激務な世界って、実際に周りで亡くなってる方とかいるんですか?それとも、命などを優先して転職してる方ばかりなのでしょうか。
ネルさん
ファクトフルネスに基づいてお答えします。
まず、ざっくりとした10万人当たりの年間死者数は以下のとおりです。
柔道部 2.8
出産 3.3
運転 5.2
激務 150
詳細を見ていきましょう。
学校の部活動でも死者は出ます。部活動の中で最も死傷者数が多いのが柔道だといわれており、毎年数名の死者がいます。2010年頃の調査によると、高校の柔道部では10万人当たり2.8人程度の死者が出ているそうです。
次に、「命がけ」のイメージのある妊娠・出産ですが、こちらの10万人当たり死者数は3.3人です。こちらは厚生労働省が毎年発表しております。医療の発展とともに年々低下しており、1920年頃に300人、1960年頃に100人、2019年に3.3人になっています。
死者数が多いイメージのある自動車ですが、死亡事故は10万人当たり5.4人です。交通事故死数が3,215人、免許保有者数が8,200万人、ペーパードライバー率が28%という数値からざっくり計算したものです。自動車によって歩行者が殺されているケースも多いので、実際にはもう少し分母が大きいと思われます。
最後に、過労死です。過労死の大半(9割以上)が男性ですので、男性のみで考えます。仕事に関連した事由での自殺が年間2,000人程度、労災だと認められた脳・心臓病による突然死が年間1,500人です。労災だと認められるハードルはまあまあ高いようですので、実際にはこの数倍くらいの過労死があると思われます。また、月80時間以上の残業をしている成人男性は400万人程度だといわれています(労災だと認められた事案は、この過労死ラインを上回っていることが多いです)。これらから計算すると、月80時間以上の残業をしている成人男性の過労死者数は、10万人当たり150名程度になります。
さて、いただいたご質問に戻ります。激務の致死率は0.15%程度であり、そんなに頻繁に死者が出るわけではありません。また、いわゆるエリートは精神的にタフであることが多いので、この比率よりはだいぶん致死率が低いです。
私自身を例にとっても、「同業他社から死者が出た」とか、「昔の従業員が40代で突然死したらしい」みたいなニュースを聞くことはありますが、直接の知り合いが亡くなった事例はまだありません。ただ、まだないだけで、これから出てくる可能性は十分にあると思っています。もちろん、私自身が過労で死ぬ可能性もゼロではないと思っています。