ワインに造詣が深いローカス先生にアドバイスをいただきたく質問です。
※限定読めます。
定年を迎える職場の方に皆でスパークリングを贈ろうと考えています。ご本人がお好きということで。
本人のお酒の好みをそれとなく聞き出した同僚によると、日本酒なら辛口が好みと言っていたようです。日本酒とワインの味の好みは違う可能性もあるかと思いますが、お酒全般好きでスパークリング好きなら、その話からドライな感じなスパークリングを選べば無難なのかと考えています。予算は1〜1.5万です。場合によっては少しオーバーでも大丈夫です。
この条件でオススメありましたら教えていただけるとありがたいです!
質問してくださってよかったと思います。「ドライな感じのもの」という基準で選ぶと、誤る可能性が高そうなので。
以下、前提知識の解説をするため、長文になります。
重要な前提として、ワインは、日本酒に比べると圧倒的に甘くないお酒です。糖分が少ないんです。
日本酒には、1リットルあたり30g以上の糖分が含まれるのが一般的です。辛口を謳う日本酒であっても、20g程度は入っていることが多いようです。
他方で、標準的な赤ワイン、白ワインに含まれる糖分の量は、1リットルあたり2〜5gほどです。日本酒とはゼロ1個分違うんです。ほとんど無視できるくらいの量ですね。
蒸留酒が糖質ゼロであることは広く知られており、醸造酒であるビールにも糖質をゼロにした商品がありますが、実はワインも、ゼロではないが
実用上はゼロと大差ないレベルなんですよ。
糖質を気にされる方は、極端な糖質制限をしている場合を除き、ワインはあまり気にせず飲んでよいと思います。
さて、本題に戻りましょう。
実はスパークリングワインは、発泡していない通常の赤白のワイン(still wine スティルワインと言います)に比べると、糖分がやや多いのが一般的です。
以下、スパークリングの代名詞であるシャンパーニュで採用されている、瓶内二次発酵という製法を前提に説明します。スペインのカバなども同じ製法です。
瓶内二次発酵を行うと、瓶の中に澱(酵母の死骸)が溜まるので、この澱を取り除いてからワインを出荷します(この工程を仏語でdegorgement デゴルジュマン、日本語で澱引きなどといいます)。
デゴルジュマンをすると、澱(を含んだ部分のワイン)を取り除いた分だけ液量が減ります。
瓶内二次発酵スパークリングでは、この減った液量を補充するとともに糖分の調整をするため、「門出のリキュール」(Liqueur d'expédition)と呼ばれる、ワインに砂糖などを溶かし込んだ甘いリキュールを少量添加してから出荷するのが一般的なんですね。この工程をdosageといいます。
なお、dosageは一般にドサージュとカタカナ表記されますが、英語読みならドウサージ、フランス語読みならドザージュに近いので、英仏を混ぜて勝手に作ったようなドサージュ表記が定着しているのは謎ですね。
このように、瓶内二次発酵のスパークリングワインにおいては甘いリキュールを添加するのが一般的なので、スティルワインに比べると甘くなります。
EUのワイン法では、糖分の量により、スパークリングワインは以下画像のように区分されます。
https://photos.app.goo.gl/Q8vDycNegVMpvk8W6
このうちbrut(ブリュット)が圧倒多数を占め、おそらく市場の8割を超えるはずです。残りのほとんどは、brutよりも糖分の少ないextra brut(エクストラ・ブリュット)や、ドザージュを全くしないbrut nature(ブリュット・ナチュール)/non dose(ノン・ドゼ)/dosage zero(ドザージュ・ゼロ)です。secやdemi secはあまり見かけず、douxは一度も見たことないです。
ブリュットは規格上は糖分12g/L未満ですが、実際には6〜10g程度のものが多いようです。つまり、普通にスパークリングワインを選べば、辛口の日本酒よりも甘くないものになります。
なので、辛口の日本酒が好きというところから類推して、「ドライなものを」という選び方をするのはダメです。ワインショップの人にそのようなリクエストを出した場合、ノン・ドゼを勧められたりする可能性がきわめて高いからです。
ノン・ドゼも良いもので、私は好きですが、どちらかというとシャープな仕上がりになって、リッチさ、華やかさはドザージュ有りのスパークリングに一歩を譲る傾向があります。どちらかというと通好みで、あまり万人受けはしません。つまり贈り物には向かないということです。
というわけで、退職される方には普通にブリュットを贈りましょう。ブランド力も込みで考えるとシャンパーニュ一択になりますね。
お勧めのシャンパーニュを3つ紹介しておきます。