夫には家事も育児してほしいですって会社で話したら会社の上の人たちから「そしたら出世できなくなるよ」って言われちゃいました。
あくまで育児は仕事の上で荷物にしかならないと感じている会社って嫌だなあと思いました。この場合、発言者が育児をしたくないから、出世を盾に言い逃れしているだけかもしれませんが。
育休取得で評価が下がるし、本当に日本の子育ては罰ゲームだと思っています。
中田さんは育児をしていてどんなサポートがあったら嬉しいですか?
私も家事育児によって会社内の出世には悪影響が及ぶと思っていますし、その方が公平・公正だと思っていますよ。たとえば入社時点ではスペックが同じ男女がいたとして、
(1) プライベートの時間を全て勉強に使って、仕事に直結する難関資格に合格した独身女性
(2) プライベートの時間は家事育児に使って、仕事に直結する難関資格に落ちた既婚男性
がいた場合、会社として出世させるべきなのどちらであるべきでしょうか。私は前者の女性の方だと思いますし、結婚前の質問者さんが(1)だったらきっと同じ思いだったのではないかと想像します。「育児は仕事の上で荷物にしかならないとみなすべきではない」から両者の評価は同じであるべきだとしたらむしろ前者の方から不平・不満が噴出するでしょう。質問者さんの会社の人がどのような文脈で言ったのかはわかりませが(ご指摘の通り単なる言い逃れかもしれません)、会社から見て出世させるべき尺度は会社への貢献度であって、「家事・育児をしているから」出世にゲタをはかせるのは公平・公正な評価とは言い難いものがあります。
私自身は家事育児に相当部分のリソースを割いていますが、そのぶん仕事をもっとバリバリやっている同僚(独身だったり家事育児を他の人に任せていたり)に比べてパフォーマンスを出せていない自覚はあり、そしてその人より評価や賞与が低いことは極めて真っ当だと思っています。妻はそれで納得してくれていますし、むしろ「家事育児にリソースを割くぶん単独では最大パフォーマンスは出せないけれども、夫婦で働くから世帯単位では単独より稼げる」のが共働きの選択と言えましょう。
そもそもプライベートの時間に何をしているのかは会社の介入すべきところでさえありません。たとえば「夫が家ではゲームばかりしているんです」と言った時に会社の人から「そしたら出世できなくなるよ」と言われたとして、それは納得できますでしょうか。多くの人が納得するはずです。家でゲームをしている人と、仕事のための勉強をしている人を比べた時に、ゲームをしている人の方が出世しないのは至極当然のことです。そして会社から見たとき、社員がプライベートの時間でゲームをしているか育児をしているか勉強をしているかは知った話ではなく、監視すべきものでもありません。会社でのパフォーマンスで見てこそ公正と言えましょう。「育児の経験は仕事にも活きる」と主張する人もいますが、それは仕事による話であって、たとえば玩具メーカーであれば仕事に直結するでしょうが(従って玩具メーカーでの育児サポートは非常に手厚い)、土木工事や会計監査や株式引受やプログラミング等々といった仕事に育児の経験が直接活きるわけではありません。育児が仕事に生きる程度にはゲームなどの趣味も生きる、という言い方もできます。
会社から見て社員の家事育児をサポートする正当性があるとすれば、「家事育児」に限らず、プライベートがうまく行っていない人は会社でのパフォーマンスにも悪影響が出得るというところでしょう。上記の(1)の女性が、出産を機に「育児との両立は無理だから」と会社を去るようなことがあれば会社としても痛手ですから、家事育児をしても会社と両立できるようにサポートする意義はあります。でもこれは会社から見て別に「家事育児」に特化された話ではありません。介護などでも同様ですし、極論すればゲームだって「俺はゲームで負け続けると仕事に悪影響が出る」という人にはサポートがあるべきという考え方もあります(実際にパチンコやFXなど賭博性の高い行為を社員に禁じている会社は存在しており、それは賭博の悪影響が会社にまで及ぶことを恐れているためです)。テレワークはその最たるもので、あれは育児世帯に極めて大きな恩恵をもたらしましたが、独身者であっても助かった場面は多かったでしょう。家事育児に限らず全社員のパフォーマンス向上のための施策であれば公正と言えます。しかしそれはあくまで「パフォーマンスを出してほしい」という目的であって、育児が仕事にとって負担であることを否定しているわけではありません。むしろ育児は仕事には負担になるからこそサポートが必要だというのが実情です。この点、ご質問の「どんなサポ―トがあれば嬉しいか」については、「世帯構成によらず社員の柔軟な働き方を支援する制度」がほしいですね。
最後に、「育休取得で評価は下がる日本の子育ては罰ゲーム」とのことですが、どの国が理想でしょうか。たとえば日本より出生率が高いアメリカでは育休という制度さえ存在しません。育休がないので「育休で評価が下がる」ということはないのですが、そんな状態がお望みでしょうか。仕事をしないとそのままクビになってしまうので出産から1週間程度で仕事に復帰する女性も普通にいるのですが。日本は育休などの制度は世界で最も整備された国の一つであり、国連は日本の育休制度を世界一と認めています(ご参考記事:
https://twitter.com/paddy_joy/status/1490928177304457216 )。日本の子育てが罰ゲームなのではなく、質問者さんの中で全く別の要因でストレスが溜まっているところ、それを何かのせいにしたいだけだったりしませんでしょうか。日本の育児環境も完璧ではないことは確かですが、往々にして育児にまつわるストレスは半径3メートル以内で発生しており、その要因を「日本」にまで拡大してもあまり建設的な解決になりません。半径3メートル以内の、ご自身で解決可能なストレス源を特定することをお勧めしたい次第です。