こちらの質問回答への続きです

02月24日

質問者さん

とてもわかりやすかったです。impellaの設定の減らし方に関してもご教示いただけますと幸いです。

03月25日

メカ医

メカ医さん

追加のご質問ありがとうございます Impellaの設定の減らし方(≒離脱準備)については「開始タイミング」、「管理中のP-level」、「離脱準備」の理解が大切だと思います。 その理解のために2種類のCardiogenic Shockのphenotypeの分類が有用です。 ⓪AMI-CSとHF-CS Impellaのindicationとしての心原性ショックの原因疾患の"可逆性"によると考えられます。大きく分けて時間経過で可逆性の大きいAMIによるものを「AMI-CS」、DCMやICMなどの元々の低左心機能により時間経過で可逆性の小さいものを「HF-CS」に分類することが先日出版されたACCの心原性ショックのガイドラインでも提案されており、Impella管理をする上でも非常に簡便かつ重要な分類だと思います。 ① Weaningの開始タイミング AMI-CSでは感覚的に48時間程度(長くとも72時間程度)経てばculpritとして壊死してしまった部分以外の心停止やショックによる一過性の左室機能低下は回復してくる印象です。勿論DOB等の強心薬を使用すればもっと早く収縮改善が望めることもありますが、障害心筋がある状態でのカテコラミンによる虚血惹起や不整脈惹起の観点からは自分は急性期にMCSを挿入したのであれば自然と回復過程に入るまでは仕事量を減じて休ませる方が望ましいと考えているためカテコラミンは使用しないことが多いです。例外的にECPELLA離脱後で循環血漿量が多く、右心を叩くことで左室に回すために使用する場合(iNOを優先使用しDOB/Milは最小量とします)と鎮痛鎮静や心停止後のDAMPs・炎症によるSeptic like syndromeなどのSVR低下のカウンターとしてNorを使用する場合があります。 大体CK/CK-MBがpeakoutした頃からエコーやSGの指標を基に来院24-48時間程度で自己心機能の回復傾向を認める、もしくは少なくとも増悪が止まって12-24時間経過できているタイミングがAMI-CSのImpella Weaning開始のタイミングという感覚でいます。 一方でHF-CSですと既に左室機能が低下し代償されていることが多いため、左室機能回復のために待つということは少ないです。どちらかと言えば循環血漿量過多が除水(利尿でもCRRTでも)され是正される見込みがたっており、自己心で賄えることが見込まれたタイミングでWeaningを開始していることが多いです。 ②管理中のP-level設定 続いてWeaningを始める前に治療としてどの程度のP-Levelを設定するかを考えます。 AMI-CSの場合には左室及び肺循環もまだ代償できていないことが多く、高流量を出そうとしても前負荷・留置位置両方から回らずサクションとなるリスクが高いと考えられるため、急性期に挿入したCPならP-4でLVEDPを見ながら管理するか、可能ならP-6程度までは上げてその後のLVEDPとサクション、レントゲンでのうっ血・心陰影縮小の程度を見て調整します。というのもP-2からP-6までは2000回転刻みで回転数が増加しますがP-6からP-7に上がる時には3000回転上がるためサクションのリスクが上がる可能性があるため、よほどCS4で肺水腫改善目的などがなければP-6までに留めることが多いです。 一方でHF-CSであれば左室が代償性に拡大していることが多く、循環血漿量も過多なことが多いため肺水腫・胸水貯留が余程悪くNorth-South syndromeの懸念がなければP-9で管理を開始することが多いです。N-S syn.の懸念がある際とECPELLAの全例で挿入時のLV内から血液ガスを採取して、 pO2が保たれている→AUTO or 可能な限り高いP-level作動 pO2が低値→P-2作動にとどめてFIO2を100%、PEEP増加にしてSG挿入などの処置を先に行ってから最後にPA Wedge(PAW)の血液ガスが採取 ↓ PAWのPaO2が高い→P-levelを上げてCCUへ入室します(透視下の方が確実なWedgeが確認しやすいため)。 PAWのPaO2が低い→肺水腫が重篤と考えられる場合、P-2のImpella補助では不十分と考えられる場合にはLV unloadingのみでは肺うっ血改善に時間を要する、更にそのために右心不全の懸念があると判断した時点でECPELLAによる「治療としての前負荷unloading」の追加を検討します。 無気肺や改善が見込める肺病変であればCCU帰室後に呼吸器設定並びにiNO開始をすることで懸念が解除されることが見込まれ、帰室後もPAWのABGでPaO2が増加したことが確認できればPレベルをLVEDPやCPOと勘案して漸増することはあります。 ③離脱準備 これも急性に左室機能が低下したAMI-CSと元々低下しているHF-CSで管理方法が異なります。 AMI-CSでは発症数日では左室機能がまだ代償されておらず例えImpellaのflowが少なくても左室のCOをImpellaが担っている割合が大きい可能性があります。この時期は心原性ショックによる臓器障害の回復のために酸素消費量(VO2)が上がっている時期でもあるためそれら周辺臓器の回復のためにCOが不足しないことを意識(不足してから足すと治療が後退するため不足しない量を見積ります)しますが、逆にVO2が低下することも同じくらい意識します。例えば適切な鎮静鎮痛を得られる薬剤投与を行いますしこれによるSVR低下へのカウンターのNorは許容します。経腸栄養投与も腸管のVO2を増やすため開始時期・量を勘案します。また人工呼吸器も非同調を生じると横隔膜の仕事量が増加しVO2増加に寄与してしまうためA/CかPSVとするか等が挙げられます。 一方でCOは過剰である必要もなく、Impella離脱後の低下した自己左室が必要十分なCOを出せてうっ血せず、それでいて持続可能な状態に見合う循環血漿量を目指して調整することが肝要です。具体的には不要な維持液を避け、静脈栄養よりも濃度の濃い経腸栄養を段階的に増加させたり、利尿薬(時にはCRRTで)積極的な除水を行なっていきます。このフェーズでは時間をかけて代償できるようにする治療とMCS離脱のためにモニタリングをしながら大胆に追加・減量をする治療が混在するためそれぞれに目標を設定した治療=Early Goal Directed therapy(EGDT)の概念が大切です。 結果としてHigh-Risk PCI寄りで使用して左室障害を生じなかったor極小であれば1-2日、PrePCIによるImpellaで左室障害を最小限にできれば3-4日、広範な左室障害があれば7-8日での離脱計画を立ててweaning行いますが、逆に言えば1週間で安全な離脱が見込めなければ7日経過する前でも5.5や場合によってはECPELLA,VADへのupgradeを考える必要があると言えます。 HF-CSは代償は前述の通り既にされているので、今回のCSを生じた代償破綻の原因が解決すればImpellaの離脱は比較的ざっくりとでも大丈夫な印象です。 (原因として例えば不整脈発作、感染症による増悪、利尿薬反応性低下による循環血漿量過多、貧血、甲状腺をはじめとする内分泌異常などが挙げられます。) 多くの場合は蘇生の時に使用した輸液過剰による循環血漿量増加を伴いますので利尿が良好で入院前の体重に向かっていけそうであれば尚安心です。血圧は元々低左心機能であれば低いことが多いですが、分からなくてもsBP 90-100mmHg程度にコントロールした状態でCOが担保されうっ血がなければP-6とかで回っていたとしても P-2にして最小補助量が0.0-0.3L/minであれば離脱OKのサインとして一晩P-2で経過→翌日までの尿量・Lac・Xp増悪が無ければ翌日抜去へ向かいます。 この時のコンセプトとしてはWeaning(漸減)ではなく人工呼吸器離脱のSBTのようにTrialがクリアできれば即離脱(現実には安全策で1晩見ることが多いですが…)ということが検討できるのも代償が既にされているHF-CSの特徴だと思います。(かなり余談ですがそういう意味では人工呼吸器のSBTと比較してSpontaneous circulatory trial:SCTと言えるのかなと書いていて思いました。) 今回もご質問ありがとうございました。また是非ご質問お待ちしております。

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メカ医

メカ医

総合内科専門医|循環器専門医|集中治療科専門医|心エコー図専門医| ECMO,Impella,ECPELLA,POCUS,PCI|メカ(補助循環&エコー)好き医 |循環器集中治療Critical Care Caidiology修行中| 非医局| 博士(医学) | My posts are my own

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03月02日

いつも勉強になってます。重症心不全症例の栄養療法の考え方について教えてください。カテコラミンを使用してる時は経管栄養が使いづらい気がして、中心静脈栄養を行っていますがかえって前負荷を増やしてしまい、悪さをしている気がします。少ない量から経管栄養を始めた方がよいのでしょうか?

メカ医さんが

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