日本だと、研究分野としてのマーケティング界隈と実際のビジネスがほとんどリンクしてないと思いますが、米国だとどういう印象ですか?
(日本だと「自己流マーケティング」みたいな本がビジネス界で一時期だけ流行ったりしますが笑)
GAFA周辺がエコノメの学生を採用しているのは今でも聞こえてきますが、マーケティングの学生や研究者を採用するってあまり聞かないなと思っての質問です!!
ご質問ありがとうございます!マーケティングと実務が乖離していることは、米国でも問題視されています。マーケティングの研究が勃興した1940−50年代は、ほとんどの問題が実務に直接関連していました。その結果、50−60年代にマーケティングストラテジーの領域(例えば4Pなど)が隆盛を極め、研究結果が広く実務でも応用されてきました。
しかしその後、研究の関心が細かく分化していく中で、マーケティングの研究は、心理学や経済学、統計学、コンピュータサイエンスの手法や哲学が入り混じった領域となりながら、「アカデミア」としてのマーケティングが形成されてきました。
この状況を問題視するかどうかは、教授やプログラムによって大きく異なる印象です。私の所属大学では、マーケティングの研究と実務は結びつくべきという哲学を持っている教授が多い一方、あまり問題視しない教授やプログラムも多くあると感じます。ある特定のデータを用いて分析するというQuants Trackの特性は、容易に一般化できるものでもないでしょう。
ただし、このような状況とインダストリーへの就職が関連しているかでいうと、私はそうは思っていません。例えば、Yale SoM Quants TrackのPlacement(卒業生進路)
https://som.yale.edu/programs/phd/overview/marketing/quantitative-marketing/recent-graduates-current-students を見ても、ちらほらインダストリーに就職している方がいらっしゃいます。
これは、PhDプログラムに存在する人数(ジョブマーケットの供給)と大学の教授ポジション(需要)が、経済学とマーケティングで異なっていることが要因かなと思います。マーケティングは、どのプログラムも1−2名しか採用しません。そしてそのほとんどはアカデミア志望です。他方、北米のビジネススクールにおいて、新しい技術を持った教授への需要は旺盛です。結果、アカデミアポジションを希望し、得ることができる卒業生が多く目に入るのではないかと思います。