ネルさんのモデリング講座を受講しているメーカーの経企にいる者です。
UFCFを算定するため財務3表を作成していると理解しているのですが、以前、会社がBig4を使った際に彼らは財務3表を作成せずにNOPATベースでDCF法をやっていたようだったのですが、
①NOPATベースのDCF法は、UFCFベースのDCF法の簡便版という理解でよいでしょうか。
②Big4がNOPATベースのDCF法で事業価値を算定し、相対する売り手でUFCFベースのDCF法で事業価値を算定している場合、厳密には手法が異なるように思えますが、交渉になるのでしょうか。もちろん、両者のWACCや成長率で差異は生じていると思うのですが、前提となる算定手法が一致しない場合、どうしているのかを知りたいという趣旨となります。
ご質問ありがとうございます。
①についてはご理解の通りです。講座で取り扱ったのは下記(B)の方法ですが、BSを作成せずに調整すると(A)の方法になると思います。
(A) NOPAT+減価償却費+運転資本の増減-設備投資費
(B) アンレバード純利益+減価償却費+運転資本の増減+その他資産負債の増減-設備投資費
この場合、NOPATとアンレバード純利益の差分だけでなく、その他資産負債の増減による差分も生じます。もっとも、営業外損益と特別損益がゼロで、その他資産負債が増減しない(横置き)と仮定されていた場合、(A)と(B)は一致します。(A)は簡易的な手法ではありますが、間違いとまでは言えないと思います。
②については、2つの要素があります。
まず、価値と価格は異なります。価値算定の結果が1,000億円だったからと言って、相手方に1,000億円と提示する必要はありません。買い手は安く買いたいと考えることが多いですから、「価値算定の結果が1,000億円だったので、売り手には900億円で打診する」といった方針が一般的です。この際、売り手側には「提案価格は900億円である」という事実のみが伝達され、価値算定の細かい前提は開示されません。
次に、そもそも売り手と買い手の価値算定は、上記①以外にも様々な差があります。例えば、売り手はマルチプル法で評価しており、買い手はDCF法で評価しているといったケースも多いです。これを踏まえると、両社がDCF法を選択している時点で、①のような差分があったとしても、相対的には近しい評価手法を選択していると捉えることができます。
売り手と買い手の目線の違いについては、こちらの記事もご参照いただくと、イメージしやすいかもしれません。
https://modeling-intro.com/column/modeling_columns/1140/