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02月17日

質問者さん

PCPSのフローが十分出ており、かつLacの上昇等なく臓器虚血がない状態が維持できる時、目標血圧はどのように考えますか? そういう時往々にして平均血圧が60ないとかを理由に利尿や除水が嫌厭されるばかりか人によっては軽くNorで末梢を締めるかとおもいます。 その辺の圧目標をどう考えるかご意見下さい。

03月10日

メカ医

メカ医さん

MCS管理中の目標血圧は現在もまだ議論が多い部分だと思います。慣習的にはMAP 65mmHgを維持することが推奨されていますが明確な根拠は示されていないのが現状です。 回答にお時間を頂いてしまい申し訳ございませんでした。実はうまくまとまらない部分があって何度か書き直しているのですが、それでも不可解な点が多々ある&長文で分かりにくいかもしれません…しかし非常に大切なご質問でしたので気長にお付き合いくださると嬉しいです…また、ご質問がありましたら遠慮なく追加質問よりお願いいたします。 ーーーーーーー ECMO中の血圧の管理目標として最近の傾向としては65mmHgよりも若干少ない値(63や60mmHg)でも良いのではないかという報告も散見されています。 では逆に平均血圧が65mmHgを超えさえすれば管理としては良いのでしょうか?また、自然に65mmHgを下回ってしまっている場合に血管収縮薬を用いて65mmHgを上回ればよいのでしょうか? 多分このご質問を頂く時点で、Norを用いてMAPの目標を達成してもNOMIをはじめとする循環不全を経験されており、迷われているのではないかと思います。 ここからは完全に私見ですが、血圧は”管理の目標”とするのではなく、「”管理の結果”として出る圧」が「目の前の患者の組織灌流を担保できるか」で語られるべきと考えています。 この「圧が目の前の患者の組織灌流を担保できるか」という「圧を使う」点はmicro circulation (本によってはperfusion)について、「”管理の結果”として出る圧」という「圧を作る」点はmacro circulation (本によってはOxygen delivery)について、と分けて考える必要があります。(本当はポンプは動脈圧を形成する時点で静脈圧を下げているので圧ではなく圧較差とするべきですがここでは省略しています) まずはmicro circulation=圧を使う方を考えてみたいと思います。 そもそも血圧が何故必要なのかといえば、末梢組織を灌流する際にはその組織の流入血管の括約筋関門が形成する抵抗によって圧損失をするため、組織の前後の圧較差(ΔP)>0が保たれれば組織灌流は自然と成立します。(vascular waterfall理論) それぞれの臓器毎に必要なΔPは異なっており脳が一番低いΔP(MAP 50mmHg前後)でも灌流が成立し、腸管や皮膚が比較的必要なΔPは高い(=灌流が低下しやすい=血管抵抗を高くできる→体全体としては圧が増加→その分脳を含めた重要臓器を灌流しやすくする代償機構)とされています。 勿論腸管や皮膚が代償性にΔP<0となって還流されない状態は病態発生時の緊急避難的な代償であるため、治療の段階では腸管灌流、皮膚灌流も担保する必要があります。(≒検査値だけでなく皮膚が冷たいのも介入しなければならないサイン) 上述の通りΔPは組織への流入血管の括約筋関門が形成する抵抗(R)による圧損失を受けると説明しました。ということは血管拡張薬を使用することでこの括約筋関門を緩めてRを下げられれば必要なΔPは低下することがわかります。 しかし組織のmicro perfusionはそれで良いのですが、血管拡張薬による狭窄が改善しない=基質的狭窄に対しては、血管拡張薬使用有無に関わらずΔPが全てのため、何を考えなければならないかは覚えておかなければなりません。 例えば、 ①頸動脈狭窄→致命的になるため入室時に簡易的に総頸動脈〜分岐部くらいまでは両側みておく。rSO2によるモニタリングは脳卒中イベントモニタリングにも有用かもしれません。 ②腎動脈狭窄→中枢性の狭窄があると腎灌流が極度に低下してしまい乏尿になってしまいます。エコーでスクリーニングできればよいのですが結構technicalなのでeGFRと尿量モニタリング ③デバイス刺入部→大腿動脈に大口径シースが入るため忘れがちですがここも抵抗になります。ただこの③だけは予防的順行送血を行うことで灌流を優先する積極的低血圧を許容することが可能です。 ④冠動脈→これは循環器特有かもしれませんが、この低血圧を許容したECMO優位管理をするために自分は初回PCI時に完全血行再建を行うことがあります。 ーーーーーーーーーーーーー では乳酸値が上昇するような敗血症ショックの病態では血管拡張薬を使用する方が良いでしょうか? 多分結果は芳しくないと思います。ここでもう一つのmacro circulation=圧を作る方に注目します。 炎症性に血管外漏出が亢進することによるStress volume低下が著しくその状態で血管拡張を追加した場合には更にStress volumeが低下し心臓の前負荷が極度に減少することでCOが減少します。左心不全や右心不全を伴う心原性ショックではStress volumeが十分にあっても心原性にCOが低くなっています。すると、体血管抵抗(SVR)の計算式 SVR = MAP-CVP/COを変形してMAP(-CVP) = CO × SVR = ΔP (この状況ではCVPは限りなく0に近くなるため省略)から分かるようにSVRもCOも低下している状況では極度なMAP低下をきたしてしまい、ΔPが形成できずmicro circulationも破綻してしまいます。 ここでご質問の通りECMOのFlowが3-4L/minなど十分であった場合には ΔP = (自己CO + ECMO flow) × SVRとなるため自己COだけでは達成できなかった低自己COの状態でSVRを下げるが、ECMO flowによってΔPが保証される状態を作り出すことが可能になります(逆説的にECMOが十分に回っていないとできませんのでとりあえず入れたECMOの不十分なflowではダメです)。 この状態では仮にSVRを更に下げてΔPがその結果下がったとしても圧損失する血管抵抗が先に十分下がっているため、たとえMAP 60mmHgでもmicro circulationは腸管などの代償なく成立しやすくなります。(勿論ECMO flowが多ければ多いほど自己COがどんなに低くとも、SVRが極端に下がろうともmicro circulationが成立するためむしろ管理しやすくなります。) ここでもしECMOflowが十分なのに自己COが減らず、結果ΔPが高くなり余力がある状態と仮定した場合には、自己COに回るだけのStress volumeが過剰と判断できるためMAP(ΔP)が低くても利尿や除水の適応となります。この時のΔPが少なければ利尿が難しいかもしれないのでCRRTを他のCKD有無などと併せて検討することがあります。 更にはECMOが十分にworkしている状態で鎮静鎮痛やその他非血管拡張薬による血管拡張状態で上記に至っているのにNorを使用してSVRを上げることはΔPは増えると思いますが圧損失も並行して上昇するため組織灌流改善には寄与しない可能性があります。それなのにNorでMAPだけ上がったとしたならば心臓にとって後負荷が増しただけなのでむしろ害になりうる可能性が考えられます。 しかし、ECMO flowを十分に出しているphaseでご質問いただいたNorを流入血管収縮による昇圧薬として使用すれば上記のごとくあまりメリットがないかもしれませんが、例えばECMO離脱に向けてNor少量から使用することで代償破綻しない程度の静脈収縮によりstress volumeを増加させ、心臓がそれをCOに変換できる状況であればECMO flow ↓と併せて自己CO↑のような管理を行うことはよくあります。そのためphaseを意識した昇圧、MCS戦略を共有する必要があると思います。 ーーーーーーーーーーーー まとめ 長くなってしまいましたがまとめると蘇生期においてはECMO flowが十分に出ている際の目標血圧は昇圧剤を使用or使用なしであれば可能な限りECMO flowを出した状態でMAPを確認します。この時の目標値はひとまず65mmHgとしておいて、上記①〜④の抵抗になる所見を疑わず、臓器障害の所見がないのであればもう少し低い目標設定が可能になる可能性があります。一方で血管拡張薬を併用しSVRを十分下げている状態でECMO flowが十分であれば更に低い血圧でも管理可能な可能性があり、その低血圧による心保護も期待できると考えられるため自分は具体的な目標血圧は設けずに可能な限りのECMO flowと血管拡張薬で管理します。(そうはいっても最低限MAP>50-55mmHg以下にはならないようにしますが3L/min以上のECMOで下回ることはほぼありません。逆に高くなりすぎることが多いのでMAP<80mmHgになるような降圧薬スケールを用いることが多いです。) 離脱期にはNorやDOBを用いて自己COを増加させ、EMCO flowを下げる余地を作ってECMO離脱に向かいます。この点ACSによる急性左心不全などではImpellaを使うことでNorやDOBを使わずに心臓の仕事量を増やすことなく(右心不全の場合にDOB、septic (like) syndrome併発のときはNor併用しながらも)、EMCO離脱に向かえるので基本的には自分はbentとしてECMO flowを増やせることと併せて蘇生を要するSCAI C-EではECPELLA管理に持ち込むようにしています。 非常に大切なご質問ありがとうございました。また是非ご質問いただけたら嬉しいです! おまけ: 上記の計算を考えているのでECMO管理中のSVRは{MAP-CVP/ (SGのCO+ECMO flow)}*80で計算しています。PVRはECMO flowは関係ないので通常通り{mPAP-PAWP/SGのCO}で計算しiNOの併用を考えています。

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メカ医

メカ医

総合内科専門医|循環器専門医|集中治療科専門医|心エコー図専門医| ECMO,Impella,ECPELLA,POCUS,PCI|メカ(補助循環&エコー)好き医 |循環器集中治療Critical Care Caidiology修行中| 非医局| 博士(医学) | My posts are my own

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メカ医さんが

「いいね」した質問

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04月08日

貴重な質問の場を設けていただきありがとうございます。 emPCI時のIABPとImpellaの使い分けについて、私自身はCSで灌流不全が全面に出ている症例ではSCAI分類を参考にしてはいるもののどのデバイスを使用、組み合わせるかは何となくの肌感で決めてしまっています。先生の選択にあたっての具体的な基準や重視している点があれば教えていただきたいです。 とくに、まだ発症が間もなくCSが全面に出ていない症例においてはImpellaを入れるべきか、IABPで手軽に冠血流サポートに行くべきか非常に迷います。上記場面においても、選択に関してご教示いただけますと幸いです。何卒よろしくお願いいたします。

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03月10日

PCPSのフローが十分出ており、かつLacの上昇等なく臓器虚血がない状態が維持できる時、目標血圧はどのように考えますか? そういう時往々にして平均血圧が60ないとかを理由に利尿や除水が嫌厭されるばかりか人によっては軽くNorで末梢を締めるかとおもいます。 その辺の圧目標をどう考えるかご意見下さい。

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03月02日

いつも勉強になってます。重症心不全症例の栄養療法の考え方について教えてください。カテコラミンを使用してる時は経管栄養が使いづらい気がして、中心静脈栄養を行っていますがかえって前負荷を増やしてしまい、悪さをしている気がします。少ない量から経管栄養を始めた方がよいのでしょうか?

メカ医さんが

最近答えた質問

06月22日

いつも勉強させていただいています。ありがとうございます。低心機能の方で、AF頻脈によるLOSが疑わしいとき、IABPは心電図トリガーより圧トリガーが好ましいのでしょうか?また、DCでも洞調律が維持できない場合、アミオダロンも陰性変力作用が懸念されるため、ジゴキシンをメインに使っていくのがベストなのでしょうか?よろしければお考えをお聞かせ願えると嬉しいです。

05月26日

ECMO, impella管理中の方で、エコー指標で見るべきポイントを教えていただけないでしょうか?

05月25日

いつも勉強させていただいております。 駆け出しの集中治療医です。 2点ご質問させていただきたいです。 ①エクペラのECMO,IMPELLAのバランスについて メカ医さんは上記割合をどのように決められているのでしょうか? 過去のツイートを拝見すると、DO2を稼ぎたい時やnorth south syndromeが懸念される場合はECMOメインなのかと解釈しておりましたが他にもこういったシチュエーションではIMPELLAメイン等ありましたらご教授頂きたいです。 ②右室梗塞合併しIMPELLAが回らない場合の対応。以前に右室梗塞合併しIMPELLAがp2でも回らない症例を経験したことがあります。こう言った場合、補液や強心薬等通常の右室梗塞の対応になるのでしょうか? ②についてもエクペラでの設定になります。 よろしくお願い致します。