35歳、子2人、転職経験ありの証券マンです。これまで10年間リサーチ業務を続けてきました。近年は希望外のリサーチ業務を担当しており、転職を考えています。現年収は1100万円、リサーチ業務の性質上、高給は激務になりがちなので年収を下げて、WLBに重点を置いた転職活動を考えています。中田さんは年収を下げる転職は推奨してないと思うのですが、やはり考えを改めるべきでしょうか。なお、現職はやりがいがないだけで待遇面はそこそこ満足してます。また改めて注意点などあれば教えて下さい。
「35歳、子2人、証券、年収1100万円」から年収を下げてよいわけないです目を覚ましてください。リサーチが業務なのに社内のリサーチと観察が足りていないようです。周りの人の年収は忙しさに比例していますか?そんなことは全くありませんよ。「同じ人」が「同じ会社」で「同じ業務」をしているならば激務になることで年収が増えることも期待できるでしょうし、それは同時に年収を犠牲にすることで多少はWLBを確保できる希望があることを意味しますが、これが「別の会社」「別のチーム」「別の業務」であれば相関は極めて弱くなります。同じ会社の中でもチームが異なれば悠々自適の高年収チームと、激務の低年収チームがあったりするのです。異なる会社であればなおさらです。
ご質問からはリサーチ業務を続けたいのかどうかがややわかりにくいのですが、「希望外のリサーチ業務」「やりがいない現職」という言葉からしてリサーチ以外の職種もきっと視野にはあるのでしょう。であればなおのこと、年収を下げずに異動・転職する道を模索すべきですよ。
なお、「異業種なら年収を下げざるを得ない」と思っていらっしゃったらそれは誤解です。採用コストとして相場相応であれば(かつ、他に有力な候補者がいなければ)普通に前職同等かそれ以上の年収が通ります。そして証券会社35歳で年収1100万は決して高い水準ではありません。「リサーチ業務の経験がこの業務にも活きます!」と言えればむしろ昇給での異動・転職もあり得るでしょう。別に年収1億円を要求しているわけではないのですから(それこそ激務のトッププレーヤーは1億を超えていますが)堂々と年収は当然のように同等以上を主張すればよいのです。
ちなみに、いわゆる社格を落としながら昇給と昇格を繰り返していくのが典型的な「年収もWLBも上げる」転職です。GSのアナリスト→BofAのディレクター→日興のED、みたいな経歴の人いるでしょう。日興EDの方がWBLも取れていて、なおかつGSのアナリストよりも年収は良いはずです。
証券会社なのに給料にこだわりがない人が少なからず存在することは私の周りを見ていても観測できるところであり驚いてしまいますが、実質賃金が連続でマイナスになり続ける中、賃金の上昇圧力を従業員側から積極的にかけていかないと株主と経営者が潤うだけです。今日の日経新聞にも出てきたように証券会社の決算は好調ですから(なぜかMUMSSだけ前年比で利益がマイナスに転じていましたが)従業員に払える原資はますます増加しています。翻ってインフレは容赦なく我々の家計を圧迫し続けるのですから、全従業員の基本ムーブが賃上げでなくてはならないのです。
なお、お気づきとは思いますがリサーチ業務の「激務」の辛さは労働時間の長さにあるのではありません。締め切り時刻の厳しさにあります。足元の11月中旬は半期決算発表ラッシュなわけですが、リサーチ業務ですと決算が発表された当日あるいは翌日朝までに第一報を書くことがMUSTですから休むことができませんし、しかもスケジュールの調整も難しい。一方でIBDの方は時間単位でスケジュールが刻まれていることはないので、リサーチと同じ時間だけ働いていたとしてもスケジュールの調整が可能です。ベイクオフや案件があれば激務になりますがそれでもスケジュールは読めます。今日の仕事を昨日のうちにやっておく、あるいは明日に伸ばすということができます。こういう柔軟性があるだけで子育てには極めて有利です。「周りには激務に見えるけれども実は子育ては何とかなる」職種もありますし、会社の福利厚生・就業規則等によっても子育てのしやすさは大きく異なりますから、まずは「社内リサーチ」から始めることをお勧めします。
もう既にお読みだったかもしれませんが、以下2つのnoteは改めてご紹介しておきます。転職の前にまずは社内異動を検討しましょう。
■年収を下げる転職を考えているあなたへ
https://note.com/paddy_joy/n/n97a6761be962
■なぜ外資系と日系で証券会社の労働時間が異なるのか
https://note.com/paddy_joy/n/neaaa00667a50