アウトプットの質を高めるにはインプットをしろとよく言いますが、逆に膨大な量を見過ぎて目が肥えて、自分の技量の無さとどっち向けばいいから分からなくなって躁鬱になった美大生です。それでもようやく鬱抜けできたので、棒に振った２年を取り戻そうと必死に創作していますが、ずっとインプット元に目配せするようなものばかりです。そして自分の中の物語も無くなりました。どうしたら私らしい創作ができますか

インプットはまず「目的意識」や「自分の課題」といった軸(自我)がしっかりあってこそのものなので、それがないままに大量摂取してもインプットにならないどころか、意欲の減退に陥ります。まずもってほとんどの表現はすでになされており、独創性など神話に過ぎないことが分かりますから、虚しくなるだけというところです。 自分の物語の喪失は出発点だと思うことにします。過去の学習によって強靭な客観性を得たとプラスに考えて、これからはそのインプットを削ぎ落とす過程なのでは。ボディビルダーがたくさん食べて身体を大きくしてから絞って筋肉を作るのと同じです。 メタ的になりますが「インプットし過ぎて膨大な歴史や教養を前に狼狽える」という事態が既に、創作の主題となりうるとてもいいテーマだと思います。この絶望は新たな自分の物語に据えても魅力的なものですし、どう解釈するか私は気になります。ムネモシュネ・アトラス的な、ボルヘスの小説のように錯綜したものが作れるなら価値はあります。せっかくならインプットを活かす方向で。 元には戻れませんし、がむしゃらになれた真っ白なころが恋しいという気分は多少わかりますが、懐古ではなく進化の方向で焦らずゆっくり頑張ってください。応援しています。