ナカダさんは、近年の、ライトノベルについてどう思いますか?
(説明がとても長くなることをあらかじめ謝罪させてくださいすみません)
0年代から10年代初頭にかけて、ライトノベルはいわゆるヲタク向け文庫ながらも、ストーリーとしてきちっとした軸はあったと感じています。たとえば少年が少女を救うお話であったり、はたまた少年と少女が共に歩んでいくお話だったり、その逆であったり、あるいは巨悪を打ち倒すお話であったり……基本的な起承転結ができていて、地の文や掛け合いには、ヲタク特有のネタが敷き詰められつつも、ストーリーとしては王道で、だから人気があったし部数も伸びていたのだと考えています。ストーリーに魅力があればもちろんキャラクターにも人気が出ますし、人気のあるIPが各社に揃っていてグッズも盛況でした。市場規模としても右肩上がりで、各社の業績も伸びていたということが数字として証明されています。
ところがいったい何があったのか、7,8年前くらいにライトノベル大暗黒時代に突入して、これまで培ってきたライトノベルらしさをぶち壊しにして、突然、各社は、ヒロイン大喜利や学園大喜利、異世界大喜利を始めました。一風変わった属性のヒロインさんが出るだけの一発モノや、変わった設定の学園モノ、あるいは異世界(はこの中では比較的マシな部類だと思っていますが)モノに手を出しては捨てて、出しては捨てての繰り返しを今になっても繰り返しているように見受けられます。わたしが知っているライトノベルというと、「少年らしいストーリー性」なのですが、あの頃のライトノベルはどこにいったのだろうと思います。誰かを助けるわけでもなければ、命を懸けた戦いをするわけでもなく、涙もありの演出もなく、バカげたコメディやぶっとんだヲタクネタや時事ネタを突っ込んでくることもない。とにかくお題勝負やキワモノ勝負が続き、でもそのほとんどが売れず(話が面白くないので当然だと捉えておりますが)、なにが売れるか分からないという沼に各社がはまっている。これは……なんだか、ジャンプの暗黒期に似たモノを感じていて、しかしラノベ業界は特に長くこの暗黒期に浸かってしまっているように思います。
どうしてここまで、ラノベ業界は多くの「エンタメ性」を度外視するようになってしまったのでしょう。ラノベというのは美少女を出せばいいわけでもなく(そもそも近年ではヲタクの受けが広くなっているため美少女やハーレムはラノベだけの武器ではなく、もはやかつてのヲタク商法は効かないという悲しい現状もありますが)、お題勝負やヒロイン大喜利が上手くいけば、ポンポン売れるものではないはずです。
思わず次へ次へと読んでしまうようなふざけた地の文、そのキャラクターでしか出せないセリフ、掛け合い、手に汗握り時には笑い時には涙するストーリー性、ジャンプのように忠実な起承転結で物語を書ける構成力。これらの「力のあるラノベ」が、どうしても見当たりません。
たしかに、ここ数年はいわゆる「なろう系」が一番売れておりその線が最も固いのだと捉えられてきましたが、それだって安直な無双劇や、胃もたれするようなハーレムだけで人気が出たわけではありません。わたしは、「なろう系」の人気作をいくつも購読していますが、そこには「かつてのラノベみ」があるんです。面白おかしい世界観と設定から一転、大切な人の死が訪れることもあれば、涙ある戦いもあったり、家族との絆や、死んでいたと思っていたはずの人との再会など……各社の受賞作や出版作品よりも、「アマチュア」の人たちの方がよほど綺麗な王道を書けているから売れているんだと思います。異世界モノが人気なのではなく、「面白い話たちのジャンルがたまたま異世界モノに多かった」だけであり、つまり視点が逆なんだと考えてます。
なにが売れるんだろう。どうしたらラノベは盛り上がるんだろう。おそらく各社が大沼に陥っているこの迷宮のような問いについて少なくともひとつの答えは、「面白い話を書くこと」が必須なんじゃないかなとわたしは思っています。今年、大ヒットしたリコリコだって百合だからウケたのではなく、作画だけで好評だったのではなく、「話が面白い」という前提があり、物語の構成についてもとりわけ捻った内容ではなくむしろド王道でした。そして早速人気の出ているチェンソーマンもまた、1話から絵に描いたような起承転結で話が進んでいますし、一昨年の呪術廻戦を彷彿とさせるような問題提起とスピーディーさで話が進行しています。
長くなりましたが、どうか、ライトノベルが賑わってほしい。という一心でわたしなりの見解を伝えてみました。もちろんこれはナカダさんに対するなにか偏見であったりスニーカー文庫への文句などではさらさらありませんし不快に感じたのなら大変申し訳ございません。しかしラノベには、アニメよりも漫画よりも何よりも盛り上がってほしいという気持ちがあり、いまのラノベの衰退ぶりに思わず訴えてしまいました。どうか、スニーカー文庫だけでなく各社も「面白い話が書ける作家さん」が出てきてくれれば、現状打破に結びつくのかなと思っています(見当違いでしたらすみません)。そして地の文も凝って、キャラクターにも凝って、掛け合いにももちろん熱意を注いでほしいという限りです。
この度は、長くお時間をいただきまして誠にありがとうございました。
ナカダ(スニーカー文庫)さん
正直に書いちゃいますが、このような質問というか意見を業界にいる人間に送るのは、とても卑怯で失礼だということを自覚されたほうがいいと思います(スルーするか迷いましたが)。
そのような熱意があり業界に変わって欲しいと思うのなら何かしらのかたちでプレーヤーにならないと不可能だと思いますよ。
少なくともこのような質問箱に意見を送ってるだけでは変わらないはずです。