こんにちは!
中田さんの質問箱のファンです。(以前落ち込んだ時に質問してとても救われましたその節はありがとうございました)
長い不妊治療を経てこの度第一子が誕生しました。
子どもが万が一路頭に迷っても残せるからと、マイホームを計画しています。
夫は開業医(42)で、税引前年収が2000万円ほどあります。(事業の設備投資などもここから捻出します)
私は34歳で、現在専従者として月15万円受け取る形になっています。
ハウスメーカーを色々見る中で積水ハウスに惹かれており、土地代を合わせると8000〜9000万円になりそうで、月23万円ほどのフルローンを組もうかと話しています。
だだ、マイホーム検討をきっかけに夫婦でお金の棚卸しを始めて、この金額の家を買うことが分相応なのか、老後のお金や教育資金は大丈夫なのかと不安に思っております。
そこで2点質問させていただきたいです。
①我々が検討している家は高すぎると思われますか?
②これから毎月、老後資金をidecoで夫婦で10万円・教育資金をs&p500で1.5万円積み立てようと話しているのですが、どう思われますか?
中田さまのお考えをご教授いただけると幸いです。

中田:‖さん
お子様の誕生おめでとうございます!!長い不妊治療、大変お疲れ様でした。そしていつも駄文をお読みいただいているようでお恥ずかしい限りです。
さて、開業医と専従者のご夫婦とのこと、私が知り得ない諸条件が多いのであまりお役に立てないと思いますが(年収2,000万円といっても勤め人のそれと開業医では全くその扱いが異なるので)個人的な所感としましては以下の通りです。
1) 銀行に住宅ローンをどれくらい借りられるのかを相談しましょう。専従者給与をコストとみなすか給与とみなすか、設備投資の回収(あるいは減価償却による見た目の収入源)をどう考えるか等、銀行によってその取扱いが大きく異なります。一般にお医者様は住宅ローンでは非常に有利なのですが(明示的に医師のみ特別金利が用意されている場合もあります)その優遇内容も銀行によって異なります。
そして、基本的な考え方は「銀行が貸してくれる限界まで借りる」です。開業医であればなおのこと、自宅の借入も実質的には事業の借入の一部のようなものであり、重要な資金調達手段です。開業費用の借入れよりも住宅ローンの方が通りやすかったりしますので、住宅ローンは経営戦略の一部と捉えましょう。そして事業資金の一部とみなしたとき、「借りられるだけ借りておく」は重要なスタンスです。借り入れた資金を住宅に使う場合は必ずしもその住宅自体は直接的な価値を生みませんが、それでもたとえば広めの土地を買えるならば将来また借り入れたいときに土地を担保にして第二抵当でまた借り入れができたりするものです。借りられるものは借りて、そのお金で家を買いましょう。よく「借りられる金額と返せる金額は違う」という言い方がされますが、銀行は(特に大手銀行は)返せると思う人にしか貸さないので基本的に融資が降りるなら返せる金額とみなして構いません。医師の住宅ローン金利が低いのも、医師はクビになることがなく基本的には必ず原資があるからです。
2) 戸建ては往々にして予算オーバーになりますから、現時点で9,000万円を見込んでいるのであれば最終的には1億になることを想定しておきましょう。建材費などが高騰しているという意味でも十分にあり得るシナリオです。その上で、もちろん立地やスペックにもよりますが、積水ハウスで土地付き1億(おそらく上物4,000万円、土地代6,000万円くらい?)であればさほど高いとは思いません。
3) iDeCoよりはまずはNISAをお勧めします。というのも、経営が安定的とは言えない時点においては手元資金がかなり重要になってきまして、だからこそ上記のように「借りられるものは借りておくべき」なのですが、iDeCoの場合はいざ何かあって手元資金が必要になっても当面引き出すことができません。流動性という意味では非常に不利であり、税制という大きなメリットを相殺していると言ってもいいくらいです。私のようなサラリーマンはiDeCoに突っ込める金額が小さいので引き出せなくても大差ないのですが、毎月10万円となるとそこそこ大きな金額になりますから、引き出せなくて困るタイミングがどこかで来るかもしれません。自由に引き出せるNISAで積み立てると良いと思います。
4) せっかくなので質問者さんご自身が積極的に稼ぎに行く姿勢があってよいと思います。会社に勤めろとかパートで働けとかいう意味ではなく(それだと専従者給与のメリットが減る上に家事育児が大変になりますしね)、旦那さんが医師であることを活かして他の収入源を作れるようプロデュースするなどの企画を考えてみてはいかがでしょうか。たとえばママ向けの育児アドバイス系ブログやSNSは無数にありますが、(1)内容が怪しいか(2)正しい記載だがママに届かないものがほとんどです。であるならば、旦那さんの監修を経た上でママに刺さるような表現のブログを展開できるだけで差別化になります。あるいは旦那さんが喋るのが得意であれば講演会やセミナーで稼ぐ方法もありますし、質問者さんが動画編集が得意ならYoutubeで稼ぐ方法もあるでしょう。お二方の得意なこと、あるいはやってみたい方法で稼ぐことは十分に可能です。
別に人気Youtuberやブロガーみたいなとんでもないアクセス数を稼ぐ必要なんて全くなくて、それこそ月々10万円くらいのキャッシュインであれば家事育児をしながらでも実現可能です。お二方の得意な分野を見つけたら本業に迫る副収入になると思います。
5) 複数の税理士や経営コンサルタントなどに助言を求めてみると良いと思います。これは私自身が税金で何度も痛い思いをしていることに加えて、世にあるたくさんの補助金や借入制度を知らなかったことによる機会損失を被っているからであり、こういうことを教えてくれるプロがいるだけで経営方針が大きく異なってきます。お医者様は金銭・経営リテラシーが乏しいことにつけこんでろくでもない投資商品を売り込んでくる業者やコンサルが後を絶たないのでそこは気を付けなければなりませんが、かといってすでに開業されている以上はそういった悪徳業者のリスクから逃れられませんから、常にセカンドオピニオンを探しつつ、かつ自分でも勉強しながら最適な経営を模索していくべきです。上記で「住宅ローンは限界まで借りろ」と申しましたが、事業性資金の調達のために住宅ローンが重石になることもあり、借りる順番や借りる銀行の戦略が必要になってくることもあります。このあたりがサラリーマンとは住宅ローンの考え方が大きく異なってくる点ですので、プロの助言を得ましょう。
医師としての資質と経営者としての資質は全く異なるので、質問者さんは医師としての補助は難しくても経営の補佐はできると思いますし、それでこそ専従者給与を堂々と主張できるというものです。場合によっては質問者さんが経営を切り盛りして、旦那さんは医師業に専念するという分業もあり得ると思います。S&P500も良いのですが非常に保守的かつ受け身の投資なので、どうせもう開業されているのであればもっと稼ぎに行く方向で投資されてもよいのではと思いました。
家事育児と戸建て設計に邁進されていたら今はそんな余裕はないかもしれませんが、頭の片隅に置いておくだけでもどこかでアイディアが浮かんだりしますから、ご自愛専一にされつつもご夫婦で経営を楽しんでいただければと思います。