いつも拝見しております。米系IBDアソです。最近PEファンド中心に転職活動をしていたのですが、米系トップティアから内定を得ました。が、入社すべきか迷ってます。理由は以下のとおりです。
・所属ハウスで自分がトップクラスに優秀だとは感じておらず、かつモチベーションもそこまで高くない(仕事に一点集中という感じではない)
・日系ミッドくらいで良いと思って転職活動しており、記念で米系も受けてみた
身の丈に合わない(かもしれない)企業に入社しても良いものでしょうか。中田さんの周りでそのような企業に入った方がいれば、その方が幸福でいらっしゃるかご教示いただけますと幸いです。何卒よろしくお願いいたします。

中田:‖さん
いやトップティアの会社に行く機会があるなら一回行っときましょ。たとえ力及ばなかったとしても、そこで見た景色と、そこに所属していたという経歴は必ず後で身を助けます。
まず、業界トップと2位以下では見えている景色が全く異なります。私は某プロダクトでずっとリーグテーブル1位のチームに異動した時に痛感しました。1位は「ルールを作る側」で、2位以下はそのルールに従う側なのです。与党と野党みたいな差があります。1位の政党はルールを作れて、2位以下の政党は1位の作ったルールに従わざるを得ない。金融の世界でも法規制や各種の細かいルールは年々変わっていくわけですけれど、金融庁はじめ政策決定機関は実務を把握していないため、指令や法令を策定するにあたって金融機関にヒアリングするわけですが、誰に聞くかって業界1位の機関/チームに聞くんですよ。もちろん2位以下にも聞くのですがその機会の頻度が全く異なります。受け身でヒアリングを受けるのみならず、1位の会社は積極的に政府側に政策提言をしたりしています。最終的に法規制自体を決められるわけではないにせよ、かなり強くロビー活動ができる立場にあります。そしてこの立場と活動が自らの地位をさらに強固にします。将来どう政策が動くのか事前に知れる/動かせるのですから。
顧客対応にも大きな差があり、二流の機関やチームだと顧客の意向に従って執行することを是としますが(ちなみに三流は顧客意向を聞きもしない)、1位のチームは顧客をリードします。「あなた方はこう仰るが、正しいのはこっちだ」と。いわゆる「顧客が本当に求めていたもの」に誘導できるのです。顧客の内部で意思統一ができておらず部署間で言っていることが異なる場合も非常によくありますが、そういう場合でも2位以下のチームはひたすらたらい回しに遭って混乱するだけですが1位のチームは顧客の社内政治に介入して社内の意思統一までもリードします。政府対応のようなロビー活動を顧客で行うわけですね。正しい道に来いと。
これは自信の表れでもあり傲慢と紙一重でもあって、悪意の人はこの立場を悪用して自らの利益のために顧客意向を捻じ曲げたりします(これは残念ながら2位以下の金融機関でも起こるのですが)。悪意か善意かという点を傍に置けば、顧客よりも自分の方がこのプロダクトには詳しいのだから自分こそ案件をリードしなければならないというマインドセットは1位の機関/チームには常識的に見られます。そして残念ながら2以下のチームではこういうマインドセットがなかなか育ちません。上司や先輩も1位になったことがないのでどうリードしたら良いか分からず、チーム全体が受け身になりがちなのです。1位のチームがどんなマインドセットで働いているのか、どんな働き方をしちているのかを知れるだけでも貴重な機会です。ラムズフェルドに聞くまでもなく「一流のチームと一緒の場にいられるならお茶汲みでも学ぶことは多い」のです。
さてもう一つは下世話な話として、経歴上「元トップティア」という肩書きは永遠に消えないので、その後もずっと使えます。このXでも「元ゴールドマン」で売り込んでいる人がたくさんいるでしょう。中には在籍期間がかなり短い人も紛れているのですが、それでもやっぱり元GSの肩書きは効力があるから使っているのです。新卒GSで2年で辞めて15年ドイチェにいる、という人も顧客には「元GS」で売り込んだりしています。そんなものです。ウソじゃないですからね。なので仮にトップティアで通用しなくてすぐ辞めても「元トップティア」の経歴のおかげで転職は容易ですし転職先での活動もやりやすくなるのです。
というわけで、自信がなくても飛び込んでみましょう。案外、誠実に仕事をしていたら通用するかもしれませんよ。その際、「まだ未熟者ですがよろしくお願いします」のような謙遜(言い訳)の言葉を使うことは社内外どちらでも封じることをお勧めします。それはプロとしてのトップティアのマインドセットではなく、謙遜というより最初から逃げの姿勢を構えているようにしか受け取られないからです。仮に本音がゆるゆるマインドでも外向けにはプロとして振る舞うのです。採用されたからには貢献できることがあるはずだ、という気持ちで臨みましょう。ご武運を!