※昨日お送りした者ですが、修正して再送させていただきます。
現在41歳、妻・2歳の娘と3人暮らし、5年おきに全国転勤あり。14万円(60歳まで補助あり実負担は5.5万円)の賃貸住み。
住宅ローンが借りやすい45歳までに5500万円のマンションを買おうとしている者です。
生活費用含めCF試算した結果、85歳時点で維持費含む住宅関連費用は持ち家が500万円程度安く済むが、総資産は、賃貸の方が2400万円ほど多くなりました。マンション価値は買値の36%、2000万円まで落ちている(▲3500万円)試算のうえでです。
中田様の過去ツイートは、コスパは、ワーストケースであっても賃貸よりマンションの方が優。マンション価値が半値以下になったり、賃貸に家賃補助が出ても同様。
とみえたのですが、これは住宅関連費用としてだけ仰っているのであり、総資産で考えると試算結果のようになるのも十分あり得るという理解でよいでしょうか?
コスパ以外のメリットも多いので結局は買うつもりですが、想像と結果のギャップが大きかったので、伺った次第です。
試算条件
■開始条件
45歳時点貯蓄2200万円、SP500運用3000万円(年利4%想定)
65歳までCF計:▲900万円、インフレは加味しない
■マンションを5500万円で購入
頭金500万円、45歳〜35年5000万円ローン、変動金利、団信込み0.369%→12.7万円/月。
+管理費修繕費等5.5万円。
資産価値は85歳時点で2000万円(36%)まで減。
年利4%想定の運用資金(60歳時点7000万円)から、60歳以降毎年4%、70歳以降200万円取り崩し。
■賃貸 家賃14万円
60歳までは家賃補助あり実負担5.5万円/月。更新費も会社負担。61歳以降は14万円&2年毎更新費14万円。
年利4%想定の運用資金(65歳時点8600万円)から、65歳以降毎年2%、70歳以降200万円取り崩し。
マンションと取り崩し時期、率が異なるのはCFが異なり現金が尽きる不足するタイミングが異なる為。
試算年数が短い、マンション試算価値の減り幅が大きい、運用資金取り崩し額が賃貸の方が少ない、等が賃貸の方が2000万円も総資産が上回る要因なのでしょうか?
逆に言えば総資産額も買った方が上回るためには、遅くても30代で買う、試算価値が高い物件を買う、インフレも加味する、運用資金を取り崩さなくて済むCFにする、といった前提条件かなと考えました。
頂いた諸条件を元に私も計算してみましたが、確かに質問者さんの場合であれば賃貸の方が有利になる可能性が高いと思います。ただし頂いた諸条件については以下の通り修正をご提案したいところがありますし、かつ賃貸の方が有利と考える論拠も微妙に異なります。
1)頭金を出すのはやめましょう
その頭金、何のために出すんです?フルローンを組めるのに頭金を出すということは、頭金を住宅ローンの金利で運用するということに他なりません。そして質問者さんは、現金を持っていれば毎年4%リターンで運用できる前提を持っていらっしゃり、かつ住宅ローンは0.3%台で借りられる前提で計算していらっしゃいます。つまりその頭金500万円を、4%の運用ではなくわざわざ0.3%の運用に回していることになりますが、その合理性は極めて低いと言わざるを得ません。国債並みの低金利で借りられるのですから、フルローンで借りましょう。
2)運用利回り4%前提は若干アグレッシブかも?
S&Pの長期リターンはインフレを控除してもなお4%を超えているのでこの前提はナシではないのですが、今後の為替が読めないことや、キャッシュが必要になったタイミングで株高とは限らないことなどに鑑みて、もう少し保守的に見ても良いと思います。TOPIXの平均配当利回りである2%くらいでシミュレーションしてみてはいかがでしょうか。これでもなお住宅ローン金利を大きく上回るのでやっぱり頭金を入れることは非合理的です。そして、計算すればわかりますが、質問者さんのシミュレーションで購入が不利になった一因は、この頭金を4%で回せていないからです。頭金を入れずに、双方2%前提で比較すればかなり差は縮まりますよ。
3)「60歳まで家賃補助あり」の前提もアグレッシブかも
そもそもですが、ほとんどの企業は家賃補助の年齢の上限を定めています。せいぜい、入社から10年~15年程度が関の山です。質問者さんの会社のように60歳まで家賃補助がある会社の方が稀なのです。そして、この超長期の家賃補助こそが、質問者さんの賃貸をかなり有利にしています。入社から10年程度しか家賃補助を使えない一般的なケースと比べて1,500~2,000万円程度のキャッシュを浮かせており、これが購入に比べた優位性に大きく貢献しています。ということは、質問者さんのこのシミュレーションは「転職しない」かつ「この福利厚生が永続する」ことが前提になっているわけです。しかしながらこの前提、自明ではありません。転職したくなるかもしれませんし、あるいは福利厚生が削られるかもしれません。実際に某金融機関では賃上げの代わりに住宅補助を削るという方策が取られ、一部の人にとっては実質賃下げになってしまっているという事実があります。家賃補助に頼ったシミュレーションは、もしかすると4%資産運用よりも楽観的な見方かもしれません。
とはいえ、それでも賃貸の方が有利かもと申したのは、(1)質問者さんもご指摘の通り、もっと若い時から家を買っていればもっと購入が有利だったものの、今からだと購入の有利さが減じられてしまうという点に加え、(2)5年おきに転勤する見込みということが大きなファクターです。どのような状況かは推し測れませんが、5年おきに転勤せざるを得ない業態であれば、住む場所もあまり選択肢が多くないのではと予想され、そうであれば住宅購入の「投資」的要素が強まるにもかかわらず資産性の高い物件を選ぶ余地が少ないのではと懸念されるからです。即ち、せっかく買っても5年後には売却か賃貸に出すようにせねばならないので自ずと投資家目線の物件選びになってしまいますが、売却であれば購入のメリットを享受しづらく、賃貸であればローン金利が上がってしまう可能性などを考慮せねばなりません(会社都合であれば多くの場合は据え置いてくれますが)。どちらであってもある程度の流動性がないとそもそも売却も賃貸もできませんから、その意味でも5年毎の異動が見えているのであれば購入はやや不安なところです。
他方で、もう買うことを決めたのであれば「買う方が有利」と思える方がよいかもしれません。ちょうど昨日出版された『金利が上が手も住宅ローンは変動で借りなさい』の中に、いかに住宅購入+住宅ローンが有利かという話が延々と解説されていますので、是非ともご一読をお勧めします。質問者さんも私も考慮していないシミュレーションの要素として「保険」のことも書かれており、住宅ローンの保険部分の金銭的価値を加味すると購入の有利さがさらに上がる、などの解説があります。
https://twitter.com/paddy_joy/status/1788212778928628185
より俯瞰的な観点では、どちらであったとしても今回どのようなシミュレーションを行った結果その判断に至ったのかということを記録しておくことをお勧めします。往々にして、後になって過去の決断を後悔するときは過去に考慮していたファクターを忘れていることがあるからです。現時点での判断は正しかったのだ、と思えるためにも、シミュレーションの前提や判断の論拠などは記録しておきましょう。