中田さん、いつも楽しくツイートを拝見しております。
当方、30代前半夫婦の夫です。
先般第一子出産祝いとして、トータルで200万円ほどの現金をいただきました。
こちら、子供の為にはどのような処理(運用)がおすすめでしょうか?
特に目先の現金に困っているような状況ではありませんので、自分が親にしてもらったように、結婚や住宅購入などの適切な節目に還元?できればと考えております。
辛うじてイデコとニーサをやっている程度の金融リテラシーの割に、なにか一つのソースを頼りにするほどの度胸がなく、ご助言いただけますと幸いです。
追伸
中田さんの聡明かつ物腰の柔らかいご回答にいつも感動しています。
いつか直接お話しできたら嬉しく思いますので、そのような機会のご提供について少しでもご検討いただけたら嬉しく思います。

中田:‖さん
お子様のご誕生おめでとうございます!既にiDeCoとNISAをされているとのこと、次の段階はジュニアNISAやつみたてNISA、ならびにインデックス投資、もしくは学資保険といったところが一般的な線かとは思います。
個人的にご提案してみたいのは実物資産に換えてみることです。たとえば金貨とか時計とか。というのも、実物の方がそこに「物語」が生まれやすいので、お子様が生まれたという「物語の節目」に相応しいと思うからです。お子様に引き継ぐ時にも、口座を移すのは事務的な書類の手続きになりますが、実物を手渡す行為はもっと儀式的になりますし、そして視覚的、触覚的にも「親から何かを受け継いだ」という感覚を持ってもらいやすいでしょう。その200万円を投じた時の思い出話を添えられることが実物資産の魅力です。
特にゴールドについてはその資産性はどんな法定通貨よりも信頼感があるということを歴史が示しています。これまでゴールドの交換価値が認められなかった時代や文明は存在しません。法定通貨との交換レートは変動するでしょうが、お子様に「なくならない価値を残したかった」という意味を込めておけばお子様にも(誰よりご自身にとって)納得しやすいのではないでしょうか。
ちなみに私は子供が生まれた時に知人から1gの金貨をお祝いに貰いました。当時の金価格はグラムあたり4,000円程度だったのが、今や9,000円を超えていますから、このまま換金せずに持っておこうと思います。
金貨にも様々な種類があり、たとえばご夫婦が音楽好きでしたら楽器が描かれたウィーン金貨というものがありますし、先日の我が家のようにオーストラリアに行った思い出があればカンガルー金貨を買ってみるみたいな「物語」もアリでしょう。田中貴金属や三菱マテリアルなどが様々な金貨を販売していますから覗いてみてはいかがでしょうか。
なお、政府が品位を保証するものでない場合は企画モノの金貨は不当に高額に売られている場合があるのでご注意ください。ウィーン金貨やカンガルー金貨などはゴールドバー(金の延べ棒)とほぼ同じ価格ですが、たとえばディズニーのキャラクターが掘られた金貨はゴールド価格の3倍くらいしたりします。もちろんその差分の2倍分にディズニーの金貨を買う物語性を見出すことは十分にあり得ると思うのですが(その金貨に人気が出たら市場価格は3倍になっているカモ)、金そのものの価格との乖離は一応調べた方が良いと思います。余談ながら私は「日英交流開始400年記念金貨」という、徳川家康が描かれた変わり種の金貨を持っています。子供用ではないのですが、2013年にイギリスがこの金貨を発行した際にロンドンに旅行に行っており、思い出として買ってみたくなったという経緯です。
時計にしても、その辺の時計では資産性はありませんが、スイスの高級時計であれば価値が保全されやすいのはご存じのとおりです。パテック・フィリップなどは親から子へ受け継がれることを前提としたサービスになっているようですし。ただ200万円ではちょっと足りないかもしれませんね。
学資保険がよく売れるのも、親がそこに「物語」を見出してしまうからだと思っています。資産運用というと、「勝った」か「負けた」か(つまり自分の判断が正しかったのか間違っていたのか)が明確に分かってしまうので勇気のない人は尻込みしてしまいがちですが、「万が一の時の子供ため」という言い訳が用意されている学資保険はそういうハードルを越える力があるのでしょう。
個人的には円建ての学資保険はあまりお勧めしません。18年後の返礼率がわずか3~5%だったりするので、1年換算の利率は国債みたいなものになってしまい(国債で運用しているので仕方ないところはありつつ)それだったら国債を直接買ったらええやんけという話になりかねません。どうせ保険を買うなら、「親に万が一の時があった時の子供ため」という機能は残したまま、受取人を子供にしてドル建ての終身保険を買う方が良いと思っています。実質的に学資保険として機能します。私は親類から出産祝いで貰った100万円をこの形で買っており、もともと運用利率が良いことに加えて円安とも相まって、悪くない投資になっています。
金融リテラシーとは少し離れた話になってしまいましたが、そのへんのFPの本には書いてなさそうな視点でご提案してみました。
いつも駄文をお読み頂いていて恐縮です。身バレが怖いので基本的にオフ会には行っていませんが、丸の内周辺にいらっしゃれば(特に丸善とか)すれ違っているかもしれません・・・