日系IBDの若手です。手元に余裕がある時の自己研鑽に関するご相談です。
現在の私の繁忙度でいうと、立て続けに案件がドロップし、案件に飢えている状況です。
すぐに案件の受注が取れる、動く状況ではないなかで、どのように自己研鑽していくかを悩んでおります。
ネルさんは書籍や資格に頼るのではなく、仕事量で経験を積むことを基本に、時間のある時は先輩の作った資料を見て勉強することをおすすめされていたと理解しております。
より具体の勉強の仕方としては、過去案件のバリュエーション、DDレポート、mtg資料などを確認し、その内容を完全に理解できるまで考え、勉強していくという理解で相違ないでしょうか。
また上長には会計知識や法律など、書籍で体系的に勉強することを推奨されております。
このあたりのバランス感(上長のおすすめと言えど、過去案件で勉強した方が良いなど)があればご教示いただけますと幸いです。

ネルさん
ご質問者さんの能力にもよりますが、体系的な勉強はおすすめしません。
私の認識では、「体系的に学ぶ」というのは初心者向けの学習方法です。ご質問者さんが企業金融の初心者なのであれば、体系的に学んだほうが良いのではないでしょうか。
しかし、日系IBDの若手といっても、それなりに高い給与をもらっているプロフェッショナルですから、初心者気分で学習をすることはおすすめしません。プロフェッショナルとして仕事をするのであれば、プロフェッショナルらしい学習方法を身につけたほうが良いと思います。
1 体系的に学ぶとは何か
2 仕事経験を積むということ
3 どのような方法で勉強すべきか
1 体系的に学ぶとは何か
そもそも、体系的に学ぶとは、どういう状態を指すのでしょうか。私は、「他人が整理してくれた体系を、事前に、インプットする」という意味だと思っています。
体系的に学びたいと言っている人は、だいたい書籍等の教材を求めています。他人が教材を用意してくれないと勉強できないと言っているようなものです。そういう姿勢が許されるのは大学生までです。上司は学校の先生ではありませんから、上司が必要な知識を体系的に整理してくれるわけではありません。
また、体系的に学ぶといっている人は、だいたいインプット偏重です。仕事においては、アウトプットのみで評価されます。どれだけ優れたインプットをしたところで、成果物がクソなら0点です。したがって、学習段階においても、インプットとアウトプットの比率は1:9くらいにしておくべきだと思います。
最後に、最も重要な点として、体系的に学びたいと言っている人は、学習が終わってから仕事を始めようとしていることが多いです。言い換えると、学習に終わりがあると思っているんですよね。大学受験や資格試験ならそれでもいいですよ。数千時間くらい勉強したら、試験には合格できるでしょう。
一方で、仕事で一人前になるためには、10年以上の期間かかります。時間にして3~5万時間くらいの勉強が必要です。この量の勉強を、事前に済ませておくことはできません。20~30代のプロフェッショナルは、知識が不足した状態で、半人前のまま仕事に臨み、それでも成果を出すことを求められています。
このような構造は、体系的な学習とは正反対に位置します。新卒1年目のプロフェッショナルがやるべきことは、「新卒1年目で担当する業務に必要な知識」をインプットすることであって、「体系的に整理された参考書の第一章」をインプットすることではありません。
2 仕事経験を積むということ
仕事経験を通じた学習とは、ご理解のとおり、仕事の予習復習になります。
予習とは、先輩社員が作成した資料を、自分でも作ってみるといった練習です。パワーポイントなどの資料でもよいですし、財務モデルや契約書でもよいです。先輩社員と同じものが作れるようになるまで、繰り返し練習をしましょう。
復習とは、自分がやった仕事のやり直しです。実際の業務では時間制約がありますから、自分が100%納得できるアウトプットを出せることはまずありません。復習段階では、時間に余裕があったら何を改善できるか?を考えてみるのが良いでしょう。そういう反省を通じて、次回以降の成果物の品質が向上していきます。
こういった仕事経験を積むことで、事例ベースで仕事を覚えていくことができます。
・7割の案件ではAの方法を適用できる
・2割の案件ではBの方法が有効である
・残り1割の案件では、テーラーメイドで考えるしかない
みたいな肌感覚を掴むことこそが、プロフェッショナルとして成長していくということです。
事例ベースで勉強をしていれば、理由を説明できるようになります。上司から、なぜAの方法を選んだのか?と聞かれたら、「○○という理由で、X案件やY案件と同じAの方法が適切だと考えました」と回答できるでしょう。体系的な勉強をしていたら、「教科書にそう書いてありました」みたいな回答しかできないと思います。
3 どのような方法で勉強すべきか
まとめると、少なくとも自分が本業とする領域については、仕事を通じて勉強をすることを強くお勧めします。
本業でない領域については、体系的に勉強をしてもよいと思いますよ。一流のプロフェッショナルであっても、本業以外の部分は素人ですからね。素人は素人らしく、市販の教材を使って勉強をすればよいと思います。
なお、上司の発言については、文字どおりに受け取らないほうが良いと思います。パワハラに厳しい世の中ですから、相当にオブラートに包んだ助言である可能性があります。例えば、私なら以下のようにオブラートに包みます。
おすすめの書籍を紹介します。
訳:大学生レベルの基礎知識が足りていないんだけど、どうなってんの?
まずは簿記の勉強をするのが良いと思います。
訳:お前は致命的に会計の知識が足りていないから、何でもいいからさっさと勉強しろ
こういう助言を受けた場合、文字どおりに解釈して体系的な勉強に逃げるのはお勧めしません。
結局のところ、上司や顧客は、次の仕事をちゃんとこなせるかどうか?しか見ていないので、体系的な勉強をするよりも、次の仕事のための予習復習をしたほうがよいです。
そうやって目の前の仕事をこなしていけば、10年後には、体系的な知識が身についていることでしょう。しかし、体系的な知識を身につけることを目的にするのがお勧めしません。そういう考え方では、目の前の仕事が疎かになるからです。