英語の講演は、どうしたら聞き取れるようになるのでしょうか。海外の研究者の英語での講演を聞くと、(もともと私自身がその問題に詳しい場合を除き)ほとんど理解できません。また、英語でノートを取るのは同じく難しいです。講演中、聞き取れた単語をいくつかメモすることはできるのですが、全体の議論を理解し、文脈を追ってメモすることは不可能に近いです。私はTOEFL iBTの点数が90点代前半で、リスニングの点数も高く、英語に対して苦手意識がある訳ではないです。いわば「アカデミック・リスニング」の技量が試されていると思うのですが、英語の講演でのリスニングやノートテイキングはどうしたら向上するとお考えでしょうか。

阿部幸大さん
Tipsありがとうございます。「アカデミック・リスニング」、いいですね。
この内容は本の一部になる予定なので、ここではごく簡単に回答します。あなたは、自分がまったく知識がない専門分野の講演を日本語で聞いたとしても、そこそこ理解できますよね。しかし英語だとまったくできない。ということは、内容が理解できていないことではなく、英語が聞き取れていないことが問題なのです。さらに問題の所在を絞るために、「相手が喋りつづける」講演と似た形式、たとえばニュース番組やオーディオブックなどと比較してみてください。たぶん断然これらのほうが聞き取りやすいはずです。ここで、研究者の講演が聞き取れないのは専門知識が元凶であろうという仮説が立ちます。じっさい部分的にはそうです。しかし、もうひとつの大きな問題は、キャスターやナレーターと研究者では、英語の発音がまったく異なるということです。読みのプロの英語はあなたが高得点を取れるTOEFLに近い発音であるのにたいして、研究者の講演は、それとはまったく異なる、かなり崩れたものです。
リスニングの勉強は、TOEFL満点でやっと入り口に立った程度。あんなもん、所詮は外国人むけのテストです。リスニングが苦手なひとにとっては、そこから「普通」の英語が聞き取れるようになるまでに、長い長い道のりがあります。専門家の講演が聞き取れないのは当たり前なのだと思いなおすところから、新たにリスニングの勉強を始めましょう。