いつも拝見しております。春から企業法務弁護士になる予定の者です。
御三家から東大に進学し、司法試験にも合格して、勉強では何不自由ない人生を歩んできたのですが、どれもテキストベースのインプット/アウトプットだったせいで、口頭で何かを説明することに強い苦手意識があります。
学部在学中にベンチャー企業でインターンをしていたのですが、上司からチャット上で何か質問されたときは論点を整理して明快に説明することができるのに、口頭で質問されると、どこから話していいか分からず、説明の順序や論点がごちゃごちゃになってしまう、といったような感じです。
単純に慣れの問題もあると思うので、ある程度は割り切っているのですが、このままでは弁護士としては致命的ではとも思い、少々焦っています。
中田さんは何か話し方、口頭での説明の仕方に関して、意識していることやおすすめの本等ございますでしょうか。お忙しい中恐縮ですが、ご回答いただけますと幸いです。

中田:‖さん
法曹界の方に聞いた方が良いと思いますが、仕事で企業法務弁護士とお付き合いする身としては、やり取りの9割以上がメールなので喋りのスキルはそんなに要らないのでは?と思います。逆転裁判みたいに鮮やかな口頭弁論で相手を論破!みたいなの企業内法務弁護士にはあまりないのではと思うんですよね。
喋りという意味では、ご自身の思っていらっしゃる以上に慣れの問題が大きいという点はお伝えしたいところです。慣れというより練習と言った方が良いかもしれません。質問者さんが御三家入試と東大入試と司法試験に受かるまでの間に読んできた文字量はとんでもない規模だと思いますが、だからこそ今は文字を読んで書くことの抵抗は極めて小さいのです。読み慣れたジャンルなら、ページを開いた瞬間におよそ何が書いてあるかわかるでしょうし、SNSでまとまったコメントをするのも楽勝でしょう。でもこれは全く一般的ではなく、ほとんどの人は大量の文字を読むこともできなければ、与えられたテーマについてまとまった文章を書くこともできません。その練習が桁違いに(質問者さんとは文字通り2桁から3桁くらい)異なるからです。
でもこれは逆に言えば、質問者さんが文章を読み書きしていた膨大な時間に喋る練習はできていないということでもあります。質問者さんから見て、他の人がほんのわずかな文章の論説を読んで感想を書くことにさえ抵抗を覚えているのを見て「なんでこんなこともできないの?」と思っているのと同じくらい、質問者さんも喋るのが得意な人から見ると「なんでこんなことが」と思われています。会話はダンスに似ているので、実は何を言うかよりもどういうタイミングで言うかとか、どういうトーンで言うかという音楽性の寄与が大きく、ダンスと同様にこれは練習しないと上手くなりません。これは生来の特性の差もありますが、桁違いの練習量の差に起因するところが大きく、逆に言えば質問者さんもこれから桁違いに喋る練習を重ねて追いつけば平均程度には何とかなります。少なくとも専門分野については怖くなくなります。こうして「普段は無口なのに得意分野については早口になるオタク」ができあがるのですが、これをさらに超えるともっと余裕ができて、相手の反応を見ながらダンスができるようになってきます。
口下手同士、一緒に頑張りましょう。