最近転職活動を開始しました。年度末ということもあり、来期に向けて配員や組織・部門の目標設定の会話を多く耳にするようになりました。3月上旬までには内定を獲得して、退職の意向を伝えようと考えていますが、自分ありきで組織の話が進む現状に申し訳なく・心苦しく思っています。
自分ごときが居なくなったところで組織は回ることは重々承知しているつもりですが、配員・目標が大筋決まってしまってから退職の意向を伝えてしまうことによるハレーションが心配です。
中田さんならこの状況をどう打開しますか?
自分は下記3方法で迷ってますが、別案もあればご教示いただけると幸いです。
①とにかく早く一社内定を獲得し、退職日を上司と確定させる。残りの選考があれば受け終わってから行き先を決める
②すべて結果が出揃い、行き先を決めてから退職日を上司と相談する
③内定が出てない現時点で退職の意向、退職日は追って決めたいと上司に伝える。(←退職日が早まり、それまでに内定が出ない可能性が心配)
お手数ですが、ご回答いただけますと幸いです
中田:‖さん
②、一択です。それ以外ありません。会社や部門や個々の人生に責任を負っているのは誰なのかという視点で考えましょう。①や③を選んで質問者さんにとってベストな人生の選択にならなかったとしても、会社も上司も一切の責任を取りませんし、その責任もありません。しかし質問者さんはご自身の人生に責任を持っていますから、会社や上司を一時的に気を遣うことでベストにならなかった選択によってもたらされる今後何年、何十年に及ぶ影響についてはご自身で責任を取ることになります。
翻って会社の帰趨について責任を持っているのは経営陣(ないし株主)であり、部の目標に責任を持っているのは部長であり、部下が辞めてしまうことで起こる影響についても責任を取るのは彼らです。部下を辞めさせないために対策を講じる権限は彼らにありますし、あるいは最善を尽くしてもなお一定数の社員は辞めることを前提とした組織運営を行う責任も彼らにあります。「上司や会社や同僚に迷惑をかけてしまって申し訳ない」と思うのは人として当然の感情で、非常に真っ当だと思いますが(私も辞める時にはそう思いましたが)同時に「申し訳ないけどそういうものだよね」という割り切りも必要です。会社や上司だって「従業員に働かせてしまって申し訳ない」と思っているはずですけど、「申し訳ないけどそういうものよね」と思って働かせているわけです。もしかすると会社は「従業員は給料をもらってるんだから責任持って働いて当然」と思っているかもしれませんが、それならば同じロジックで従業員から見ると「辞めた後は働かないのだから給料も責任もなくて当然」と言えましょう。辞意を伝えると「辞めた後のことも責任を取れ」と言うアホな上司がたまにいますが、それなら辞めた後も給料をもらい続けねばなりません。
私の場合、自分自身が納得するために、即ち「会社や上司に申し訳ない」と思わずに済むように、転職して実現したいことを自分の会社で積極的に提案するようにしています。例えばGoogleに転職してやりたいことがある場合、Googleであれば実現できそうなことを自社で提案してみるのです。人事制度をGoogleみたいにしようとか、設備投資をGoogle並みに増やそうとかいろいろ。あるいは自社(や自分が属ずる部門)をGoogleに売却しようという提案も可能でしょう。あらゆる手で「転職しなくてもGoogleに転職した時と同じことを実現できる」ための方法を提案してみるのです。高い確率で会社側は拒否するでしょう。ことごとく提案が却下されたそのタイミングで「仕方がありません、では私はGoogleに転職します」と伝えるのです。慰留のためのロジックは会社自身が否定してしまっていますから(「うちではGoogleみたいなことはできない」「不満があるならGoogleに行け」などと散々言い尽くした後でしょうから)スムーズに転職できますし、自分としても「やれることはやった、それでも無理ならここに自分の居場所はない」と納得できるのです。
Googleはやや極端な例え話ですが、この方法が効く場合もありまして、例えば「ベンチャー企業で〇〇をやってみたいから辞めたい」と言う社員に対して「じゃぁ君に新しいプロジェクトリーダーを任せよう。ベンチャーと違って失敗しても職が確保されてるぞ。うちのカンバンも潤沢なキャッシュも使えるからベンチャーより営業しやすいぞ。どや?」くらいの提案をしてくれる会社は珍しくありません。転職してやりたいことをまずは自社でできないか模索するのは双方の納得のために有効な手段です。もちろん、交渉が決裂した時のために、この交渉はあくまで転職したい企業の採用通知にサインしてからにしてください。
私自身、経営職に近づいてきて思うのは、権限と裁量が増えるほど辞めにくくなるということです。「会社に不満があるなら自分の権限で会社を改善しろよ」と言われてしまう立場だからです。逆に言えば「会社に不満があるから辞めます」と気軽に言えるのは従業員側の特権とも言えます。「辞めると会社と上司に申し訳ないなぁ(でもまぁそんなもんだよね、てへぺろ)」と思える程度のうちにその特権を存分に駆使してキャリア形成をすることをお勧めします。