株の若手アナリストです。自分が志望していたセクターとは異なるチームに配属され、最近初めて個人で新規銘柄レポートを発行したのですが、いわゆるプロの投資家から、電話で突然鋭い質問が来るのがとにかく怖いです。
電話される方は、結構忙しそうな方も多く、明確な回答が出来ないと明らかに残念そうなリアクションをされるので、「自分なりに一生懸命調べたのになぁ...」と凹んでしまいます。
先輩に相談したところ、「質問が来ること自体恵まれてるし、そういう時にワクワクしないといけない。そもそも、上手く答えられない時点で知識不足だし、一人前のアナリストではない」といった事を言われました。そもそも希望していたセクターではないので中々興味がわきませんし、投資家に頼られた嬉しさや好奇心よりも、ただただ怖いという感情しかないです。
もっと勉強するしか選択肢がないのは、頭で理解しているのですが、「これ以上、勉強して、それでも納得させられる回答が出来なかったらどうしよう」とただただ怖くて心が折れそうです。

ネルさん
これは重要な問題ですね。一人前になるとはどういうことか?という観点でお答えします。
なお、初めて個人でレポートを発行されたとのことですので、新卒3~5年目程度だと想定しています。また、セルサイドアナリスト固有の事情は分からないので、仕事全般の話として回答しています。
1 期待を超えるのは難しい
2 結果がすべて
3 いつ一人前になるのか
4 仕事を楽しめるか
1 期待を超えるのは難しい
前提として、上司や顧客の期待を超えるのは難しいことです。主に2つの理由があります
a 働き方改革の影響
b 相対評価
aについて、多くの上司は、「私が新人の頃にできていたことは、今の新人にもできるはずだ」と考えています。
しかしながら、働き方改革の影響で、この期待は満たされづらいです。批判ではなく事実として、若手の労働時間は年々短くなり、若手の仕事能力は年々低下しています。そのため、働き方改革が始まった10年前くらいからは、常に、「上司が新人の頃にできていたことが、現在の新人にはできない」という状態が続いています。
bについては、相対評価の基準によるものです。多くの組織では、成果の8割は、上位2割の社員によってもたらされる、という構造になっています。
したがって、優秀かどうかは、平均以上かどうか?ではなく、上位2割かどうか?で判定されます。言い換えると、顧客や上司は、上位2割に入ることを期待しています。一方で、若手自身は、同年代の平均以上などを目標としていることが多く、上位2割を最初から目指していなかったりするので、上司や顧客の期待とのギャップが生じます。
2 結果がすべて
ご質問文中では、「自分なりに一生懸命に調べたのに」というご記載がありますが、この考え方はやめましょう。
仕事においては結果が全てです。過程が評価されるのは大学生までです。
なお、仕事においてもプロセスは確認されますが、これは、評価するためではなく、不正防止や問題の再発防止を目的としていることが多いです。
成果が出ている場合は、公正なプロセスだったかどうかが確認されます。成果が出ていない場合は、その原因を究明し、再発防止策を考えるために、プロセスを確認します。成果が出ていない場合に、プロセスだけで評価されることはありません。
3 いつ一人前になるのか
さて、1や2を踏まえると、絶望感があるわけです。
上司や顧客の期待を超えるのは非常に困難であり、成果を出せと言われても、そう簡単に成果は出ないと感じるでしょう。いつまでたっても一人前になれないのではないか、といった不安もあると思います。
しかし、それでよいのです。多くの仕事において、一人前になるまでには10~15年ほどかかります。一人前でなくとも仕事はできますし、収益にも貢献できます。半人前だから0点とはならないわけです。
働き方改革の影響で、一人前になるのに必要な期間は伸びたと思われます。ご質問者さんの世代が一人前になるためには、15~20年の業務経験が必要かもしれません。ただ、それなら20年かければよいだけのことです。
この点も、大学生から社会人にかけて大きく変化する点です。
大学生までは、1年後の受験に向けて勉強をするとか、3か月間で資格試験に合格するとか、そういう短期間の目標が多かったと思います。また、合否が出て、合格しないと意味がないといった風潮もあったと思います。
他方で、仕事においては、15年かけて一人前になるといった、長期の目標が設定されることが多いです。また、その過程で、今期はここが良かった、ここが悪かった、というような定性的な反省を行います。筆記試験と違って合否は出ません。15年後に一人前になるために、四半期ごとに少しずつ自分を改善していけばよいのです。
つまり、現在できない仕事があるからと言って、即座に絶望する必要はありません。ただし、それは停滞してもよいという意味ではありません。継続的に成長していかないと、時間をかけて周囲と大きな差がついてしまいますから、毎期の成長は必要です。
4 仕事を楽しめるか
仕事というのは総じてクソであり、仕事が楽しいという主張は、ほとんどの場合で単なる強がりだと思います。
しかしながら、楽しい瞬間や面白い瞬間も、ゼロではないはずです。95%くらいのクソみたいな時間と、5%の面白い瞬間があるのが、仕事というものです。
そして、セルサイドアナリストの仕事において、「バイサイドの人が、自分が発行したレポートに関心をもって連絡をくれる」というのは、面白い瞬間ではないかと思います。先輩社員のおっしゃるとおり、そこでワクワクできないようだと、セルサイドアナリストには向いていないかもしれません。
もちろん、新しい企業について調べている瞬間は面白いとか、発行体の人から「お詳しいですね」と言われてすごく嬉しかったとか、そういう別の部分で面白い瞬間があるなら、適性がないとは言い切れません。そのあたりも踏まえて、キャリアを検討するのが良いと思います。