会計監査は、同一企業でも毎年同じように長時間かかっていると理解しておりますが、経験曲線が働かないのはどうしてなのでしょうか？監査法人の環境が気になります。

まず「経験曲線が働かない」は半分外れで半分正解ではないかと思います。 ■半分外れ 理由①経験曲線の効かない新しい検討項目(会計基準・監査基準・被監査会社の新規事業)の存在 →経験曲線効果が働かないのは「同一企業であっても経験曲線効果が働かない領域があるため」です。 経験曲線は同一の生産を継続した結果もたらされる効率化と理解しています。効率化を享受する前提条件として「同一の作業」がありますが、そもそも前提条件が満たされない場合には経験曲線効果はもたらされません。 具体論ⅰ 監査法人は会計基準や監査基準のアップデートにより、経験曲線の効かない領域に毎年直面します。 昨今は個人的に自己満プレイとしか見えないアップデートが続いています。特に新収益やリース、サステナ開示、KAM等、本当に存在意義がわかりません。(詳しい方からすれば価値のあることなのかもしれません。その点は謙虚にお伺いしたいです) 具体論ⅱ 同一企業であっても前年と異なる事業を展開した場合、当然に監査法人も対応に追われるため経験曲線効果はもたらされません。 被監査会社の中でも上場企業については継続的な成長が求められる→外部環境が変化する中で成長し続けるためには企業自身にも変化が必要→企業の変化に対応するために監査法人も相応の工数をかける という流れで工数が増えていると思います。 ■半分外れ 理由②「経験曲線効果はあくまで効率をよくするだけでありどうしても固定的なコストはかかってしまうため」 →これも大きな理由ですが、いくら効率化したからといって削減できないコストがあるためだと思います。監査法人は思った以上に膨大な作業をしています。 ■半分正解 監査法人では大量の退職者が出ており、かつ忙しすぎるせいか適切なメモや引き継ぎがなされないケースがあります。(例えばこの資料はこのように読み解く、加工する/いつ頃コミュニケーションを取る等) 上記の場合にはご質問者さんのご指摘・疑念は正しいと思います。 その上で「なぜ経験曲線効果が働かないか」とのご質問に回答すると、適切なメモや引き継ぎ資料を用意できるほどの余裕がなく、翌年も長時間労働に陥るといった負のループに陥っているといったあたりでしょうか。 ■まとめ つらつらと書きましたが、総論としてやることが増えているから監査報酬をあげているという面が大きいのではないかと思います。 一緒に金融庁に文句を言いにいきましょう。