全くお会いしたことはありませんが、Akiさんのファンの一人です。
いつもタメになる投稿ありがとうございます!
でも本はまだ購入しておりません。すみません。
私はとあるSaaSベンダーで働いているプロダクトオーナーで、今までは同社で営業を20年近くやってきて、自身で企画したプロダクトを4年勤め、今年から会社のメインプロダクトのプロダクトオーナーになりました。
完全なる非エンジニアです。(が、社歴が長くSIの営業もしてきたので話は分かる)
メインプロダクトは1000社以上の顧客があり、数十億の売り上げがあるベテランプロダクトで、主にはマーケティング業務の様々な用途で使われる、いわゆる多機能なホリゾンタルSaaSです。
ただ、ここ10年程劇的な成長はできておらず、マーケや営業の底力で毎年数%の成長をしている状態で、いわゆる停滞期になります。
私のミッションは、ここからこのプロダクトを磨き直して今の倍以上の売り上げが作れる状態に持っていくことで、コーフンの最中にいるのですが、今年1年でぶつかっている壁があり、もしAkiさんにも同様の経験があるようでしたら、その時はどのような方法を取られたのかを教えていただきたいと考えております。
その壁は、プロダクトが巨大かつスパゲッティすぎて、何か機能を追加するにも開発の見積が年単位になってしまうということです。
大きな機能になると、「作り直した方が安全だ、そのためには3年~5年かかる」というような返答が返ってきてしまい、目先で簡単にできる機能改善(これでも半年単位)ばかりに終始し、本質的な対処はできずに1年を過ごしてしまいました。
この開発側の意見の裏には、「既存機能にどう影響するか分からない中で機能を作り、障害を起こして責められたくない」「PMと開発との関係がうまくいっていないので反発を受けたくない」という意図が関係者各位から透けて見えており、技術力がボトルネックというわけではないと感じています。
また、今までの経緯からプロダクトとしての北極星は抽象的過ぎてカスケードダウンされておらず、逆に大きく変化をしない言い訳にも使われているように感じています。
こういう状況ではありますが、市場のポテンシャルとしては目標値である現状の倍は達成できると感じており、本来提供すべき価値を磨くことで再度プロダクトの存在価値を上昇させたいと思っています。
全く同じ状況ということはないと思いますが、過去プロダクトオーナーをされていた際のご経験を伺えますと幸いです!

Akiさん
書いていただいている課題は、一見「技術的に巨大でスパゲッティだから動けない」ように見えますが、実際には技術そのものよりも、組織と意思決定の問題であるケースがほとんどです。
・「影響範囲が読めない中で作って、障害を起こして責められたくない」
・「これ以上触らず、現状を維持した方が安全」
・「抽象的なビジョンを盾に、大きな判断を先送りする」
これらは、技術力不足ではなく失敗が許されない構造によるものだと思います。
私が似た状況で最初にやったことは、「どう作るか」を議論する前に、「何をやらないか」「どこは触らないか」を先に決めること でした。全部をきれいにしようとすると必ず止まりますし、開発側も防御的になります。
もう一つ意識していたのは、説得しにいかないことです。代わりに、「このプロダクトは、何を守る代わりに何を捨てるのか」という判断基準を明文化し、それをもとに No を積み重ねていきました。ビジョンを磨くよりも、「捨てる判断」を増やすほうが、結果的に前に進みます。
このテーマはかなり長くなってしまうので、同じ構造や考え方については拙著の中で体系的に書いていますのでぜひ読んでください。
特に、
・巨大化したプロダクトで(ステークホルダーも多い中で) No をどう使うか
・抽象的なビジョンが機能しなくなる理由
・「技術的負債」より厄介な心理的影響の話
あたりは、まさに今の状況と重なるはずです。
今感じていらっしゃる違和感はかなり健全ですが、真正面から「変えよう」とすると詰むのも事実なので、まずは変えない領域を決めるところから始めるのが現実的だと思います。