35歳銀行員、転職前も含め金融でリサーチ業務10年しています。自分に論理的思考能力がなく、周囲の頭が良過ぎるのもあって、いつまで経っても仕事でひとり立ちできない状態です。仕事自体は好きなのですが、次第に自分の仕事に自信も持てなくなっており、目立ったりするリサーチの醍醐味を楽しめなくなってきています。この状況を打開する方法はどのようなものがあるでしょうか。私が思いつく選択肢は①論理的な思考を鍛えなおして踏ん張る ②窓際社員としてリサーチを続ける③別業種、非金融でリサーチ業務につく④需要のある別の業務(システム部門など)につく⑤転職して社格を下げて実力に見合った金融リサーチをする。 働き盛りでこんな悩みを持っていて情けない限りです。ご助言ください。

中田:‖さん
うーん確かに35歳という働き盛りではお辛い状況ですね…せっかくお仕事が好きなのであれば何らかの形でそのお仕事ができると良いとは思います。なので仮に④を取るにしても完全に別の業種ではなく何らかの形で接点があるとよいなと。
といいますか、35歳にもなると過去の経歴から完全に独立した仕事に就くこと自体が難しくなってくると思います。社内異動でさえ。「35歳転職限界説」は嘘ですが、「35歳異業種転換限界説」はある程度本当です。同じ職であれば、他社に行ったところで転”職”はしていない、という解釈もできます。なのでいずれにせよ、不得意であったとしても過去のキャリアを何らかの形で活かす方がハードルは低いでしょう。
②は鋼の精神があればアリですが、こんなご質問をしているところからして窓際には耐えられなさそうな雰囲気があります。
③⑤は有力な選択肢ですが、次の場所がフィットするかどうかはガチャ要素が強くなることが留意点です。別業種のリサーチは求められている成果物が全く異なることがあり(だからこそフィットする希望もあるのですが)そこでもまた違和感を覚え続ける可能性もあります。レベルを落とすにしても、落としすぎるとそれはそれでフィットしません。高校の数学はできるけど大学の数学がわからないからという理由で中学校の数学も怪しいコミュニティに逃げると逆に居場所がない、みたいな話です。
①は20代ならアリでしょうが、過去10年頑張ってきて周りに追いつけないのであればそれは不得意分野とみなして他の部分で頑張るか、今のレベルでもフィットする環境を見つけた方が良いように思えます。
重要な観点として、「リサーチ」といっても多種多様でして、そのリサーチに何が求められているのかも千差万別だということです。私は職業がら機関投資家に対してセルサイドリサーチをどう活用しているか尋ねる機会があるのですけれども、論理的思考力を求めているケースはほとんどありません(前提になっているからという見方はできますが)。多くの場合、自分が見逃している視点や情報を得る、あるいは単に接待要員としてみなしています。であるならば、論理的思考力はさておき、記者のように情報収集力に振り切るとか、接待要員として振り切るとか、全く別観点での「リサーチ」の居場所を訴求する方法もあり得るはずです。もちろん、前者はAIに取って代わられやすく、後者はコンプラ的に厳しくなっていく趨勢ではあるのですが、「リサーチに求められていること」を洗い出してみることは有力だと思いますよ。
最後に、「目だったりするリサーチの醍醐味」という一言が気になりました。目立つリサーチは確かにいますが、目立たない(けれども重要な仕事をしている)リサーチだって大勢います。目立たないから見つけにくいだけです。もし質問者さんがそういう目立たないリサーチに魅力を感じないなら、実は真に求めている仕事は「目立てる仕事」であって「リサーチの仕事」ではないのかもしれません。ならば、論理的思考力という観点は捨てて、なんとなく目立てる仕事を探してみるとよいかもしれません。