こんにちは。いつもツイートを拝見しております。
先ほどXママ垢界隈で「娘をAV女優にしないためには」といったようなテーマのスペースが開催されていました。
主催の方も、その周りの方も「AV女優を"世間は"蔑んでいるし、日陰の職業であるべきだ」という論調で話をされていて、少々辟易しました。
業界の構造についておそらく詳しく知らないのに色々と決めつけで話していて、せめて色々勉強してから話をしてほしいと思いました。
また「息子をAV男優にしないためには」という話が全く出ていなかったのは興味深かったです。
中田さんはAV女優という職業についてどうお考えですか。またご自分のお子さんがAVに出演していたことを知った場合どのような対応をされますか。
中田:‖さん
議論と感情論が輻輳していますが、少なくとも「世間は〇〇という職を蔑んでいるし、現に私はそんな人を会社で採用しない」という前提から「だからこんな職業に子を就かせてはいけないし、表立って"啓蒙"する活動は正しい」という結論に繋げるロジックは極めて悪手かつ悪辣ですし、その認識がなさそうな発言が多方面から上がってきたのは閉口しましたね。
「世間も私も〇〇を見下しているし会社で採用もしない」という事実からは「だからこの対応は正しいのだ、これは差別なんかじゃない」という主張には自明に繋がったりはしません。「世間も私も認識をアップデートする必要がある」という結論が当然あり得ますし、あらゆる差別問題はこのような形で啓蒙をされています。
一例として、「部落出身の人とその家族は蔑まれているから、我が子を部落の人と結婚させないためにはどうしたらいいか」というスペースがあったらどうでしょう。「部落の人はみんな内心では蔑んでいるでしょう?私だって会社で採用しませんよ。だからうちの子がちゃんと就職できるようになるためにも、うちの子が部落にならないよう啓蒙することは正しいんです」などと言っていたらどうでしょうか。そういう人ほど「これは差別ではない、私は差別なんてしていないし選民思想なんて持っていない」などと強弁するのですが、そんなわけはないんですよね。自らの中に持っている差別心や選民思想を正当化してるにすぎません。「性を弄んでいる」などの理由もすべて後付けです。採用基準として候補者が性を弄ぶ思想を持っているかどうかが明記されているような会社があったらその方がむしろ問題です。厚労省のガイドラインにも仕事に関係しない思想を聞いてはならない(読んでいる新聞や愛読書さえ聞いてはならない)と書かれていますしね。こういう後付けの論理は、部落出身者とその家族を排除する時に「部落民の方が犯罪率が高い」などのもっともらしい理屈がつけられてきたのと同じです。
人の心は弱いので、誰もが何かしらの差別心や選民思想を持っています。だからこそ歴史が長い大企業の人事部には未だに部落関連の差別問題の対処法マニュアルが存在しますし、場合によっては過去何度も問題になった「部落出身者リスト」が極秘に保管されている可能性もあります。しかしそういうことはあくまで世間に隠さなければならないほど極秘の「差別心」なのです。まして「みんな蔑んでいるでしょう?だからあなたの子が蔑まれないように啓蒙してあげる」などと公に言えるような話題でもありません。それは世間から蔑まれているとされる職業についても同じです。
部落出身の人と結婚することは職業と同様に個人の選択の自由なので上記の例えを出しましたが、別に個人の選択でなくとも「みんな差別してるから我が子が差別されないように啓蒙するのは当然」ロジックが危険であることは少し考えればわかるはずなんですよ。子供に男児と女児がいたら、より教育費をかけるべきはどちらでしょうか?「将来的に稼げるのは男だから男児の方に教育費をかけるべき!俺も採用担当だったら男を採用する!こういう現実を啓蒙してあげるのは正しい!」とか言う人がいたらどうでしょうか。「そうだね現実を教えてくれてありがとう、女性の方が給料が低いという現状を前提にした子育てをするね」みたいな話になるでしょうか。絶対なりませんよね。「そういう感覚を持ってる発言者の意識をアップデートしろ」と炎上するのが見えています。そして昔はこういうロジックが実際に公言されていたのです。
こういう自らの差別心や選民意識を自覚できずに「啓蒙」活動をしてしまうということは、自らがふだん唾棄している無自覚な差別主義者と同じ位置に立ってしまっているということを気づけていないという点で大変悲しいことでもあります。我が子に教えられるとすれば、AV女優・男優になってはいけないなどという表層的なことではなくて、自らの差別心に自覚的であることと、それを公には出さないことの重要性を説きますね。