はじめまして。
いつも非常に示唆に富んだ解答に楽しませてもらっています。
非常に可燃性の高い内容を含む質問で申し訳ありません。
将来などへの不安に強く苛まれている27歳男性です。
今回のご質問で何かしらの新たな視点を得られればと思い、質問させていただきました。
現状に対する客観的なアドバイス、温かいお言葉をいただければと思います。
最近知ったのですが、私は「きょうだい児」(何らかの障がいがある兄弟を持つ人)というものに属するようです。
その影響か、心が折れる最後の一手は高校の部活での問題だったものの精神疾患を患うことになりました。
なんとか地元の公立大学に進学できたものの、学部時代は就活で採ってもらえるはずもなく、逃げるように修士課程へ、そこではどうにかこうにか内定をいただき現在もそこで仕事をしています。
現在は、医師の診断により精神科に通わなくなっても良くなり1年半ほどが経ちましたが、この年になるとより具象化された将来への不安が募ります。
要因としては、きょうだい児という言葉を知り、自分にそのラベルを貼り付けてしまったこと、社会人になり自身のアップサイドの低さと周囲との人生経験の一生埋まることがないであろう溝に気づいたからだと思います。
これまでの私は、なんだかんだいって中学・高校・大学・社会人と次のライフステージに上がれば自然と良くなるはずだと将来に無邪気に期待をして耐えることができていました。結果としてなんの努力もせず、布団にこもって震え、風呂で泣いて、椅子に座ってはツイッターの情報の濁流で脳をビジー状態にするだけの努力を何もしていない状態でしたので、当然にそれらの願いは叶うはずもありませんでしたが。
しかし、次のライフステージというものがなくなった上にそういう概念を知ったからか現在は、とにかく普通の家族構成で殴られ蹴られ自分の体が自分の体じゃないような感じになることがない、まともな家庭で愛されて過ごしてみたかったという過去志向の状態になっており非常に苦しいです。職場でもこんな事が頭の中をぐるぐるしていますし、涙も出てきます。
この根本的な原因については簡単に気づくはずなので、おそらく心の防衛機制か何かとしてそれを受け入れず、精神疾患が治まって安定した今だからこそ、内面化を行うために起きているのかもしれません。その意味では単純に精神状態が荒んでいるといえるものでもなく、ある意味の進歩としても捉えています。かつての頃とは違い、震えて手もつけられなかった勉強も現在はできるようになり、最終目標の資格取得は叶わないのでしょうが、簿記一級の取得もできました。現在も苦しいなりに過去はもっと苦しかったような記憶が思い出せないなりにぼんやりとあるので総体的には改善しているのだと思います。
現在の夢は幸せな家庭を体感することです。ですが、こんな状態で恋愛などの経験ができるはずもなく、数少ないかつての友人などからチラホラ高校時代の同級生が結婚したなどの報せなどを受け、ただただ憧れと焦燥感が出てくるばかりです。そもそもそういった仲の相手ができたことがない、できたとして相手が自身のこういう経歴など理解を示してくれる可能性は低い、強烈なストレスを受けた方の子供への虐待が起きる確率、そもそも自身の定義する体感してみたいまともな家庭の中には自分のような人間は勘定に入っていないなど色々なことが板挟みな状態です。
配られたカードで人生生きていくしかない、そして私は努力といえる努力は何もしておらず現状の苦しさは当然の報いであり、私の我慢するという行為にはなんの意味もないということは重々承知ですが、そろそろそれでも頑張って耐えてきたつもりなので少しは救われたいです。
内容が大きく飛ぶような駄文を長々と押し付けるような形になってしまいましたが、今後の人生に活力が湧くようなお言葉を賜ることができればと思います。
最後に、きょうだい児ではありますが、私は兄であり弟ではなく、ヤングケアラーとして駆り出されていたわけでもありません。祖父のお陰できっかけはアレなものでしたが文系ながら修士課程まで行き、きっかけは母に刃を向けられたことであるものの一人暮らしを学生時代にさせてもらいました。その意味では、私はかなり恵まれた人間なのでしょう。ですが行政を含めおそらく祖父を除いた誰からも何かしらの助力をもらえた記憶がありません。社会問題としてとりあげられつつあるようですが、私のような思いをする人間は私で最後になってほしいと願うばかりです。
ご質問頂きありがとうございます。これまでの人生のご苦労を察するに余りあります。お伝えしたいことは2つあります。
まず、問題の本質は「きょうだい児」ではなく親御さんとの関係だということです。障碍をもった兄弟姉妹がいても、親がしっかりしていればきょうだい児でも健全な精神的基盤を築いて人生を前に進めることができるようになります。そういう例はいくらでもあります。こう書くと親御様が「しっかりしていなかった」ように受け取られるかもしれませんが、恐縮ながらその通りです。親御さんも障害のある子を持って追い詰められていたという事情は斟酌すべきかとは思いますが、それでも子供に刃を向ける親は「しっかりして」はいません。親御さんご自身が救済の対象であり、保護者としては未熟だったというのが実情です。質問者さんの精神が不安定なのはごきょうだいのせいではありません。母親に刃を向けられるような過酷な親子関係だったからです。おそらく心の安寧は親御様から得られていなかったのではないでしょうか。お父様の話が出てきませんが、「助力をもらえたのが祖父だけ」という一文からも親御様への不信がにじみます。親は子供にとって心の避難基地です。困難が多い外地で勇気をもって立ち向かえるのは、必ず自分を守ってくれる基地があるからです。その「心の避難基地」を持てなかった人は外で戦うための勇気を持ちにくく、何事にも不安になりやすくなります。まさにこれが質問者さんの状況であり、「きょうだい児」であることは不安にさせる外的要素ではあれども根本的な原因ではありません。
自ら「心の防衛反応によって根本的な原因が見えていなかったのだと思う」と書いていらっしゃいますが、まさにその防衛反応によって「根本的な原因」が未だ誤解されているように見受けられます。どこかに自分の親を否定したくないという防衛的心理が働いているのでしょう。しかし、本来は心の基地さえあれば、きょうだい児であっても「それでも何とかしよう、きっと何とかなる」と、苦しみながらでも前向きに人生を歩めるものです。そのような親御さんの元に生まれてしまったこと自体はまさに「配られたカード」の問題でありどうしようもないのですが、しかし問題の所在を間違えるとわずかな勇気をもって立ち向かうその先さえ間違えてしまいます。配られたカードの最大の問題はきょうだい児であることではなく親子関係である、と認識しましょう。これが第一のメッセージです。
なお、質問者さんは「愛着障害」と呼ばれる状態の一種と考えられますので、Amazonなどで「愛着障害」をキーワードにたどってみると、ご自身に近い境遇の人々のエピソード(とそれを克服した人々のエピソード)を読むことができます。一例はこちらです。
『愛着障害の克服:愛着アプローチで人は変われる』
https://amzn.to/3EYrmAx
2つ目のメッセージは、「家族を作る前に、ステップを踏んで人間関係を築いていきましょう」ということです。幸せな家族に憧れるお気持ちは至極当然ではありますが、実は家庭の構築と運営というのはハードルが高いものですので、最初からここを目指そうとすると挫折感しか生まないかもしれません。以前にTLでご紹介した『THE GOOD LIFE:幸せになるのに遅すぎることはない』という本には、幸福な人生のためには人間関係が不可欠だとして、その中でも特に親子関係、夫婦関係、友人関係が重要だと説かれています。
https://twitter.com/paddy_joy/status/1690752851050631169
「親子関係や夫婦関係が重要だ」の部分は読んでいてお辛い部分もあろうかと思いますが、しかし親子や夫婦でなくとも、友人関係が豊かなだけでも十分に人生は救済されるというエピソードも出てきます。夫婦関係が何十年も破綻したままで、自殺まで考えた人が、老後に友人関係を作ったら幸せになれたという実例が出てきたりします。質問者さんは「数少ない友人が結婚していって辛い」と書かれていらっしゃいますが、今からでも遅くないので、それらの他にも友人関係の構築をまずは目指すと良いと思います。親子関係や夫婦関係の完全な代替にはならずとも、誰かと触れ合えているというその感覚は成功体験になり自信につながりますから、恋愛関係や夫婦関係の手前のステップとして重要です。この自信なくして家庭の構築にたどり着くことは困難とも言えましょう。いわば、疑似的かつ分散的な心の基地を作るのです。
友人がいるという事実は、外部から見ても「この人は安心できる」というシグナルにもなり、恋愛や結婚のハードルを下げます。友人関係のコミュニティを通して知り合う異性も出てくることでしょう。質問者さんの人格を受け入れた後であれば、親御さんとの関係やごきょうだいのことも理解してもらえる可能性も高まります。もちろんこんなに都合よくいくとは限りませんが、まずは友人のコミュニティを作るというのは今のような鬱々とした感情から抜け出すために非常に有効で、いきなり恋人や家族を作るよりは実現性が高いものです。まずは話し相手の友人を作ることを目指してはいかがでしょうか。もちろん、友人を作ることも簡単だとは言いませんので、同時にカウンセリングなどに通うことでご自身のことについて吐露する場を設けるなどして、更に手前のステップを踏むことも良い案だと思います。
少しでも質問者さんの未来に希望の光が灯ることを願うばかりです。