《就活をせず家業を継ぐか、民間企業を経験してから継ぐかについて》
現在大学3年生の27卒です。
親の家業を継ぐことについて、どうすべきか悩んでいるので相談させてください。
親が自営で、ブルーカラー寄りの仕事をしています。特殊工事などを請け負ったりしているらしく、話を聞く限りでは結構稼いでる感じです。
自分は今、新卒の就職活動で、家業と関連がありそうなゼネコンや建築業界あたりを見ています。
ただ最近、民間企業を介さずに、卒業してそのまま父の仕事を継ぐのもアリなんじゃないかと考えるようになって、正直すごく悩んでいます。
主に悩んでいるのは、次の2つの点です。
1. 父の年齢と仕事内容、そして「技術継承」のタイミングについて
父親は今50代で、仕事は肉体労働が中心です。もし自分が民間企業で数年間「修行」するとして、その間に父の体力的な問題で、肝心な技術を継承するタイミングを逃してしまうんじゃないかと、そこを一番危惧しています。
2. 自分の学歴と就職活動、そして大学まで行かせてもらったことについて
自分は、一般的に見て、良い大学(いわゆる東京一工や早慶といったレベル)に通っているわけではないので、自分のことを低学歴だと感じています。いくら新卒チケットがあるとはいえ、志望している業界のトップ企業群に入るのは、やっぱりしんどいだろうな…という思いがあります。でもその一方で、せっかく大学に通わせてもらっているんだから、一度も就職活動をしないで終わるのは勿体ないんじゃないか?という気持ちもあって、色々と考えさせられます。
仮にネルさんが自分の立場だったら、どの選択を取りますか?
また、どんなことを考えて判断の軸にするかなど、意見をいただきたいです。
よろしくお願いします。
まず、私だったら自営業は選びません。理由は過去に回答しています。
https://querie.me/answer/XxaNZKiIX3HCpzfHq6d3
さて、私ではなく、ご質問者さんに何がおすすめか?という話をします。考えるべきポイントは3つだと思います。
1 いつ自営業になるか
2 経歴について
3 何を重視して判断するか
1 いつ自営業になるか
まず、自営業から会社員に転職するのは難しいので、会社員→自営業という順序はほぼ固定です。そのうえで、いつから自営業をやるかという話になります。
(A)大学卒業後すぐ
(B)数年ほど会社員をやってから
(C)10年ほど会社員をやってから
(D)気が向いたら
(A)のメリットはシンプルです。ご記載いただいているとおり、修行の期間をとりやすく、お父様のご年齢の問題も発生しづらいでしょう。
(B)のメリットは、「会社員をやってみればよかった」的な後悔が発生しづらい点にあります。大したスキルや成果は得られないと思いますが、会社員を経験したという事実は残ります。キャリアにおいては、自分の仕事に対する悩みと同じくらい、他人の仕事(自分が未経験の業務)への憧れに基づく悩みが多いです。そういうのを消すために、いちおう会社員を経験しておくというのは一案です。
(C)のメリットは、組織で働くスキルが身につくことです。家業を継いだ後も、法人顧客や銀行との取引があるかもしれません。家業を成長させ、100人や200人の会社を作りたいと思うかもしれません。そういうときに、組織で働いた経験が役に立つでしょう。また、一応のメリットとして、10年くらい会社員をやっていれば、家業がうまくいかなかった(自分には合わなかった)ときに、会社員に戻るという選択肢を選べるようになります。
(D)もし、家業を継ぐことを決めていないなら、会社員として働きながら、気が向いたら家業を継ぐというのもあり得ると思います。一般的な会社員の中にも、「出世の可能性がなくなったから、退職して自営業になる」みたいなタイプの人は割といます。いざとなったら家業を継げるという保険を掛けながら、普通に会社員をやるというイメージですね。
2 経歴について
会社員として働く場合に考慮しなければならないのは、ご質問者さんの学歴があまり高くないという点です。
おそらく第一志望の会社には入れないでしょうし、超大手の会社に入るのも難しいのではないかと思います。そして、学歴の不足は、18歳までの努力不足が原因ですので、今からではどうすることもできません。学歴が高くないことを前提として、キャリアを考える必要があります。
この点を踏まえたときに、会社員として自己実現をするハードルは、まあまあ高いと思います。必ずしも志望していない企業に入って、必ずしも希望していない部署で働くことになるでしょう。より正確に言えば、志望する企業に入り、志望する業務を担うためには、高学歴な人の何倍もの時間がかかります。(B)や(C)の時間軸ではうまくいかないでしょう。
それでも頑張れそうであれば(C)や(D)も検討すればよいと思いますが、それが無理そうなら(A)や(B)のほうが無難です。
3 何を重視して判断するか
あらゆる意思決定にはリスクが伴います。リスクとリターンは表裏一体であり、何らかのリターンを狙う場合、何らかのリスクを取らなくてはいけません。
個人的な持論ですが、意思決定をする際は、どのリターンを得たいかよりも、どのリスクを許容できるかで選んだほうが、後悔は少ないと思います。なぜなら、事前に想定できるようなリスクは、それなりに高い確率で顕在化するからです。
1において、(A)を選ぶのであれば、会社員をやってみればよかったとか、ホワイトカラーの仕事のほうがきっと楽だとか、そういう不満を言わない覚悟をしたほうが良いです。万が一、怪我などを理由に家業を続けられなくなったとしても、「あのとき、覚悟を決めてこの道を選んだんじゃないか」と納得できるようにしておくべきです。不安なら、自分宛に誓約書を書いておくとよいでしょう。
逆に、(C)や(D)を選ぶ場合、何らかの理由で家業を継げなくなったとしても、そこに不満を言うべきではありません。そのリスクをとってでも、会社組織で働く経験を優先したはずだからです。
結局のところ、悩んでいる時点で、どちらを選んでも一定の後悔はすると思います。それを軽減するためには、よく悩んで、よく比較して、覚悟を決めて判断をするのがおすすめです。