04月30日

質問者さん

事例判断の最高裁判決に対する評釈で射程が検討されているものをみて違和感を持った一方で、事例判断でもその利益状況を抽象化すれば射程を検討できなくないなとも思い、あれこれ考えていたところ、自分の違和感の正体が分からなくなってしまったのですが、先生の目からみて何か考えられるものはありますでしょうか。

04月30日

Yukio Okitsu

Yukio Okitsuさん

「事例判断でもその利益状況を抽象化すれば射程を検討できなくない」というのはそのとおりであり、研究者もしばしばその種の検討をします。たとえば、行政法でいうと、タヌキの森判決(最判平21.12.17)は、事例判例または場合判例だと思いますが、行政法学では、あたかも違法性の承継に関する法理判例のような扱いを受けて、その射程が検討されています。その反面で、法理判例と目されているものであっても、事案との関係で射程を限定して読むことはあります。その判断がその後の判例によりどの程度踏襲されているかによっても、先例的価値は変わってきます。事例判断が集積していった結果一定の判例法理が形成されることもあります。国家賠償法1条の職務行為基準説(職務義務違反説)はその例だと思います。 このように、判例の射程というのは、その判決ひとつで、あるいはその判決の書き方ひとつで定まるものではなく、さまざまな要素の相関で定まるものなのではないでしょうか。

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Yukio Okitsu

Yukio Okitsu

https://www.saiensu.co.jp/search/?isbn=978-4-88384-375-6&y=2023

法学研究者志望者からの質問、興津征雄『行政法I 行政法総論』新世社(2023年)の内容に関する質問(なるべくページ数等を特定してください)に積極的に回答します。そのほかの質問はお答えできる範囲でゆるく答えます。

Yukio Okitsuさんが

最近答えた質問

12月11日

仲野先生が、一般処分でも抗告訴訟対象性を有するのは、「相手方が時間的にも場所的にも限定される場合」である、といった趣旨のことを仰ってましたが、これは概ね学会でもコンセンサスのあるところなのでしょうか また、先生は一般処分でも処分性を有する場合の特徴はなんだと思いますか。

12月11日

続き質問

学部の経済法の授業で教授が、「経済法」という分類は独禁法とその周辺を専門にする学者の間では「競争法」に取って代わられ少なくとも学界ではほぼ死滅しており、学生向け教科書の題名や司法試験の科目名くらいでしか使われなくなっているため、「経済法」に何法が含まれるかという話は今やさして重要ではない、ということを述べられておりました。

12月11日

憲法上のLRAの基準と比例原則の違いはなんなんでしょうか。