03月06日

質問者さん

いつも先生の投稿で勉強させていただいているものです 重症低体温症に対するECPR適応に関して、通常のCPAとは異なりNo flow/Low flow時間だけでなく、目撃なしの解釈に悩みます。 低体温で脳の酸素消費量が下がるとはいえ、時間の影響は大きいでしょうし、またERCではICEスコアやHOPEスコアも日本の実地医療への適応やHOPEスコアの計算の煩雑さもあり参考にはするものの自身の中ではパッとしない印象です。 現状エビデンスが乏しい部分が多いとは思いますが、先生は適応判断するにあたり参考にしたり、重視しているポイントがあれば教えていただきたく存じます。

10月22日

メカ医

メカ医さん

ご質問いただき誠にありがとうございます。 回答に長らくのお時間を頂戴してしまい大変申し訳ございませんでした。 重症偶発性低体温症のECPR適応における目撃なしの解釈に関して回答させて頂きます。 偶発性低体温症に限らず自分が意思決定者(リーダーや主治医)である時にECPRを行う際の”心停止の目撃の有無”の価値は”時間情報の確度を保証できること”だと思います。 自分が過去に論文のために調査した研究では目撃の無い心停止の予後予測因子は目撃のある院外心停止の予測因子とほぼ同一でした。(年齢、初期波形がショック適応か否か、BystanderCPRの有無、搬送中のROSC等) 目撃の有無の最大の効果は”総心停止時間、No flow timeの時間情報精度を最大にする”ということに他ならず、直接の目撃はなくともSound witnessはかなり精度を上げますし、場合によってはLactateやpHの変化等で代替することである程度の時間情報の代替になることも考えられます。 そういった意味では”体温”という指標も十分に下がるだけの時間倒れていることを目撃されず放置されてしまったことを意味し、重症偶発性低体温症ともなればその時間は一般的な心停止では予後不良とされる時間の範疇に入っていると考えられます。 しかし重症偶発性低体温症の他と異なる点は体温低下による酸素消費及び代謝抑制による虚血性臓器障害抑制がどれだけ時間的なbehindを背負ったとしても差し引きで予後良好に繋がるか、そのバランスは一概に言えるものではない、という点だと考えられます。 そうなってくると従来用いられてきた時間情報のほかに蘇生困難で不可逆な臓器障害のサロゲートマーカーとして何が有用か?となり、その結果でてきたのがカリウム値なのではないかと思います。 (概ね8-12mEq/L以上とすることが多いようですが、低体温でなくてこの値ならまず蘇生は諦めるぐらい高いですよね…) しかし、勿論カリウムも心停止による不可逆な他臓器損傷の代替指標であるため、他にも因子を投入した方がより頑健性が増すだろうとして作られたのがHOPE scoreやICE scoreだと思っています。 他のECPR、院外心停止の予後予測ツールも同様ですが、集められたデータセットでの因子解析を行い、予測生存率算出のための計算式を作成し、外部のデータセットでvalidation(検証)を行うことがセットだと思います。しかしその結果はあくまで情報を収集した”その当時のECPR”の質に依存すると考えれば熱交換器の普及による厳格な温度管理やカニューレや回路の改良、透視やエコーを用いた挿入手技の改良など”今のECPR”にそのままの計算式が当てはまるかは大いに疑問です(本当は検証すべきですし、それも一つの研究テーマになり得ると思います)。 そのため因子とその影響度の大小程度は気にしたとしても複雑な計算は自分は行ってません。影響度が大きい因子がpositiveであれば、安全に導入されたECMOであれば復温の精度、循環の安定性も非ECMOによる治療よりも安定して行えると考えているので比較的積極的にECPRを考える方だと思います。 (書きながら思ったのですがその他のECPRと比較してImpella/IABPを追加せずともECMO単独で管理が可能なことが多い点も導入ハードルを一段下げている気がします。完全私見です) 長くなってしまいましたが纏めると、HOPE scoreやICE scoreの因子を踏まえて、 1.比較的若年 2.女性 3.窒息が疑われない(水没や口を覆うものがない) 4.CPR継続時間(1時間以内、長くとも1時間半程度まで?) 5.カリウムが異常高値でない(5-6mmol/L程度まで?) の因子1つないし複数あれば自分はECPRに踏み切ることが多いと思います。 勿論上記がなくともケースバーケースで導入したり、社会背景から見送ることもあります。 ご質問ありがとうございました!長らくお待たせしてしまい大変申し訳ありませんでしたがまたご質問いただけますと嬉しいです。

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メカ医

メカ医

総合内科専門医|循環器専門医|集中治療科専門医|心エコー図専門医| ECMO,Impella,ECPELLA,POCUS,PCI|メカ(補助循環&エコー)好き医 |循環器集中治療Critical Care Caidiology修行中| 非医局| 博士(医学) | My posts are my own

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メカ医さんが

「いいね」した質問

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04月08日

貴重な質問の場を設けていただきありがとうございます。 emPCI時のIABPとImpellaの使い分けについて、私自身はCSで灌流不全が全面に出ている症例ではSCAI分類を参考にしてはいるもののどのデバイスを使用、組み合わせるかは何となくの肌感で決めてしまっています。先生の選択にあたっての具体的な基準や重視している点があれば教えていただきたいです。 とくに、まだ発症が間もなくCSが全面に出ていない症例においてはImpellaを入れるべきか、IABPで手軽に冠血流サポートに行くべきか非常に迷います。上記場面においても、選択に関してご教示いただけますと幸いです。何卒よろしくお願いいたします。

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03月10日

PCPSのフローが十分出ており、かつLacの上昇等なく臓器虚血がない状態が維持できる時、目標血圧はどのように考えますか? そういう時往々にして平均血圧が60ないとかを理由に利尿や除水が嫌厭されるばかりか人によっては軽くNorで末梢を締めるかとおもいます。 その辺の圧目標をどう考えるかご意見下さい。

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03月02日

いつも勉強になってます。重症心不全症例の栄養療法の考え方について教えてください。カテコラミンを使用してる時は経管栄養が使いづらい気がして、中心静脈栄養を行っていますがかえって前負荷を増やしてしまい、悪さをしている気がします。少ない量から経管栄養を始めた方がよいのでしょうか?

メカ医さんが

最近答えた質問

10月24日

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ご丁寧に、ありがとうございました。理解がとても深まりました!

10月23日

impellaのモニターの解釈について教えて頂きたいです。 位置波形とモーター波形、最大、最小などです。

10月22日

いつも先生の投稿で勉強させていただいているものです 重症低体温症に対するECPR適応に関して、通常のCPAとは異なりNo flow/Low flow時間だけでなく、目撃なしの解釈に悩みます。 低体温で脳の酸素消費量が下がるとはいえ、時間の影響は大きいでしょうし、またERCではICEスコアやHOPEスコアも日本の実地医療への適応やHOPEスコアの計算の煩雑さもあり参考にはするものの自身の中ではパッとしない印象です。 現状エビデンスが乏しい部分が多いとは思いますが、先生は適応判断するにあたり参考にしたり、重視しているポイントがあれば教えていただきたく存じます。