東大生でバイトしていた人はそこまで多くなく、しても飲食店や肉体労働ではなく塾講師とかでしたよね。奨学金を借りざるを得ない苦学生はバイト漬けのためにGPAが低かったりする(それが原因で奨学金を止められることも)のですが、その一方で生家が裕福な人間は労働をする必要はなく(また大学までの距離も近く)、GPAは当然高くなる。このきわめて歪な構造を許容してしまうような社会が嫌というかフェアじゃないと思いませんか?

ネルさん
所得に対する解像度がさすがに低すぎるように思うので、いくつかの論点に分けてお答えします。
1 貧乏は美徳ではない
2 裕福な家庭が子にお金を使うとは限らない
3 アルバイトは業務経験を兼ねられる
4 貧乏なくせに遊びがち
5 GPAはほぼ関係ない
6 そもそも学力も低い
1 貧乏は美徳ではない
まず、貧乏は美徳ではありません。どちらかというと恥ずべき状態です。
地方なら世帯年収800万円程度、都内でも世帯年収1,500万円程度あれば、子の学費くらいは捻出できるはずです。この程度の世帯年収すら稼げていないのは、両親の怠慢と言って差し支えないでしょう。
世帯年収800万円であれば、父親が年収500万円、母親が年収300万円で到達しますからね。この金額すら稼げないのは、両親のどちらかが働いていないか、職業の好き嫌いをした(地方でいえば、年収500万円のブルーカラーより、年収350万円のホワイトカラーを好んだ)かのどちらかです。
両親の怠慢によって学費を払えなくなった家庭の子が、両親を責めるならともかく、社会に文句を言うのは筋違いだと思います。よその家庭は、より多くの税金を納めながら真面目に働いているわけで、文句を言われる立場にありません。
2 裕福な家庭が子にお金を使うとは限らない
そして、貧乏な家庭の子が誤解しがちな点として、裕福な家庭だからと言って、子にお金を使うとは限らないという点があります。
地方で世帯年収1,000万円程度の家庭では、「所得制限のために奨学金を借りることすらできないのに、両親は子の学費を払おうとしない」みたいな状況が普通に起こります。この場合、奨学金を借りられる貧乏家庭の子より詰んでいます。
両親がお金を使ってしまう家庭や、逆に、教育にしかお金を使わず、その他の生活水準が貧乏家庭より低いといった家庭は、いくらでもあります。私自身も、いわゆる教育費貧乏(教育費にはお金を使うが、それ以外の生活水準が著しく低い)という家庭で育ちました。
貧乏人が思っているほど、中間層(地方でいうところの世帯年収1,000万円前後、都内ならその1.5~2.0倍)の家庭は、裕福ではありません。貧乏人が妄想する「年収1,000万円の生活」は、実際には年収4,000~5,000万円くらいの生活です。そんな家庭はごくわずかです。
3 アルバイトは業務経験を兼ねられる
また、アルバイトの種類を選ばないから、その後のキャリアに繋がらないのです。
企業でアルバイトをすれば、就活の役にも立ちますし、職業選択にも活用できます。私は、大学生のころからキャリアへの解像度が高いほうだったと自負していますが、これは人材会社で2年以上働いていたからです。転職エージェントの方とお話をする機会や、キャリアをこじらせている若手社会人と関わる機会が、大学生の頃からあったためです。
手軽だから飲食店で働くとか、時給が高いから塾講師をやるとか、そういう近視眼的な視野だから、大学生のうちの貴重な時間を、しょうもない小銭と交換してしまうのです。面倒な選考を受けて、企業で働いて、仕事能力を改善し、十分な評価を受ければ、経験面でも金銭面でも、飲食店や塾講師よりはるかに有意義な時間の使い方ができるはずです。何なら、普通に授業を受けるより、人生においてプラスになることも多いでしょう。
そういう努力をせずに、「貧乏だから飲食店で働いた。そのせいで就活がうまくいかなかった。」みたいなことを言っている人は、そもそも不利になった原因を勘違いしています。貧乏さが原因ではなく、当人の視野の狭さや思慮の浅さが原因です。
4 貧乏なくせに遊びがち
また、私の知る限り、本当に生活費が足りないレベルの苦学生は、(一定レベル以上の大学では)それほど多くありません。
生活費は払えるが、遊ぶお金がないみたいな状態を、苦学生と呼んでいる人がたくさんいました。典型的には、埼玉あたりの公立高校を出て、奨学金を借りながら東大や慶應(早稲田は距離的に近い点に留意)に長時間通学している層ですね。
毎回2次会までしっかり参加して、サークルの旅行にも参加し、卒業旅行もしっかり計画しておきながら、「お金がないからアルバイトをしている」とか言っている人が割といるんですよね。私のように、旅行には一切いかず、お酒もほぼ飲まない人から見ると、「それはお前が散財しているだけだろ」としか思えません。
もちろん、大学生活を楽しむのも重要だとは思いますよ。私自身も、現在交友関係がある人の大半は、大学時代に知り合った人たちです。ただ、時間とお金が限られている中で、キャリアより学生生活を楽しむことを優先した人が、「お金がなかったからキャリアで不利になった」と主張するのはおかしいです。遊んでいたから不利になっただけです。
5 GPAはいうほど関係ない
最後に、GPAは就活にほぼ関係ないので、GPAが低いから就活で不利になるということはほぼありません。
そもそも、大学の勉強を頑張っているアピールをしなければ、GPAを聞かれることすらないはずです。「どうしても御社に入りたい。御社に入ってこんな仕事をしたい。そのために今できることをこれだけやっています」とアピールしている学生に対して、「で、GPAは?」と聞いてくる採用担当者はまずいません。聞かれる場合でも、「規則なので一応確認しますが、GPAは?」くらいのトーンでしょう。
大学の勉強を頑張っていますと主張するから、「じゃあ、GPAを教えて?」と聞かれるのです。その聞かれ方をして、3.0~3.3くらいの微妙なGPAを提出するから、「頑張ったと主張するのにその程度かよ、不採用でいいや」という反応をされてしまうだけです。
6 そもそも学力も低い
1~5の内容は、一定レベル以上の大学(ここでは、マーチ以上くらいを想定)の話をしています。
一定レベル以上の大学に入学できなかった人は、そもそも受験勉強が足りていなかったのが原因です。日本の大学受験は、中国や韓国の受験ほど熾烈ではないので、高校生くらいまで人並みに勉強をしたうえで、高校2年生くらいから毎日12時間ほど受験勉強すれば、ほぼどの大学でも受かると思います。志望大学に不合格になった人は、これ未満の勉強しかしていなかったはずです。
実際、部活動や学校行事にうつつを抜かしていたり、定期試験の勉強をしたりしていたのではないでしょうか。なお、定期試験の勉強は受験勉強には含まれません。なぜなら、一部の超進学校を除いて、中高の定期試験内容と、大学入試の内容はほぼ重複していないからです。私の母校もそうでした。
学力が低いのが原因で社会から評価されないことを、親の所得が低いせいにしているケースも散見されます。他責思考にならずに、自分の学力が低いのが原因だと認識したほうが良いと思います。
以上のように、キャリアと所得はいうほど関係がありません。(実家から通える田舎の公立大にしか行けなかったとかならともかく、)一定レベル以上の大学に進学できている前提なら、ほぼ無関係だといってよいでしょう。
ほとんどのケースにおいては、時間の使い方が下手くそだったり、キャリアより優先したもの(主に遊び)があったりしたせいで、不利になっているだけです。お金のせいではありません。
自分自身または自分の両親のせいで不利になったことを、社会のせいにしたり、企業のせいにしたりするのは、頭がおかしいとしか言いようがありません。極めて悪質な他責思考であり、正直そんな人と一緒に仕事をしたいとは思いません。社会がフェアだからこそ、評価されないのが自然です。
ご質問者さんが、貧乏家庭出身で他責思考の人なのか、逆に裕福すぎて下々の生活への解像度が低いのか、単に学力が低いのかは知りませんが、その主張は間違っていると思います。