめていらっしゃるなと感じました。その上で、ちょっと厳しめに聞こえるかもしれないことも正直に書きます。
まず、「進む方向に迷った際の判断基準」についてですが、僕が意識しているのは、「逃げたい」と「行きたい」を分けて考えることです。
今回のご相談を読んでいて気になったのが、独立したい理由の多くが「会社から離れたい理由」で占められていることです。社長への不信感、方針の不一致、周囲との温度差。お気持ちは本当によく分かります。ただ、それらは「今の環境が嫌だ」という話であって、「個人でやっていける根拠」とは別の話です。
会社が嫌で飛び出した場合、個人の仕事が軌道に乗らなかった時に「あれ、自分はなぜここにいるんだっけ」と足元が揺らぎやすくなります。「逃げたい(離れたい)」で始めた独立は、逃げた先でまた別の辛さに直面した時に踏ん張る理由がありません。独立後にしんどい局面は必ず来ますし、会社にいた時とは全く違う種類のストレスが待っています。判断の軸が「あの会社よりマシ」だと、比較対象がなくなった途端に心の支えも消えます。
なので、一度冷静に考えてみてほしいのは、仮に【今の会社が素晴らしい環境だったとしても、それでも個人でやりたいと思えるか?】ということです。答えがYESなら、それは「行きたい」が動機になっているので、芯が強い。もしNOなら、まずは転職という選択肢も真剣に検討した方がいいかもしれません。働き方を変えたいなら、独立の前に「転職」がありますよね。独立は「そもそも働き方が用意されていない」状態からのスタートなので、問題が悪化する可能性もそれなりにあります。
次に、「並行すると中途半端になる。一つに集中した方が成果が出るタイプだ」とおっしゃっている部分について。自分の特性を理解されているのは素晴らしいことですし、その感覚自体を否定するつもりはありません。ただ、ここに一つちょっとした落とし穴があると感じています。
現実には、個人で仕事をするということは、見積もり・請求書の作成・金額交渉・スケジュール管理・確定申告の準備・集客・営業・WEBサイトの整備・問い合わせ対応…デザイン以外の雑務が山のように降ってきます。会社にいた時は誰かがやってくれていたことを、全部自分でやらないといけません。僕自身、独立してからデザインに使える時間って、もちろん日にもよりますが、1日の中でそこまで多くはないです。集客のための施策を考えたり、数字を見たり、事務処理をしたり。むしろ「とにかくいろいろやる」のは独立後の方が激しいくらいです。
つまり、「会社の仕事を辞めて一つに集中する」という絵と、実際の独立生活にはかなりギャップがある可能性があります。今の「会社員+副業」の並行がしんどいのだとしたら、独立後の「デザイン+営業+経理+集客+その他もろもろ」の並行はもっとしんどいかもしれない。会社で「金額交渉からヒアリング、取材、デザインまで幅広くやれた」とおっしゃっていますが、独立するとそこに経理・法務・マーケティングがさらに加わるイメージです。
行動を起こすタイミングについてですが、僕自身は「副業の段階で、ある程度の手応え(集客の形がぼんやり見えてきた、リピートや紹介が少しずつ発生し始めた)を感じてから」でした。収入が会社を超えたから辞めたのではなく、「これを広げていけば食える道筋が描けそうだ」という感覚が掴めたタイミングです。
ご質問者さんは「個人の取り組みに可能性が見えてきた」とおっしゃっていますが、その可能性の正体をもう少し具体的に詰めてみてほしいです。今の個人のお客さんが、来月も再来月も依頼してくれる保証はありますか?来年はどうですか?新しいお客さんをどうやって見つけますか?会社の看板がなくなっても同じように仕事が来る根拠はありますか?この問いに、ふわっとではなく、ある程度の筋道を持って答えられるかどうか。それが一つの判断材料になると思います。
「調子がいい時に集客の種をまいておく」というのは、独立後にとても大事なことですが、独立前の今だからこそできることでもあります。副業の今のうちに、自分のWEBサイトを整えたり、個人としての集客チャネルを試行錯誤したり、実績を一つでも多く作ったり。会社にいる今の時間を「ただ耐える期間」ではなく「独立の土壌を耕す期間」として使えると、いざ踏み出す時の足場が全然違うはずです。
貯金があることは、無謀ではないという安心材料にはなります。でも、貯金は「猶予」であって「戦力」ではありません。貯金が減っていく恐怖は、なんとも独特のプレッシャーがあります。お金のことが常に頭にちらつく状態で、いい仕事ができるかどうか。焦りから安い仕事を受けすぎて疲弊する、なんてことも珍しくありません。
会社の環境がしんどいのは本当によく分かりますし、限界を感じているならそこに長居する必要はないと思います。ただ、「会社を辞める」と「独立する」はイコールではありません。今の環境から離れる手段は独立だけではありません。
偉そうなことを言いましたが、僕自身も迷いながら、びびりながら、今も霧の中を歩いているような感覚です。どんな選択をされるにしても、心と体を壊さないことが最優先です。どうかご自身を大事にしつつ、選択が良い方向に進むことを願っています...!