ありがとうございます。
情報が不足していましたが、今の家は自己負担1〜2万で住んでいます。家を買うとこの手当がなくなり、ローンがのしかかります。家賃補助は10年すればなくなりますが、逆に言うと10年はこのまま住み続けることができます。この場合、例えば今新築1億の家を買って、5年後に同じような新築が7000万になったとしたら5年後まで待って買えばよかった…となるのが恐ろしいのです。3000万あればかなり家族にいろんなことをしてやれますから…
もし賃貸で家賃を負担していたら、迷わずノールックでも買ってたと思います。
でもあと10年間は1〜2万のタダみたいな金額で住めると考えたら、なかなか踏み切れないのです。金融界隈だと家賃補助などの福利厚生はもっと手厚いのでしょうが、どうやって決心されてるのでしょうか。
ここ一年位毎日湾岸のマンションを調べて、辛い思いをしています。
中田:‖さん
あるあるですね、私も10年間にわたって賃貸にしてしまった一因は家賃補助(借り上げ住宅制度)でした。割安で住めるんだからこの方がお得に決まってる、という思い込みから来る浅慮でした。家賃補助があっても意思決定の方法論は変わりません。「ちゃんと長期的なキャッシュフローを計算してみて判断しましょう」です。10年程度の家賃補助では結論が大きく変わることはないということも計算すればわかるでしょう。残り50年近くある人生のうちの10年の差だからです。もっと他の要因によって家賃補助以上に大きくキャッシュが左右されるとわかります。
このキャッシュフローは現時点から最低でも80歳ごろまでエクセルで1年毎にキャッシュインとキャッシュアウトを想定して書き出して比較することが重要です。なぜならば「家族が何歳の時にいくらくらいのお金が要る/これくらいのお金を出してあげたい」ということを具体的に(印象論ではなく)計算する必要があるからです。「3,000万円あれば家族にいろんなことをしてやる」じゃないんですよ。「何歳の時に何をいくらでしてあげたいか」具体的に書かなければなりません。でなければ「3,000万円で家族にいろいろしてやれる」はただの妄想でしかないからです。
具体的に見てみましょう。その「3,000万円でいろいろしてやれる」シナリオはどのような状態で実現しますでしょうか?「5年後に7,000万円で家を買えた時」でしょうか。これ、ちゃんとキャッシュフローを見ると「5年後に3,000万円を使えるなら1億円でいま買っても5年後に使える」ことがわかるんですよ。5年後に手元に3,000万円のキャッシュがないと「家族のために3,000万円使える」ことになりませんからその前提で話しますが(ローンを返し終わった35年後に3,000万円の差が生まれる、とかでは遅すぎます。だからこそ家族の年齢と一緒にキャッシュを見る必要があるのです)、5年後までに3,000万円のキャッシュを用意できるなら、いま1億円のフルローンを組んで返済を重ねても5年後には3,000万円近いキャッシュは手元に残っています。即ち仮に物件が7,000万円に下落していても「家族のために使える3,000万円」はちゃんとあるんですよ。それを使おうとする予定がないなら、「5年後に家が7,000万円に下落したら家族に3,000万円を使おうと思っていた」もウソです。買わない言い訳に使っているにすぎません。
もっと言うと、5年で1億円の物件が7,000万円に毎年7%の勢いで下落し続ける相場において家族のために3,000万円を使えるかというと私は極めて疑問です。質問者さんのことですからきっといろいろ将来への不安要素を並べ立ててその3,000万円は使わないのではないでしょうか。であるならば、「相場が7,000万円に落ちた時に浮いた3,000万円で家族にいろいろできる」はやっぱりウソです。ちなみに私も不動産価格が下落し続けた3.11前後までの相場でマンションを買う勇気はありませんでした。
もし3,000万円を家族のために使えるシナリオがあるとすれば、いま1億円で買った家が5年後に1億3,000万円になって、かつ手元には3,000万円が残っているシナリオではないでしょうか。これが資産効果と呼ばれる現象であり(ちなみに相場が下落している時に財布のひもがキツくなってしまうのは逆資産効果です)質問者さんのみならず世間一般でごく普通に見られる現象です。相場が下落したから財布のひもが緩むなんてことはまずないと思ってよいでしょう。財布のひもが緩むのは相場が上がっていて、かつ手元にキャッシュがある時です。
別のシナリオとして質問者さんが「家族のために3,000万円を使う」ことができるのは、このままずっと賃貸で住み続けることです。このシナリオでもやはり5年後には3,000万円を用意できていますし、そして買った家がないので資産効果も関係ありません。「相場が下落していない」のですから、ちゃんと「1億円で買った家が7,000万円になった」場合と比べて3,000万円分の資産効果があるはずです。であるならば、ご自身のロジックに従ってちゃんとご家族のために3,000万円を使ってあげましょう。そのつもりがないのなら、やはり「相場が下落しなければ3,000万円を家族のために使っていた」はウソです。
繰り返しますが、今後80歳に至るまでのキャッシュフローを具体的に引いて考えましょう。おそらくいずれにせよ質問者さんは家を買わないと思われますが、将来のキャッシュを具体的に計算してもなお買わない決心をした、という記録は、後々の後悔を多少は和らげてくれる、あるいは不毛な言い訳を少しでも封じて前を向いて考える後押しになると思います。