都心のタワマン高騰に乗り遅れてしまったのでいっそのこと都内私鉄沿線郊外に戸建注文住宅を建てようと計画を進めています。安くあげるために少し土地に瑕疵があり、住宅ローンのオプションが次の2つしかないのですが、中田さんならどちらを選びますか?ご意見をお聞かせいただけると嬉しいです。
物件価格: 13,000万円
銀行A (フラット35)
借入総額: 13,000万円
借入期間: 35年
固定金利
貸出金利: 当初5年 1.15%、6年目以降 2.15% (団信込み)
銀行B(都市銀)
借入総額: 10,580万円
借入期間: 35~40年
変動金利
貸出金利: 0.83%(連生団信)
私たちの情報
年齢: 35歳
現在の世帯年収(税引前): 2500万円
子供一人
金融資産: おおよそ9千万円
今のマンションを売った場合の予想される手残り: 3000~4000万円
戸建注文住宅は住める限り一生住むつもり。もし高齢化して広さや手入れで手に余るようなら貸し出して、手ごろな賃貸マンションかお手頃な中古マンションに住み替えます。
悩んでいることとしては、
・銀行Aを選んだ場合頭金をほとんど出す必要はないが金利が高く月々の支払いも高いので金融資産やいまのマンションを売った手残りから毎月持ち出しをする必要がある。固定金利なので金利リスクは排除できる。
・銀行Bを選んだ場合、日々の生活は黒字を維持できるが2500万円程度の頭金を当初支払う必要がある。今は大きなリスクを感じていないが変動金利なので将来何が起こるか分からない。
AIにいろいろ相談してシミュレーションした結果、金利水準がこのまま一定であれば借り入れ後17年目に銀行Bを選んだケースのほうが金融資産が大きくなります(手持ち資産の平均成長率を6.5%と置いた場合)。一方でその頃には私もすでに50歳すぎになっているため、手元に資金を置いておいた方がオプションが広がり、金利を2%払っても投資がうまく行けば取り返せることもあるかもしれません。
金融のプロとして中田さんはどちらを選ばれますでしょうか?
これは悩ましいですね、迷われるのも納得です。土地の瑕疵がどれだけ住宅ローンの審査を困難にしているのかよくわからないのですが、もっと他に良い住宅ローンがあるのではないか、と初期的には思ってしまいます。もっと言うと、世帯年収2,500万円、現居売却後の手元流動性が1億円を超える状態で「都心タワマンが買えない」なんてことはさすがにないのですけれども、お金の問題ではなく価値観や居住性(広さや屋外とのアクセス性等)を重視されて郊外戸建てを選択されているものとして回答します。
私がどちらか選べと言われたらBを選びますね。根拠は以下の通りです。
・手元資金は必要ではあるものの、もしもの時も含めて手元に1億円近くあれば教育費や医療費なども含めてほとんどの事態に対処できるので問題ありません。逆に1億で足りない出費は手元資金で何とかするべきではありません。
・2,500万円の手元流動性が消えるのは痛いものの、これはもう定期預金に突っ込んだとみなして、残りの資産をリスク高めの資産に突っ込むことでポートフォリオ全体のバランスを取れます。なお、「手元資金の平均成長率6.5%」というのはちょっと期待値が高いと思いますが、とはいえリスクが高めの資産に突っ込むなら違和感ない数値ではあります。
・変動金利も上がってきましたが、現時点でもなお変動金利の方が有利と見ています。このあたりは以前にもご紹介した『住宅ローンは変動で借りなさい』に詳述されているのでこちらをご参照頂きたいのですが、多くの人が見逃している点をピックアップするなら
- 仮に変動金利が高くなってもそれが永遠に続くわけではなく、また低下する(「バブル時代みたいな金利になったらどうするんだ」に対する回答は「バブル後みたいにまた金利は下がります」でよい)のに対して高い固定金利はずっと続く
- 変動金利が固定金利に追いつくまでには日銀の利上げがまだ何回も(≒年単位で)必要である上に、それまでに固定金利で支払っている余分な利息を超える程度に変動金利が上がるには更に長い年月がかかる(そしてその頃にはまた変動金利が下がっている可能性さえある)
- 変動金利で早めに元本を返済している分、変動金利が上がったときのインパクトは軽減されている
- 万一、とんでもない利上げが行なわれても、手元資金で返済できるなら全く怖くない
などです。
https://twitter.com/paddy_joy/status/1788212778928628185
・借入期間を40年に延ばせるならそれも有利
・一般論として、フラット35の審査は緩く、都市銀行の審査は厳しめです。即ち、どちらも通るのであれば都市銀行の方が有利な条件で借りられているとみなしてかまいません。審査が緩い方はすなわち質問者さんより属性が悪い人によるデフォルトリスクのコストまで支払っていることになるからです。
なお、より俯瞰的なことを申せば、ぶっちゃけ健康で働けている限りにおいてAもBも「余裕で返せる」という点では誤差でしかありません。ご家族が健康でいられることが資産運用上最もクリティカルなポイントなので、そこさえクリアできていれば凡そ御の字です。金利の差を気にするよりも、ご自身とご家族の健康のためにコストをかける方がより確実な資産リスクヘッジであろうとも思います。
以上、金融のプロではなく市井の民による所感でした。