こんばんは。
仕事選びの際の適性の見極め方についてご相談させていただきたいです。
私は現在社会人2年目で、今の仕事が自分に合わないと感じ、転職を考えています。
就活していた当時は給料や周りからの評判だけを考え、仕事への興味、適性などはあまり考慮しておりませんでした。
その点を反省し、現在はいわゆる自己分析をしているのですが、その中で性格検査のMBTIテストを受けました。
その結果、今の仕事が向いていない職業の代表に挙がっており納得感があった一方で、
MBTIは結果がタイミングによって変化しうるため参考にならないという批判もあります。
(私は数年前にもこのテストを受けたことがありますが、結果は同じでした。)
以前中田さんはMBTIのテストを職場で受けたことがあると仰っていたと記憶しているのですが、そのテストの結果と仕事の適性に相関はあると思いますか?
中田:‖さん
MBTIは大変面白いテストですが、あれ実はディスクレマーが大量についていて、その一つは「インストラクターからの解説と教育なしに勝手に判断するな(=研修を終えて初めてMBTIが修了する)」なんですよ。それだけ独り歩きしやすい診断だからです。
おそらく質問者さんが受けたMBTIって、ネット上に転がっているテキトーなもので、MBTI本家ではないのではないかと思われます。なぜなら本家の方は「あなたはこの仕事に向いていない」なんてことは言わないから。ネット上の性格診断はアクセス数を稼ぐべくそういう断言的な書き方になっていることが多いのですけれども(テストを受けてもいない過去の偉人などを勝手に分類しているのも同様の問題があります)あれは本家の意図するところではないでしょう。というのも、「どういう性格の人なのか」は「どういう職業に向いているのか」を一義的に決めたりしません。なぜなら全く同じ職業でも、自分の性格に合った形で戦略を練ることは可能ですし、周りの環境によっては相対的に自分が最もその職に向いているということはあり得るからです。
例えるなら、就職・転職活動において業界や会社のことを調べるのは「地図を得る」ことに相当し、自分のことを調べるのは「自分がどんな装備を持っているのか」を知ることに相当します。しかしこの2つを理解したところでどのルートを通ってどこに行くべきかは確定しません。自分が持っているのがボートでなく自動車だったとしたら陸路で向こう岸に行く方が簡単に見えますが、競合する他の全員が自動車を持っていたら大渋滞を起こしてしまい、実はボートなしで裸でも川を泳いだ方が早かったということはあり得ます。そして、そもそもどこに行きたいのかということは地図や装備からは確定しません。自分の装備を知ることは重要ですが、「だからここに行くべき」という目的地や「だからこの道を通るべき」という方法論は確定しないのです。
MBITが集団での研修を前提にしているのもこの相対感を感じてもらうことが一つの目的にあります。16種類の性格について、各々同じカテゴリーで集まったり、あるいは2種類の相反する性格の人を同じグループに置いて同じタスクをしてもらい、考え方や指向の違いを明確化させるようなワークがあったりします。他人は自分とはここまで思考のクセが異なるのか、ということを体感できたのは集団で仕事を行う上で良い学びになりましたし、キャリアを考える上での参考になりました。即ち、どんな職業であっても、顧客の思考・指向が多用で、同僚の思考・指向も多様ならば、自分は自分が得意なやり方で仕事を進めるだけでどこかに必ず居場所はあると思えるようになりました。
私が好きなエピソードは藤巻健史さんが保険を売っていた頃の話です。彼は話下手だったので、「どうすれば顧客と話さずに保険を売れるか」を考え抜きました。その結果たどりついたのが、葬式に行きまくって遺族に保険を売るという戦略でした。悲しみに暮れる遺族は営業マンの饒舌なセールストークなんて聞いている心の余裕はありません。藤巻さんは遺族に「この度は・・・」とだけ言って頭を下げて、パンフレットを置いてくるだけのセールスを続けた結果、トップクラスのセールスになったとのこと。MBTIではおそらく藤巻さんは最初の文字がEではなくIなのでしょうし、そしてテキトーな職業診断を行えば「営業には向いていません」と出るのだと思いますが、戦略によってはそこに居場所ができます。いくら外交的Extrovertであっても家族が亡くなった時には内向的Introvertになり、その瞬間だけは自分が得意な営業ができる、みたいな考え方もあるのです。
というわけで、MBTIはあくまで自分と他人を知るためのツールの一つとして利用し、職業を決めるみたいなことに直接的に利用するのはやめましょう。自分は何をしたいのか、どんな生活を望むのかという希望、すなわち目的地があり、その目的地にたどり着くまでの戦略を考える上でヒントにする程度が有効だろうと思われます。